サウジの「高級監獄」、その待遇と莫大な和解金

サウジの「高級監獄」、その待遇と莫大な和解金

  • WSJ日本版
  • 更新日:2018/02/14
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昨年11月4日、著名なサウジアラビア人男性がサルマン国王の補佐官に呼び出され、リヤドのリッツカールトンホテルに現れた。謁見(えっけん)に呼ばれたと思っていたが、武装した男たちに携帯電話を取り上げられ、ホテルの一室に連れていかれた。

男性は「しばらく滞在することになると言われた」と話した。

それから99日間、サウジアラビア政府はホテルの営業を停止させ、エリート層を標的にした前代未聞の反汚職運動の一環として381人をホテルに留置した。

リッツカールトンは今月11日、営業を再開した。取り締まりの一つの局面が終わり、世界最大の石油輸出国にとって先の見えない新たな時代が幕を開けた。

サウジ指導部が女性の権利拡大、穏健なイスラム、石油に依存しない市場型経済を提唱し、社会の歴史的変革を進める中、リッツカールトンの一件が象徴するように、サウジアラビアはいまだに外の世界とは距離がある。政府は欧米と深いつながりのある実業家を狙い、容疑を汚職とするだけでそれ以上に詳しい内容を公表しないまま容疑者の資産を差し押さえており、こうした粛清が法の支配への懸念を生んだ。

ワシントン近東政策研究所の研究員、サイモン・ヘンダーソン氏は「リッツの名前にはずっと、サウジの高級刑務所だった過去が付きまとうだろう」と話した。

前出の男性によると、捜査官は詳しく情報を把握していて、男性の金融資産に関する山のような書類を提示したという。捜査官は全ての書類を入念に調べ、「長く、うんざりするような」取り調べの中で追及した。

男性は自分が汚職捜査の対象であることと、和解すれば釈放されること以外ほとんど情報は与えられなかったという。最終的に男性は和解した。男性によると、リッツカールトンに拘束されていた人の中には、裁判で争いたいと考えている人たちもいたが、ビジネスパートナーに不利な証言をされ、しぶしぶ従い始めた。

政府は和解金として1060億ドル(約11兆5000億円)が支払われ、現在は数十件の起訴手続きを進めていることを明らかにした。

在米サウジ大使館の広報担当者、ファーティマ・ベイシェン氏は「サウジ王国の指導部は透明性、繁栄、全般的により健全なビジネス環境を確保するために汚職撲滅に全力で取り組んでいる」と述べた。

サウジの粛清について、欧米のアナリストの中には、サルマン国王の32歳の息子のムハンマド・ビン・サルマン皇太子による権力掌握とみる向きもある。ムハンマド・ビン・サルマン氏が昨年6月に皇太子に任命され、同国の権力構造は破壊された。

ブルッキングス研究所の研究員で中東が専門のブルース・リーデル氏は「サウジへの投資を考えている人にとっては良い兆候ではない」と指摘した。

拘束されていた人々や彼らに近い関係者の話で、数カ月に及ぶ試練の内容が明らかになった。食事は宮廷のお抱えシェフがつくったものが出されたが、電話は一日に一件しか許されなかった人もいれば、何時間も尋問を受けたが、適切な金額の和解金を支払えば汚職容疑は全て消えると言われた人もいた。

サウジ最大の富豪、アルワリード・ビン・タラール王子や建設業界の大物、バクル・ビンラディン氏、同国最大のメディア企業を所有するワリード・ビン・イブラヒム氏、それに複数の大臣も拘束された。

一部の人々によると、拘束中の待遇は良かったという。アルワリード王子がロイター通信のビデオインタビューで見せたキッチンには「ダラー」と呼ばれるアラビアコーヒー用のポットがあり、完全菜食主義者用の食事も食べられると話していた。部屋の入り口の近くにはチューリップを生けた花瓶が置かれ、大画面のテレビもあった。

あるホテルスタッフの話では、重要人物は「ロイヤルスイート」と呼ばれる部屋に滞在していた。リッツカールトンのウェブサイトによると、ロイヤルスイートにはベッドルーム2部屋、ダイニングルーム、リビングルーム2部屋、オフィス、キッチンスペースがある。

アルワリード王子はインタビューで「運動したり泳いだりストレッチしたり歩いたしている。ダイエット食品も食べている。何も問題はない。自宅みたいなものだ」と話していた。

アルワリード王子の代理人にコメントを要請したが、回答はなかった。

事情に詳しい関係者によると、サウジ財務省は富豪のモハメド・アル・アムディ氏や駐米大使だったバンダル・ビン・スルタン王子など裕福なサウジアラビア人の資産を追うべく、欧州や中東のコンサルタント会社に依頼した。

アル・アムディ氏の広報担当者によると、11月に数週間、拘束されたが、現状については分からないという。広報担当者によると、同氏は不正を否定していた。バンダル王子は拘束されなかった。王子の代理人はコメントの要請に応じなかった。

シェイク・サウド・アル・モジェブ司法長官は先月末、拘束された381人のほとんどが証拠不十分と判断されたか、汚職を認めて和解金を支払ったかのいずれかで釈放されたことを明らかにした。長官によると、65 人が和解を拒否し、引き続き拘束されていると述べたが、どこに拘束されているかは明かさなかった。

政府は拘束されている人々について、弁護士に連絡ができるとしているが、それによってどのような保護が得られるのかははっきりしない。サウジ大使館のベイシェン氏は無実である十分な証拠を提示した人は起訴されずに釈放されたと述べた。

この過程をよく知る関係者は最大の問題として、政府が一部の人々に対し、支払い可能な水準を超える金額を要求したと指摘した。

アルワリード王子が60億ドルを超える和解金の支払いを要求され、3カ月近く拘束されたことは既にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。事情に詳しい関係者によると、60億ドルは王子が用意できる金額をはるかに超えていた。王子は、公表はされていないが和解金を支払い、先月釈放された。

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