ビットコイン採掘者が殺到、米の田舎町で波紋

ビットコイン採掘者が殺到、米の田舎町で波紋

  • WSJ日本版
  • 更新日:2018/02/13
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米ワシントン州ワナッチーではビットコインの「侵略」が進んでいる。

ワナッチーが位置する州の北中部にはコロンビア川の流れを利用した水力発電ダムが複数あり、米国で最も電力料金の安い地域の1つとなっている。

その魅力に引かれ、主にリンゴ園で知られるこの田園地帯に「マイナー」と呼ばれるビットコインの採掘(マイニング)業者が集まっている。マイナーは高性能の特殊なコンピューターを使用して仮想通貨の新たなブロックを生成するが、このプロセスには何千台ものマシンを稼働・冷却するための膨大な電力が必要とされる。

「UPSやフェデックスの人たちにワナッチーに何を配達しているのかと尋ねたら、大量のビットコインのマイニング用マシンだと答えるだろう」。約3万4000人の人口を有するワナッチーのフランク・カンツ市長はこう話す。

現在行われているマイニング作業が全て進めば、一部地域の電力需要は倍増し、高額な新しいインフラが必要になる可能性がある。そのため電力会社は殺到する依頼に対処しつつ、仮想通貨の乱高下による痛手を負わずに済むにはどうすればいいかを考えあぐねている。

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ワナッチーに電力を供給するシェラン郡公共事業管轄区(PUC)のゼネラルマネジャー、スティーブ・ライト氏は「驚くほどのサービス依頼を受けている」としながらも、「われわれのシステムにビットコインの価格リスクを負わせるつもりはない」と話す。

シェラン郡PUCが昨年10月以降に受け取ったマイニング電力に関する引き合いのうち4件は、いずれも100メガワットの供給を求めるものだった。これは病院50軒以上の電力に相当し、各マイニングのインフラ構築には4000万ドル(43億5000万円)以上かかる可能性がある。

負荷が増大する電力システム

マイニング作業は小さなスペースで行うことが可能だ。約1000世帯分の電力を消費する靴箱サイズのコンピューターサーバー群でも、25フィート(約7.6メートル)四方の空間に収まる。そのため、古いコインランドリーや元果物こん包倉庫、アパート、貨物用コンテナなど意外な場所にマイナーが出現している。

ワシントン州中部のシェラン、グラント、ダグラスの3郡には既に少なくとも30の仮想通貨業者が集まっている。ビットコイン価格が昨年1300%も急騰したことで、拠点の設置を申し出る業者の数は増えている。一部の地元当局者は、マイナーから週に20件以上の電話を受けていると話す。

電力会社によると、ここ数カ月に大口または「高密度」電力の需要家から200件以上のサービスの申し込みや引き合いを受けており、そのほとんどが仮想通貨マイナーからのものだという。

マイナーは常時サーバーを稼働しており、そのような大量消費向けに構築されていない電力システムには大きな負担がかかる場合がある。その結果、ケーブルが溶けたり、変圧器が過負荷に陥ったりして、停電が起きるリスクがある。ワナッチーの北約32キロに位置するエンシャットでは昨夏、そうしたことが原因で野火が発生した。

ワシントン州に安い電力を求めて企業が押し寄せるのは今回が初めてではない。かつてアルミニウム製錬所が殺到したことがあった。比較的最近では、マイクロソフトやデルなどのIT(情報技術)企業がデータストレージ・センターを設置している。

一部のマイナーはマイニングを商売として行う企業で、事業拡大に際して電力会社と密接に協力している。それ以外は目立たずマイニングに従事する個人や小規模な集団で、中には損傷した機器を放置したままや料金を支払わないまま立ち去ってしまった者もいる。

長年の住民の中にはマイナーの流入に警戒感をつのらせている人たちもいる。エネルギー市場で販売することで料金抑制に役立っている余剰電力を、彼らが枯渇させることを懸念しているのだ。

3郡の電力料金は1キロワット当たり2~4セントと、10セント以上する全米料金と比較してかなり安い。「われわれの分が確実に残るようにしたい」と、果物こん包業を営むマイク・ウェード氏は話す。

長年マイニングに従事する人たちは初期にやって来た一部のマイナーが評判を落としていると指摘する。

「手っ取り早くカネを稼ごうとした人たちがいた。彼らが悪い後味を残した」と、マイニングサービスを提供するローレン・ミイヘ氏は話す。

「バブルのにおい」

電力会社は見込み顧客にサービスを提供する努力をする義務があることは認識しているが、仮想通貨が一時的なブームに終わった場合、他の顧客が多額の投資のつけを払わされることになることを懸念している。

そうした事態を避けるため、電力会社は料金体系を見直して前払い金または保証金を追加し、より多くの顧客に詳しいエンジニアリング調査をさせることを検討しているという。

一方、マイニングがこの地域をブロックチェーン(分散型台帳技術)技術のビジネスハブへと変貌させ、新たな雇用をもたらすと期待する人たちもいる。

「次のアップルやグーグルになる企業があるかもしれない」。グラント郡クインシーの経済開発を推進するクインシー空港公社の幹部パトリック・ボス氏はこう話す。だが一方で、「マイナーに多大なリソースを投じても、彼らが1年、2年、あるいは3年後にそこにいるかどうかを予想するのは難しい」と心配する。

元マイクロソフト開発者のデーブ・カールソン氏は、2013年にワナッチーにやって来て、初期の仮想通貨マイナー流入の波を主導した。当時は「なぜそんなに大量の電力がほしいのかを誰も理解してくれなかった」と振り返る。同氏が経営するギガワット社は従業員5人から今や45人以上の規模にまで成長し、インフラに3000万ドルを費やしている。しかし、同社は挫折も経験している。建設の遅れが原因で訴訟を提起され、最終的に投資家に95万ドル以上を返金することで合意した。

グラント郡のモーゼスレイク空港公社の幹部を務めるジェフリー・ビショップ氏は、電力会社には仮想通貨業者からの依頼が殺到しているため、この地域で将来、事業を計画している業者は長く待たされることになると指摘する。

「バブルのにおいがする」とビショップ氏は述べ、「多大な時間と資金を費やして、これ(ビジネスハブ)を目指しても、自滅する結果になることを非常に憂慮している」と不安をあらわにした。

一部のマイナーも、この地域が混雑しつつあると感じ始めている。ワシントン州でマイニング事業を手掛けるサイバーセキュリティー技術会社MGTキャピタル・インベストメンツの仮想資本戦略責任者スティーブ・シェーファー氏は、同社では代わりにスウェーデンでマイニング事業を強化し始めていると話す。

同氏はこの地域では「いずれマイナーはもっと高い電力料金を支払うことになる」とし、1年後には「ワシントンの神秘性は遠い記憶になっているだろう」と話す。

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