夫婦のセックスレスが増加している「日本的背景」

夫婦のセックスレスが増加している「日本的背景」

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  • 更新日:2018/12/07

2014年に行われた「第7回 男女の生活と意識に関する調査」の結果、1カ月以上セックスをしていない状態を「セックスレス」と定義し、既婚者について調べたところ、日本の夫婦のセックスレスの割合は44.6%にものぼりました。10年前の調査の31.9%から大幅に増えていることが分かりました。なぜ、日本では夫婦のセックスレスが増えているのでしょうか? 夫婦のセックスレスは、世界の「非常識」ですが、日本で「常識」なのは、なぜでしょうか? かつてはナンパ師として知られ、今ではご家庭をお持ちで、『「絶望の時代」の希望の恋愛学』『愛のキャラバン』などの著作から「愛の伝道師」とも呼ばれている宮台さん、日本の夫婦のセックスレス問題の本質を教えて下さい!(「社会という荒野を生きる。」より

■センシティブなクエスチョネア問題

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まず、この統計数値を解釈する前提として、社会調査で「センシティブなクエスチョネア」[クエスチョネア=質問紙を使って行なう調査の質問項目のこと]と呼ばれる問題があります。つまり、「微妙な質問だから正直に答えづらい」んですね。

そもそも、セックスに関する話題が答えにくいうえに、「セックスしていない」などというネガティブな回答が、さらに答えにくい。だから、夫婦のセックスレス割合は、実際にはもっと多いはずです。

実際、いろんな人たちの話を聞く限りだと、相当多いでしょうね。44・6%なんて数字よりも、ずっと多いだろうと想像しています。まあ、そのことを割り引いたにしても、夫婦の半分がセックスレスというのは、他国に比べて断然多い。

次に、もう一つの前提だけれど、「セックスが必要なのか」と聞かれれば、個別の夫婦がセックスをしようがしまいが、夫婦の勝手。僕にとってはどうでもいい。ミッシェル・フーコーが言う人口学者のように、「産めよ増やせよ」とも思いません。勝手にどうぞ。

ただ、昔からよく問われる「なぜ日本では諸外国に比べて夫婦間のセックスレスが多いのか」という謎や、「なぜセックスレスが増えているのか」という謎に、社会学者として答えることは、それなりに可能です。

■夫婦中心主義がないから弛緩する

まず、一つ目の謎。「なぜ日本では夫婦間のセックスレスが多いのか」について答えましょう。これについては昔から問われてきていて、社会学的な回答がすでになされています。一口で言えば「日本的な文化の影響」です。

日本が核家族化したのは、アメリカやヨーロッパを追いかけてのこと。具体的には1960年代で、団地化や専業主婦化と連動しました。この核家族化のあり方に、実は日本的な文化が反映したんですね。

アメリカやヨーロッパ、特にアングロサクソンのアメリカとイギリスでは、夫婦中心主義があります。「夜9時以降は子供の時間じゃありません」と無理矢理に子供を寝かせて、「夫婦の寝室に絶対に入っちゃいけません」と言い渡すのです。

子供をベイビーシッターに預けてパーティに出かけたりもします。要は「子供を隔離して、何とかして夫婦の空間と時間を作る」のです。日本にはそういう伝統がないので、核家族化が、夫婦中心主義ならぬ、子供中心主義でなされたわけです。

柳田國男が日本の地域社会の特徴として見出したのが、子供中心主義。アングロサクソンみたいに厳しく躾けるのでなく、祖父母が大事に甘やかす。それが核家族化に引き継がれました。だから、夫婦の時空間を作るどころか、いつも「子供まみれ」です。

■デートを再現するという処方箋

どうすればいいか。簡単です。僕たち夫婦には、8歳、5歳、1歳と子供が3人いて、最近では4人目もいいね、という話も。しかし、そこで言いたいのは、「セックスは、すりゃいいというもんじゃない」ということです。

考えてみて下さい。子供まみれの状態で、寸暇を見つけて5分10分で済ませるっていうのが、夫婦にありがちなセックスのやり方。僕は高校生になった当時(1974年)に夫婦のセックス持続時間の統計を見て、「こりゃいけない」と思いました(笑)。

夫婦中心主義とは、日常の時空間から離れて、非日常の演出にコストをかけること。僕たち夫婦は、毎月カレンダー上に「夫婦の日」を書き入れ、かなり前から保育所や親族に子供たちを預ける手配をして、独身時代の休日みたいに朝からデートします。

一緒に映画を見に出かけたり、二人の思い出の場所に出かけたり。天気が悪ければ、DVDやブルーレイを見たり、とっておきのランチを僕が作ったり。そうやって夫婦の時空間を作って、デートをした上で、ちゃんとセックスする。

日本的なセックスレス夫婦への対処法は、もうお分かりですね。日常と隔離された非日常性の時空を演出する。出会った頃のデートを再現する努力です。当時は「いい感じ」だったでしょう? 思い出せるでしょう?

「そういう感じ」の中にセックスを置くんです。ほらね、いつもの硬派な社会学者と違って「愛の伝道師」っぽいでしょう?(笑)。過去2年間やってきた恋愛ワークショップでは、こういうことに気づいてもらってきたわけですよ。

■若者は性愛関係よりも友人関係を重視

続いて第二の謎。日本では過去10年でセックスレス夫婦が相当増えました。夫婦の子供中心主義は昔から変わらないのに、セックスレスが増える。冒頭に述べたように絶対値が不正確でも、相対値から読み取れる増加傾向は間違いない。

「もともと多い」ことに加えて「なぜ増えているのか」です。これも社会学的に説明できます。セックスレスの度合いは、年齢層で違います。と言うと、「そうね、年を取ればやっぱり回数が減るよね」という話だと受け取りましたか?

違うんだな、これが(笑)。巷では昨今「団塊の世代がセックスにとちくるっている」という特集がさんざんなされていて、昔の「鴨とクレソンの鍋」[渡辺淳一の小説『失楽園』のストーリーで、不倫関係の主人公とヒロインがセックスしながら心中する直前に食べた料理のこと]の『失楽園』じゃありませんが、人は死ぬ前に性に執着するんですね……という話がしたいんじゃない。

逆です。ここで大事なことは、『愛のキャラバン』や『「絶望の時代」の希望の恋愛学』で述べてきたように、「若い世代が性から退却している」こと。学生のカップルなどを見ても、「2カ月に一度やるかやらないかです」みたいなのが、キャンパスにあふれています。

僕が大学生の頃はどうだったでしょう。大学3年のときに数えたんです。そうしたら、年に400回やってました(笑)。まあ、いつも東京大学のキャンパスで手をつないで歩いていたから、有名だったんですけどね。

ところが、昨今の学生カップルはテンションが低いんです。一月に一度を割り込むのはザラです。いったいなぜ、こんなことになっているのか。理由の一つは、いろんな本に書いてきたことですが、カップルが「雛壇にあげられる」こと。

昔は、いろんな小説や漫画に描かれてきたように、サークルや語学クラスで、寝取ったり、寝取られたりがよくありました。『「絶望の時代」の希望の恋愛学』で詳しく話した通りです。最近ではこれがありません。

カップルとして公認されると誰もさわらなくなるので、カップルであることを前提とした互いの友人関係のホメオスタシス(恒常性維持)の観点からも、たとえテンションが低くてもカップルである状態を保とうとする。

だから、恋愛していても、同性の友人関係が優位となります。女子で言えば、性愛方面にハマりすぎていると、同性の友人たちの間で「ビッチ」呼ばわりされます。だから、◯△プレイみたいな情報や、歳の差恋愛の情報が、シェアされなくなりました。

■「リスク回避」と「めまい回避」という背景

理由の第二は、「草食化」と呼ばれる傾向。「自分には性欲がない」と自己申告するタイプの男子たちを言います。よく覚えているんですけど、1990年に「性欲がない」という男子学生たちがキャンパスに陸続と出てきたんですね。

最初は東大の医学部生との立ち話でした。「雑魚寝しても何もない」と言うんで、「んな訳ねえだろ。雑魚寝したら、とりあえず『する?』みたいに尋ねなきゃ、失礼じゃないか」と言ったら、「はあ? そんな訳ないじゃないですか」と周囲の学生たちが続々参戦(笑)。

哺乳類の多くの種で精子が減少している昨今なので、社会学的な理由以前のものがあるかもしれません。ここでは「草食化」の理由をあえて社会学的に推定するとしますと、コミュニケーションの失敗を事前に取り除く「リスク回避」が考えられます。

「リスク回避」の背景に、コミュニケーションが「肝胆相照らすもの」から「場つなぎ的なもの」にシフトしてきた、という経緯があります。その結果、コミュニケーションの失敗が、かつてよりも過大に受け止められるようになったんですね。

さて「草食化」の、もう一つの社会学的背景が、「めまいの回避」です。めまいは、僕のワークショップでは「変性意識状態」と呼んでいて、性愛のキーだと告げています。若い人たちは、これを結構嫌がるんですよ。忘我の状態を避けたがる、ということです。

セックスの醍醐味って何だと思いますか? めまいです。我を忘れること。僕の言葉で言えば〈ここ〉から〈ここではないどこか〉に出かけること。ハイデガーの脱目(エクスタシス)。フロイトがエロスとタナトスの近さを語ったことにも、関連します。

そう。人は、現実を忘れるために、セックスをするんです。ところが、昨今の若い人たちは「リア充」とか言うでしょう。馬鹿じゃねえの? リアルというクソから逃避するために、セックスするに決まってるだろ。何考えてんだ、ボケ!

■セックスで確からしくなるホームベース

という次第で、むしろ若い夫婦がセックスレス化しやすい状況にあることは、間違いないでしょう。日本の常識である夫婦のセックスレスは、世界の非常識です。でも、世界の常識のほうがいい、と単に言いたいわけでもない。

セックスレスでもかまわないのなら、勝手にすりゃいい。でも『「絶望の時代」の希望の恋愛学』でも強調したように、それは「めまい」と「ゆだね」から遠ざかること。究極の「めまい」と「ゆだね」を引き寄せたければ、セックスという選択肢を手放さないほうがいい。

だったら夫婦のセックスレスをどうにかしたいって? そう思うのなら、夫婦の時空間を無理にでも作って、夫婦中心主義を意識的に自分たち家族にインストールして下さい。忙しい? そんなの理由にならないぜ。僕だって忙しいよ(笑)。

そしてもう一つ若い人たちに。意識的に作り上げたそうした時空間は「ツラい現実から逃避するためのホーム」です。「めまい」と「ゆだね」に彩られたホーム。それがあればこその絆。セックスを回避してそれを作るのは本当に大変だよ。まぁ好きにすりゃいいさ。

「社会という荒野を生きる。」より

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