日本中でいま「地方創生」が大失敗している根本的理由

日本中でいま「地方創生」が大失敗している根本的理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/10/10
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「消滅可能性都市」で始めたプロジェクト

2019年5月、私は富山県朝日町に社団法人「みらいまちLABO」を設立しました。

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みらいまちLABOは、古民家の再生とふるさとの魅力発信を通じて地方再生に貢献すること、そして朝日町から富山県および日本を元気にすることを目的としています。

設立にあたり、本連載でもみらいまちLABOの取組内容などを紹介(『プロの投資家、いまあえて「人口減少の町」で古民家を買ったワケ』https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64303)したのですが、この記事はSNSでたくさんシェアされ、さらに日本経済新聞北陸版やテレビ富山の取材も受けるなど、反響を呼んでいます。

7月に開催した第1回目の有料セミナーには、富山県内からはもちろん、他地域からも多くの人が集まり、参加者は100名にものぼりました。

朝日町は、人口減少が著しく、将来的に存続できなくなるおそれのある「消滅可能性都市」の1つです。そんな町でスタートした活動が、なぜこのように反響を呼んでいるのか――今回は、その背景を考えてみたいと思います。

地方創生が「失敗」するワケ

みらいまちLABOを立ち上げるときに私が考えていたのは、「朝日町をよくするだけではなく、朝日町をよくすることで富山県全体を、そして日本をよくしたい」ということでした。

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〔photo〕gettyimages

地方創生の取り組みでは、どうしても「地元を元気にしたい」という気持ちが先立つものでしょう。しかし、もし「朝日町を元気にする」ことを目標にすれば、朝日町以外の人は関心を持ってくれません。「私たちの地元をよくしたい」というスローガンでは、人を集めることはできないのです。

大切なのは、朝日町には興味がないという人にもイベントに参加してもらうこと、そして「ここに来れば何か学びがある」と感じた人がまた足を運んでくれるようにすることです。

このように考えるようになった背景には、私自身の個人的な体験があります。

かつて長野県小布施町には、セーラ・マリ・カミングスさんという女性が主催する「小布施ッション(オブセッション)」というイベントがありました。毎月1回ゾロ目の日、そのときどきの「イケてる人」を講師に招き、その話を聞いたり参加者同士で交流したりするのです。

私はこのイベントに何度か参加し、おおいに刺激を受けました。さまざまな地域から人が集まり、問題意識を共有して議論できることの面白さはもちろん、何度か小布施に行っておいしいご飯を食べたり宿泊したりするうちに、小布施が好きになっている自分にも気づいたのです。

「共感」はあるか

朝日町での取り組みを始めるにあたっては、小布施ッションでの学びを活かしたいと考えました。重要なのは「いかに多くの人が共感できるテーマを設定するか」です。

そしてそのテーマのもとに多くの人が集うということこそ、みらいまちLABOが大切にすべきことだと思っています。

第1回のセミナーのテーマは「未来の事業をいかに創るか」でした。

ゲストスピーカーは、野村総合研究所(NRI)の齊藤義明さん。齋藤さんは、北海道・十勝や沖縄、新潟などで地元の人々とベンチャー起業家をつくるプログラムを進めている方です。地方での成功例の紹介だけでなく、地方で成功するには何が必要なのか、各地で社会課題解決に挑んでいる革新者たちのビジネスモデルや彼らに共通する「キラースキル(超重要スキル)」についても話していただくという内容でした。

セミナーには富山県外からも多くの人が集まってとても活発に議論が行われ、さらにセミナー後の懇親会でも富山の海の幸、山の幸を楽しみながらおおいに盛り上がりました。

9月に開催された第2回のセミナーは、「世界一子どもが育つまちを目指して」と題して開催しました。

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ゲストスピーカーの丑田俊輔さんは「学び」をテーマにハバタクという会社を創業した起業家で、国内外でさまざまな教育プログラムを提供しています。ハバタクの本社は東京ですが、秋田県五城目町にも拠点を持って「イナカ発ベンチャー創出」にも取り組んでいるのです。

「シェアビレッジ」という取り組み

秋田県は人口減少率上位の県であり、人口減少に苦しむ多くの地方社会と同様、さまざまな課題を抱えています。

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そんな秋田県で五城目町は廃校になった旧馬場目小学校を改造し、2013年にスタートアップのための拠点として「BABAME BASE」を開設しました。

それに丑田さんが反応し、2014年に五城目町に移住。BABAME BASEにハバタクの秋田支店をつくったのです。現在、BABAME BASEには多くのベンチャー企業が入居しており、秋田県の起業率上昇に寄与しています。

丑田さんは「シェアビレッジ」というプロジェクトも運営しています。

これは秋田県にある古民家を改造して「ビレッジ(村)」とし、「年貢」と呼ばれる年会費3000円を払えば誰でも「村民」になれるというもので、「村民」になれば古民家に宿泊したり、地元の人との交流を楽しんだりすることができます。

クラウドファンディングで都会の人にふるさとをつくる取り組みともいえるでしょう。こうして交流人口(観光などで訪れる人)や関係人口(地域の人々と関わる人々)を増やすことが、地域の活性化につながっています。

地方には「資産」がある

五城目町でこのような動きが起きた理由の一つは、豊かな環境にあります。

自然に恵まれ、美味しいお米や海の幸・山の幸に囲まれていますから、生活の質はとても高いのです。

ITビジネスなら拠点はどこであっても制約になりませんから、ライフスタイルも大切にしながら国内外でビジネスを展開しようというとき、起業する場所として五城目町を選ぶのは理にかなっています。

五城目町のケースからわかるのは、地方には資産があるということです。豊かな自然、きれいな水と空気、おいしい海産物や農作物はすばらしい資産といえます。

また、空き家問題や廃校問題は多くの地方が抱える課題ですが、見方を変えれば、学校がある場所はその地域の一等地であることが多いでしょう。そこを活用して人を呼び込み、空き家を提供して移住を促すといった取り組みは、多くの地方で応用できるのではないでしょうか。

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丑田さんを招いたセミナーは「世界一子どもが育つまち」を目指すというテーマで開催しましたが、これは丑田さんが実際に五城目町に移り住んで子どもとともに成長していることから、朝日町やほかの地方でも「子どもが育つまち」をつくっていけないかという大きなテーマが背景にあったからです。

人口減少に苦しむ地域では未来に明るい展望が描けずにいる人も少なくありませんが、私は丑田さんの活動からいい意味でショックを感じてもらえればと思っていました。参加した方々には、きっと大きなヒントを持ち帰ってもらえたのではないかと思います。

日本全国で「動く人」を作る

みらいまちLABOの活動について取材を受けると「いつまでに何人の起業家を生み出すといった目標はありますか」と尋ねられたりしますが、いまのところそういったことは目指していません。

「朝日町で何かが起きているな」と感じてもらい、「自分も地域の中で何かを始めてもいいかもしれない」と考える人が増えればいいのです。

みらいまちLABOが勉強会やセミナーを開くのは全国各地で「動く人」を作っていくことが目的だといってもいいかもしれません。

同じような課題を抱えている地方の人どうしが集まり、情報を共有し、議論し、それぞれの地域に戻って活動していくことこそがポイントであり、斎藤さんや丑田さんのような方々に来てもらうことで人々が出会い、そこでできたつながりが後に価値を生んでいくこともあるはずです。

思惑を押し付けず、人が集う場を作り、そこで何かざわざわと動きがある――ということが大事なのだと思っています。

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