学校に行かない「ホームスクール」とは? 選択した親が語る理由と課題

学校に行かない「ホームスクール」とは? 選択した親が語る理由と課題

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  • 更新日:2018/01/18
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NPO法人「日本ホームスクール支援協会」の佐々木理事(左)と北本理事

文部科学省の定義では、学校を年間30日以上休んだ場合、おおむね「不登校」と判断される。しかし、あえて学校に行かずに家で学ぶスタイルは「ホームスクール」と呼ばれ、日本でも取り入れる人たちがいる。支援団体であるNPO法人「日本ホームスクール支援協会」は、国内では約3000の家庭がホームスクールを選択していると推計する。

ホームスクールとはどんなものか。なぜ選んだのか。支援団体の理事を務め、自らも実践者である北本貴子さん(35)と佐々木貴広さん(29)にホームスクールの現状を尋ねた。

ずっと家にいるわけではなく「旅教育」も実践

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家にこもらず「旅教育」を実践する北本さん

会社を経営する北本さんは3児の母。中学3年生の娘(15)、小学4年生の息子(10)、小学1年生の娘(7)がいて、長男と次女にホームスクールを選択した。教育関係の自営業を営む佐々木さんには、小学1年生の息子(7)、保育園の息子(5)がいて、長男にホームスクールを実践している。

なお、学校教育法では、「保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う」と定められている。

――ホームスクールとはどのようなものでしょうか

北本 学校に行かずに、または通いながら、家で学ぶスタイルですね。今は集団で学習するのがスタンダードですが、そこから少し外れて個人のよさをのばせる教育だと思います。ずっと家にいると思われがちですが、家庭の環境によっては、家にいる時間が少ない場合もあると思います。

――家にいない間はどうしているんですか

北本 本当にそれぞれだと思いますが、例えばうちでしたら、昨年話題になったチバニアン、千葉県市原市の地層を現地に見に行ったり、長男が行きたい場所を自分で選んで、宿泊先や予算も含めた旅行の計画を立てる「旅教育」というのをやったりしています。それで2017年の春頃には瀬戸内の島を平日にめぐりました。

佐々木 旅教育はうちもやっています。ホームスクールは平日が自由に使えるし、体験から学ぶということを大事にしているので取り入れやすいのではないでしょうか。

北本 よく京都に行っていますが、「京都に世界遺産の金閣寺っていうのがあってね」と話すよりも、実際に見て、「こんなところにあるんだね、こんなに人がいるんだね」と実感したほうがずっと心に残ると思います。紙の上で、金閣寺はどこの地域にあるでしょう、と勉強したってあまりわからない。また、旅行の計画をすべて子どもに任せるので、子どもは受身にならずに積極的な姿勢になります。インターネットで物事を調べる力なども身につきます。

――国語や算数といったいわゆる教科学習はどのように教えているのでしょうか

北本 私が何か教えるということはほぼないです。子どもが自分でドリルをひっぱってきたり、iPadのアプリを使って漢字を勉強したりしていますが、基本はやりたい気持ちを持っている勉強しかしてないですね。

佐々木 1日2時間程度、公文やオンライン教材などを使って、読み書きなどの基礎学習の時間を作っています。それ以外は理科や社会といった教科のボーダーは意識せず、興味のある話題から広げて教えてあげます。先日は、関心がありそうだったので核融合や核分裂について話をしてあげました。

学校に行かないことは「ドロップアウトじゃない」

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「積極的にホームスクールを選んだ」と話す佐々木さん

――お二人はなぜホームスクールを選んだのでしょう

北本 長男は、最初学校に通っていたのですが、行かないと言い出して、そこからですね。1年生のときから勉強ができたので、どんどん自分のペースでやっていきたい。でも学校は、どうしてもできない子のスピードに合わせてしまうので、自分が学びたいのに、ずっとその場でストップしないといけない。「自分なりに家で勉強する」って言ったので、行かないことにしました。学校現場ではどうしても全体よりできる子がいたときにフォローが難しい現状があります。

次女は場面緘黙症(話す能力はあるが特定の場面では会話ができなくなる症状)で、教育機会は学校にないと判断して入学前から先生と相談してホームスクールをすることにしました。

佐々木 長男は、保育園の運動会や学芸会で、練習を熱心にやらされたりすると耐えられないようで、夜中に吐くといった症状が出ちゃったんです。何かを自分のペースじゃなく、大人から強いられるとものすごくストレスになるというのが傾向としてみえていたのが理由の一つです。二つ目は自分のペースで勉強すると、興味があるものはものすごく進むんです。本が好きなんですが、「ずっと本を読んでいたい」と言われたので、環境をつくってあげた。

日本でホームスクールをやるためには、本人が行くのを嫌がっているというのが条件になっている現状がある。「親の都合で行かせてないだけ」と思われないためにはこういった「理由」は必要なのですが、教育方針・親としての意志としても、メインは集団教育ではない方法で学ばせたいというところなんです。

ホームスクールを選択していると、分類としては不登校になることもあって、落ちこぼれというイメージで見られがちですが、僕にとっては「積極的な離脱」なんです。一世代前の留学で考えると分かりやすいと思うんですが、日本で勉強しているだけじゃなくて、日本の教育から飛び出して海外で勉強しましょう、というのは、最初は反対されることも多かった。僕も留学経験者ですが、今は他の人と違うことをやって良かったと思っています。

それを日本の国内でやるために、日本の教育システムから離脱するということなんです。離脱した時間をうまく利用して、積極性とか主体性、創造性をはぐくんでいくのが一番の目的。一つの選択肢として学校を見ています。学校という選択よりこっちのほうがうちの子にはいいかなっていう。塾選びと同じですね。こっちの塾に行くよりこっちの塾に行きたいとか、サッカーをやらせるより野球をやらせたいとか、そういう感覚です。

北本 ホームスクールがよくてホームスクールを選んだ、っていうほうが強いと思いますね。不登校の子どもは大勢いますが、これまでは不登校の受け皿=ホームスクールというイメージだった。佐々木さんもうちもそうですけど、最初からホームスクールを選択するケースって、今後も増えていくんじゃないかなって思っています

英仏や豪、タイなど約50か国で認可・容認

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「海外では法的に認められている国もある」と説明する日野理事長

取材に同席した同協会の日野公三理事長にも話を聞いた。

――海外ではホームスクールをやっているんでしょうか

日野 米国が一番盛んですが、欧州やアジアでもホームスクールが認可・容認されている国・地域は多く、約50か国に上ります。フランスやイギリス、カナダ、オーストラリア、フィンランド、タイなどで盛んですね。一方、ドイツなどではまだ認められていません。

米国では1991年からすべての州で法的に認められ、ホームスクールを選択する人が90年代に急激に増加しました。米政府の統計では、全体の2.8%にあたる164万人超(2017年)がホームスクールで学んでいます。

もともと米国は、教育の基本は家庭にあるという考え方がベースにあります。家の単位で教育活動が行われてきた歴史が長く、その後に公教育をやってきた。公教育の質が悪ければ各家庭で質の担保をしてもいいということになっている。ただ、運用基準は州や、学区単位で違います。非常に厳しいところでは親が教員免許を持っていないといけないというところもありますが、1年に1回学校に顔を出せばよい、というところもあります。

「主体性が身につく」「学校によって対応が異なる」

――北本さんと佐々木さんにうかがいたい。ホームスクールの魅力と課題を教えてください

佐々木 自分の仕事で小学生と多く関わることがありますが、ホームスクールの子どもと比べると、学校に通う子どもは比較的受け身だと感じます。「次は何をしたらいい」とすぐに聞いてきます。ホームスクールの子どもはやりたいことをどんどんやっていく。主体性が身についている。「生きていく力」をつけられるのはホームスクールなのかなと思っています。

北本 うちの場合は学校が理解を示してくれていますが、知り合いの学校では、絶対不登校を許さないという姿勢で、子どもが行きたくないと言っても、厳しく来いといわれています。事例が自治体ごとに共有されておらず、義務教育という言葉が一人歩きしている部分があるのではないでしょうか。自治体同士で事例を共有し合うことは必要だと思います。また、先生や、教育現場に対して、子どもがホームスクールを選択して不登校になっても、学校の責任ではないと理解してもらいたいなと思います。

――ホームスクールだと出席日数や在籍証明などができず、高校や大学などの進学で不利になるという意見もあるが

北本 たぶん、ホームスクーラーが日本の高校を選ぶことは考えづらいですし、通信制の高校も今はたくさんある。

佐々木 2005年には、文部科学省が、不登校の子どもでも、ITなどを活用した自宅学習を行っていれば出席扱いにできるという通知を出しました。文科省の要件を満たす教材を使って、実際に制度を利用している家庭もある。また、2017年には不登校の子どもへの支援の必要性を掲げた「教育機会確保法」も施行されました。風向きとしては追い風かなと思っています。

家庭で教育したい親に選択肢を

――日野さんにうかがいたいが、なぜホームスクールを支援するのでしょう。学校教育法では小学校や中学校に通わせることが親の義務と定められているが

協会を作ったのが2000年。これまで教育委員会側から「おたくの協会がそそのかすから、学校に来られないことを正当化される親がいる」などといった、いわれなき批判を受けたことがあった。でも、やっぱり協会を必要としている方がいるんです。フリースクールもあるが、どこかに学びに行くのではなく、教育を家庭で担いたいと望む人もいます。教育の責任を負える家庭ばかりじゃないので、みんなにやってもらいたいというのではないが、そういう能力がある家庭はホームスクールをやる価値や権利があるんじゃないかと思っています。

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