日本M&Aセンター社長に聞く「全国約127万社で後継者不足、 この問題をどう解決しますか?」

日本M&Aセンター社長に聞く「全国約127万社で後継者不足、 この問題をどう解決しますか?」

  • 財界オンライン
  • 更新日:2021/11/30
No image

「今、約127万社で後継者がいない。手をこまねいていたら廃業してしまう。これを救いたい」と話す、日本M&Aセンターホールディングス社長の三宅卓氏。日本M&Aセンターは10月1日「日本M&Aセンターホールディングス」を発足させ、持ち株会社体制に移行した。この狙いは「最高のM&Aを提供するため」という。単にM&Aを行うだけでなく、その周辺のサービスを提供するための企業を設立。今後目指す将来像とは──。

【関連記事】日本M&Aセンターなど5社が「M&A仲介協会」を設立

コロナという危機をチャンスに変える

─ コロナ禍は我々の生き方、働き方に大きな影響を与えました。三宅さんはどういう見方をしていますか。

三宅 社内は在宅勤務体制の構築や感染防止対策をきちんとしてきましたが、個人的にはリモートだけだと大きな夢を描いたり、イノベーションが湧いてこないなという感覚を持っています。

コロナのような危機では、経営者として会社をまとめなければいけないと同時に、新しいことを考えていかなければなりません。幸い、リモートを併用しながらも社員と対話を進めた結果、新しい取り組みをすることができたので、当社は業績を上げることができました。

─ 具体的にはどういうことに取り組みましたか。

三宅 かなり泥臭いことをやっています。例えば、コロナ禍では東京から他の地域への出張が難しくなりましたので、全国にサテライトオフィスをつくったんです。出張が駄目ならば、地元に若手を住まわせてしまおうと。これはそれぞれの地域の皆さんにかなり喜ばれました。

最もコロナ禍が厳しい状況だった昨年の5、6月のことでしたが、1カ月で十数カ所にオフィスを新設しました。皆さん、コロナで困っていて我々に相談したいというニーズをお持ちでしたが、東京からは来て欲しくなかった。それが地元にいてくれれば、すぐに相談ができるというわけです。

─ かなりのスピード感で取り組んだと。

三宅 ええ。各地域に若手社員が常駐することに加えて、オンラインで本社とつないで、ベテランのM&A(企業の合併・買収)プレーヤーや公認会計士などとつなぎます。ベテランは東京からオンラインで、若手は現場からリアルでお客様とつながることができます。

東京から出張しませんから訪問件数という「量」が増え、ベテランがオンラインで参加できることで「質」がよくなる。量と質の両方がよくなったことで、結果的に前期は創業以来最高の売り上げ、利益を上げることができました。

─ 日本M&Aセンターは今年、創業から30周年を迎えましたが、三宅さんが仕事をしてきた中で、今回のように災い転じて福となしたケースは相当ありましたか。

三宅 ありましたね。例えば当社は2006年に東証マザーズに上場しましたが、それ以前はプライベートカンパニーでしたから、様々な問題を内在しており、審査の時にはそれが顕在化しました。

その時に、ごまかすのではなく、正面から取り組んでいこうと。これを機会に本当に素晴らしい会社にしていこう、とポジティブに受け止めて、ガバナンス、コンプライアンス、システムなど、会社をもう1回作り直したのです。ピンチはチャンスだとポジティブに受け止めることが大事なのだと思います。

社会的使命を果たしたいと多くの人材が応募

─ 人材の確保は重要だと思いますが、どのように進めていますか。

三宅 人材は常に補強しています。年間、中途採用で約100名、新卒は来期約40名を採用する予定です。

─ M&Aという仕事柄、報酬が高額になっていると聞きますが。

三宅 そうですね。M&Aは難しい仕事ですし、責任が重いですから、それなりの能力、キャリアを持っている人でなければできませんから、基本的な報酬はどうしても高くなります。

また、新卒と中途採用では考え方は違いますが、基本的には多様性を重要視しています。例えば中途採用を例に取ると、銀行出身者25%、証券出身者25%、メーカー出身者25%、商社・コンサルティング出身者25%といった形でポートフォリオを組んでいます。

─ この狙いは?

三宅 例えば銀行出身者は譲渡企業の財務諸表を読むことができ、どういう会社なのかをはっきり知ることができます。そして証券出身者は新規開拓の営業力が高い。

製造業に強いメーカー出身者も必要です。メーカー出身者は工場の機器や専門用語がわかりますから、社長と話が盛り上がり、仕事を安心して任せていただけるケースが多いんです。また、商社・コンサル出身者は論理的に会社を分析することに長けています。

─ 中途採用に応募してくる人達は、何を目標にしてくるんですか。

三宅 社会的使命を果たしたいということ、そしてお客様に本気で喜ばれたいという2つの理由は、当社を志望する全員が言うことですね。

株式譲渡契約の調印式の際には、例えば会社を創業して30年というような社長さんが、廃業しなくて済み、従業員を引き継いでもらえ、会社の名前が残ったという喜びで、涙を流して喜んでくださるんです。

─ 仕事をしていてよかったと思える瞬間ですね。

三宅 ええ。そして今後、廃業が増加していくことが予想されています。約245万社の企業の社長さんの年齢は65歳以上、あと5年経てば70歳以上になるという現実があります。

では、これらの企業に後継者がいるのかというと、半数の約127万社が後継者不在です。このまま手をこまねいていたら、この約127万社が廃業してしまうということです。我々の仕事は、これらの企業を救うことです。非常に社会的役割が大きいですし、本当に喜んでいただけたという実感がある。これが中途採用で皆さんに人気になっている理由だと思います。

持ち株会社体制で目指すものとは?

─ 今年10月1日から持ち株会社体制となりましたが、この狙いを聞かせて下さい。

三宅 まず持ち株会社化以前に、この10年間、いかに最高のM&Aをご提供するか? という課題がありました。

M&Aは、M&Aだけがあるわけではありません。例えば、買収を考える会社は、今の仕事に閉塞感があるわけです。そこでどの分野に可能性があるかをマーケティングします。

その結果、例えば高齢社会の中で高齢者ビジネスがいいのではないかという結論が出ます。そこで戦略を練って、高齢者ビジネスの中でも有料老人ホームをやろうということになる。

そのためには多くの資格者やノウハウが必要です。すぐに自前でやるのは難しいので、それを持つ会社をM&Aしようという順序になります。

─ 日本M&Aセンターは、それら全ての段階に関わっていく?

三宅 そうです。我々はその過程に貢献できる会社を複数持っています。例えば買収にあたって、マーケティングのためには「矢野経済研究所」がグループに入っていますし、いくらが適正な価格なのか、企業評価をしなければいけませんが、そのために設立したのが「企業評価総合研究所」です。

買収した後には相乗効果を出して成功させなければいけませんからPMI( Post Merger lntegration =買収後の統合作業)が必要になります。そこで設立したのが「日本PMIコンサルティング」です。

会社を譲渡した人には数億円単位のお金が入ってきますが、一代ではなく孫子の代まで役立つ資金にする必要があります。そこで「事業承継ナビゲーター」で資産運用のサポートをさせていただいています。

また、日本は東京だけが繁栄しても駄目で、地方創生が重要になります。その時に中小企業単体で事業承継をして救っても、地方は豊かにはなりません。中堅企業が戦略を構築して成長しなければならないんです。そのお手伝いをする必要があります。

そして地方に行くと、タクシー10台といった規模で事業をしているタクシー会社などがあります。東京だったら廃業して、会社跡地を再開発しようかという発想になりますが、その地域ではライフラインを担っていたりするわけです。こうした企業をなくすわけにはいきません。

こうした小規模企業を存続させる役割を担うのが「バトンズ」というインターネット上での企業マッチングを行う会社です。そして中小企業の存続や、中堅企業の成長戦略づくりは日本M&Aセンターが担い、合わせて地方を活性化させていく。

─ 確かに地方の活性化は今後の日本の重要テーマです。

三宅 その意味で、地方の地方に優良企業をいかにつくるかは大きな課題です。

例えば奈良県には優秀な高校が数多くありますが、大学は東京に行くことが多い。そうした人達が就職の際に帰ってきたらいいのですが、Uターン率は10%程度しかありません。なぜかというと彼らが働きたいと思う元気な会社が少ないからです。

長崎県も同様で、江戸時代には蘭学など学問の中心地でしたし、明治時代には造船など製造業で国を支えた地域ですが、Uターン率は6%しかありません。

─ 若者が地域に根付くためにも企業の活性化が必要だと。

三宅 そうです。そこで我々は東京証券取引所の「東京プロマーケット」という市場への上場支援事業を行っています。

これは非常にご好評をいただいており、先日は熊本県の企業が東京プロマーケットで上場しました。県にはそれまで5社しか上場企業がありませんでしたが、6社目が誕生したということで、県も地元銀行も久しぶりの上場ということで非常に盛り上がりました。

地域の優良企業、中堅企業、中小企業、小規模企業、全てのレイヤーに目配せをして、地方創生を進めていかなければならないと思います。

さらに、もう1つのテーマとしては日本のファンドのレベルが低いことです。米国ではプライベート・エクイティ(PE)ファンドが社会インフラになっています。

例えば、10年落ちの高級車を個人間で売買したとします。デリケートな車ですから、整備などをしていなければ様々な部分でトラブルが起きる可能性があります。

それを高級車専門の中古車売買会社に売れば、整備、清掃をして2年保障を付けて販売してくれる。売る方も買う方も気持ちよく取引ができます。わかりやすく言えば、これがPEファンドで、企業の価値を上げるのです。

日本は世界でもまれに見るPEファンド不毛国です。この状況を変えたいということで「日本投資ファンド」という会社を設立して、業界の見本となるような活動をしようと取り組んでいるところです。

─ 単にM&Aを手掛けるだけでなく、トータルに物事を考えていくということですね。

三宅 ええ。他にも、日本政策投資銀行と合弁で「サーチファンド・ジャパン」という会社を設立しています。これも地方創生に関わる事業です。

地方には、若い優秀な経営者が少ないのではないかと考えています。地域で後継者のいない会社をサーチファンドで買収し、優秀な経営者をサーチャー(経営者候補)として雇用し、その方を社長として派遣します。その地域のカンフル剤になることを期待しているんです。

─ 今後の日本M&Aセンターホールディングスが目指す姿をどう描いていますか。

三宅 やはり最高のM&Aを実行するためのグループです。それを実現するためのサービス、企業を揃えていこうとしているんです。

さらに将来構想では、日本M&Aセンターホールディングスと事業会社との間に、「M&Aビジネスホールディングス」、「フィナンシャルホールディングス」、「M&Aサービスホールディングス」という3つの中間持ち株会社を設立し、機能別に各事業会社を振り分けることを検討しています。

そして最終的には、成約数、業務品質、総合力、時価総額、顧客満足、カバー力、イノベーション力、従業員満足という8つの指標で世界一を目指していきたいと考えています。(続く)

【関連記事】【日本M&Aセンター会長に聞く】3社に2社が後継者難、事業承継に向け、どう手立てを打っていくか?

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加