「スルーしろ」「自作のデスノートを」“アホへの対処法”がバカ売れ

「スルーしろ」「自作のデスノートを」“アホへの対処法”がバカ売れ

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  • 更新日:2018/02/16
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田村耕太郎(たむら・こうたろう)/1963年、鳥取市生まれ。シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。元参議院議員。慶大大学院修了。新日本海新聞社編集局長、大阪日日新聞社社長などを歴任。著書に『アジア・シフトのすすめ』(PHPビジネス新書)など。(撮影/写真部・小山幸佑)

“リベンジ”に“倍返し”。「やられたら、やりかえせ!」と高ぶる気持ちに、ちょっと待ったをかける本が昨年から爆売れしている。『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版刊)だ。シンガポール在住の著者に「タイプ別アホへの対処法」を聞いてみた。

【イラスト解説】タイプ別「アホの人」対処法はこちら

「パネルなどを置いて大展開してくださった書店さんを中心に、全国に広がりました。女性の読者も多い」

と書籍の担当編集女子。

著者の田村耕太郎さんは山一証券勤務などを経て2002年に参議院補選で当選。2期務めた後、現在はシンガポール国立大学兼任教授や経済シンクタンクのフェローを務めている。「3年も前の本なのに」と田村さんもベストセラー化にびっくり。一時帰国中のところ話を聞いた。

「“アホ”のインパクトでしょうか。だとすると相当にフラストレーションをため込んでいる人が多いということでしょうね」

政界にいた頃は足を引っ張り、いちゃもんをつけたがるアホたちに悩まされた。一度の人生こんなアホに煩わされるのは損と、愛読書の『孫子の兵法』をもとに敵兵(アホ)と戦わず、時間を有効に活用することを説いたのが本書だ。

論旨を一言でかいつまむと「アホと関わるのは時間の無駄。スルーしろ」「メンツよりも実利」となる。

スルーするのがいちばん。「アホ」への対処法に、うなずきつつも「しかし」と思う人も多いはずだ。アホは手ごわい。実践するとなると容易ではない。

「そうなんです。私もスルーできずに戦ってしまったがために何度も痛手を負ってきました。関わることで問題が解決に向かうどころか、ますますこじれてゆく。戦うことで大損する悔しい体験をしたからこそ、スルーすべきだと断言できるようになりました」

そこで、田村さんに顕著な「アホ」の類例と対処戦術をあげてもらった。

まずは、しつこく議論をふっかけてくる「ストーカー型のアホ」には「ごもっとも!」と褒め上げ、やはりスルーがいちばんという。

「まじめな人ほど、論争を挑まれると相手を論破しようとする。それはやめたほうがいい。何の解決にもならない。それどころか、言い負かされた相手は恨みを倍増させる。海外では話がかみ合わないと思ったら『ああ、こんな時間だ。もう帰らなきゃ』と時計を見てグッドバイ。あるいは『キミの意見は正しいと思うよ。コングラチュレーション』と笑顔で立ち去る」

これぞスルー力。背景には多様な文化の寄り合い所帯という認識が土台にある。

「出身国も違えば、信じる宗教も異なる。互いを理解できないのが当たり前だと思っている。“違い”を前提にすると、ムダな議論をしなくなります。例外は、組織の進路を決める重要会議。ここでは激論を交わします。でも、一文の得にもならない論争はしません」

しかし、どんなにスルーしても絡んでくるアホはどうしたらいいのか。「幽体離脱」を試みよという。

「なぜ、そうした行動を取るのか。心を落ち着けて、相手の気持ちを読む。大半は理不尽な言いがかりですが、客観的な視点に立つことでカッとしていた頭がクールダウンされます。いちばんやってはいけないのは、感情のまま反応すること。火に油を注ぐだけです」

嫌がらせに対する反撃で田村さんが勧めるのは、怒りを発散させる返信メールを書くこと。しかし、送らずに保存する。

「一晩寝たら、怒りが静まっていることが多い。気が晴れるということなら自作の『デスノート』に書いて保管するというのもいいでしょう。大事なのは、怒りのエネルギーをコントロールすることです」

それでもデマを流布されるなど対処を求められる事態には、まず情報収集を行う。関係者に「正確な情報」を伝え、相手を監督する立場にいる人物にも報告するのが有効だという。

田村さんが実例にあげたのは、インターナショナルスクールでの娘へのイジメだ。娘から話を聞いた田村さんは、その夜は一睡もできなかったという。調べてみると父母会の運営に関して、田村さんに対する保護者の感情のもつれがあったようだ。結果「情報の共有化」を選び、出来事を学校に報告するにとどめた。

「父母に、自立した考えの人が多いのが幸いしました。それはアンフェアだと以降のイジメも防げましたが、エスカレートせずにすんだのは、カッカしていたときに家内から『こんな本を書いているんだから』といさめられたおかげです」

パワハラ上司の「アホ」対処法も聞いた。ここは徹底的な聞き流し戦術だ。

「向こうではパワハラをしかけてくる上司がいたら我慢などせずに辞める。転職マーケットがあるからでしょうけど。どうしても辞められないのであれば、戦わずに聞き流す。口答えをすると逆上させるだけですから。大事なことはオプションを持つ。ここしかないと思うことが自分を追い詰めてしまう。いざとなったら辞めてやるというモビリティー(変動性)を持つことが、戦わないカギになる」

逆に、部下に悩まされている中間管理職も多い。田村さんの回答は明快だ。

「世代間ギャップもありますが、日本でも職場に外国人が増えてくるでしょう。若い世代や外国人に『言わなくてもわかるだろう』と多くを期待してはいけない。仕事の指示は数字で具体的に、目的は何かを教える。コモンセンス(共通認識)を若い世代や外国人に求めることが無理なように『違い』を前提にすればストレスもなくなりますよ」

田村さんがシンガポールに移住を決めたのは子供の教育を考えたのと、アホに煩わされず自分を生かせる場所を求めてのこと。海外生活で考え方も変わったという。たとえば「謝罪」に関して。

「タクシーが道を間違えたときに、向こうの運転手は『オー、ネバーマインド。狭いシンガポール、いつかつくよ』とノンビリしたもの。『こっちのセリフだろ!』とも思いますが、日本だと約束の時間に遅れかねないとハラハラ、イライラしますよね。でも、少々遅れたところで相手も気にしない。欧米人になると、さらに謝りません。同僚はミスしても『OK。レッツ・ムーブオン(次に行こうぜ)』ですから。お前が言うな!ですが、私もそれでいいと思えるようになりました」

もうひとつ、実感したのは「コモンセンスはない」だった。

「シンガポールにはいろんな宗教や国籍の人たちが寄り集まっている。だから“違いがある”のが当たり前。たとえば娘が通うインターナショナルスクールは1クラス20人に10以上の言語が飛びかう。共通の常識があまりないので日本人特有の“同調圧力”をかけるのは無理です。納得できないことには『なんで? 私は嫌だよ』と言い返すのは当然」

日本では見慣れた不祥事の「謝罪会見」に対しても違和感が強くなった。

「あれは、ミスを許さない日本社会ならではの儀式なんですよね。海外では“事態改善”“再発防止”が最優先。思ってもいない言葉や無理に作った表情で謝ることに時間とエネルギーを使う暇ないだろ!ですよね」

他人の足を引っ張ろうとするのは、それだけヒマをもてあましているからだという。

「競争が激しく物価が高いシンガポールでは皆生きるのに必死なのです。ヒマな時間があるなら一銭でも収入や資産を増やすことに使います。自分や家族のための時間も大切にする」

いい意味で自分中心の環境では、上司の顔色をうかがいながらの居残り残業も起こりえないという。

「うちの大学の秘書さんなんて、僕がどんなに忙しくしていようとも自分の仕事を片付けたら退社しますから(笑)。“意味なく”他人に関心を持つ日本とは違うのです。ただ、当初は正直、さみしく感じたこともありました」

しかし、いまや子供と食事をともにする時間が増えて、楽しい。さらに悩まされた「アホ」もまわりには皆無。戦わない毎日を満喫しているという。(朝山 実)

■4タイプの「アホの人」

【1】ストーカー型

いきなり「おまえは……」と絡んでくるアホ

「こちらが感情的に反応すると喝采する。ヒマをもてあましたこういう人たちはすべてスルーするのがいちばん。どう反応しようかと考える時間がそもそももったいない」

【2】工作員型

ウソやデマを流し、陰湿なイジメを企むアホ

「立腹しての反撃は禁物。陰で足を引っ張ろうとするこのタイプは嫉妬が動因の場合が多い。冷静に調査し、キーパーソンとなる人物に正確な情報を伝え、逆に孤立化させる」

【3】パワハラ型

権力をかさに理不尽なアホ

「部下の心をズタズタにする言葉を投げつけても無自覚な上司はどこの会社にもいます。しかし、永遠にその立場にいるとも限らない。従順なフリをして、聞き流すのがいちばん」

【4】キリギリス型

指示されたことしかしないアホ

「使えないと嘆くのは禁物。仕事の指図は目的とともに具体的であること。若い世代は外国人だと思えば『わかるだろう』といった期待値は下がり、ストレスもなくなる」

※週刊朝日  2018年2月23日号

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