zoomでつながった日本の高校生とルワンダのシングルマザー コロナ時代の「ルワンダの奇跡」パート2

zoomでつながった日本の高校生とルワンダのシングルマザー コロナ時代の「ルワンダの奇跡」パート2

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  • 更新日:2020/09/16
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『ルワンダで何が起こったか?』(パート1)に続いてパート2ではコロナ時代の「ルワンダの奇跡」「おばちゃんはたくましい」を報告したい。

KISEKIのレストラン

山田美緒さんと耕平さんはルワンダに住んで6年が経ったが、新型コロナの蔓延でルワンダの首都キガリもロックダウン(都市封鎖)となり日本食レストラン「KISEKI」は休業せざるを得なくなった。山田家だけの問題を考えれば日本に帰国するという選択肢が持ち上がった。事実、ルワンダで仕事をしている日系企業も個人事業主も3月に一旦は帰国する人が少なくなかった。

300人住んでいた日本人のうち200人が帰国したのだから駐在員はリスクオフを選択したのだ。日本大使館も日本政府が用意した飛行機で日本人駐在員に帰国を促したそうだ。コロナ禍が収まれば再訪問するという選択が合理的であると多くの日本人駐在員たちは考えた。しかし山田一家にとって帰国するという選択は「ある理由」で断念した。「ある理由」とは従業員たちへの「雇用責任」である。

特にアフリカ諸国では医療レベルが遅れているために疫病リスクが及ぼす不安感は現場に居なれば理解できないと思う。

しかし山田さん一家にとっては従業員に対する「雇用責任」にこだわった。特にレストランを切り盛りしてきた美緒さんにとっては過去5年間シングルマザーを雇用して彼女たちの生活を守らなければならないという重圧から逃げられなかった。自らも3人の男の子を育てているからこそ、KISEKIレストランの働き手である26人のシングルマザーとその子供たちの命を預かっているという意識が重くのしかかってきた。問題はシングルマザーの従業員約26人の再就職先である。

結論は働き場所がないことは明白であった。5年前のKISEKIの開業当初は富裕層相手の日本レストランだったから能力の高い従業員たちで店は運営された。しかし教育レベルが高いことと真面目に働くこととは正比例していなかった。面接を通じてシングルマザーたちは子供のために一所懸命働くことが証明された。

高学歴の従業員は少しでも他社の給料が高ければ直ぐにも辞めていった。補充をするために3人の張り紙をしたところ300人もの求職者が列を作るという状態だった。中でもシングスマザーたちは真剣だった。結果、雇用機会が少ないシングルマザーたちが増えていった。能力が不足していても給与が安いので人海戦術で適材適所に仕事を配分することで乗り切るしかなかった。

加えて、山田美緒さんはキガリに来ていつも気になったことがあった。それはスラムに住んでいる子供たちがごみ箱を漁って空腹を満たしている姿だった。シングルマザーたちを雇うことで少しは社会貢献ができると思った。KISEKIレストランのバザーの時には子供たちがお腹一杯食べていた。そこには高級日本レストランではなくて難民キャンプのような雰囲気さえも漂っていた。ここでは美緒さんがサバイバルするための特異な行動に焦点を当てていきたい。

ボランティアに興味のある若い旅行者がKISEKIに来た

ルワンダは年中小春日和のような温暖な気候で住みやすい環境だったので、山田家が初めて来たときからルワンダが大好きになった。またアフリカ54カ国の中でモーリシャスに次いで仕事のしやすさがアフリカで第2位であることにも魅力を感じて家族5人で移住してきたのだ。

ところが新型コロナのために気楽なことも言っていられなくなり、美緒さんたちがルワンダで勝負できる要素はもはやなくなってしまった。そこで日本人でボランティアに興味をもってルワンダに来る旅行者達にベッドと食事を用意して1週間で500ドルのプログラムを用意した。去年だけで100人の旅行者がKISEKIを訪ねてきてくれた。今年は300人にそして来年には1000人の計画も夢ではなかった。このボランティアプログラムの話題は別の機会に紹介するが、コロナ禍の為に今年の訪問者はキャンセルとなり全くのゼロとなった。ボランティアプログラムに参加したくてもロックダウンになってからは物理的に入国出来なくなったのである。

コロナ時代のデジタル技術で世界が繋がる

生活を維持させるために経営者である美緒さんはいろいろなチャレンジに出た。4月になってからは世界中でテレワークが盛んになってきた。日本でもzoomやTeamsを導入する企業が激増してきた。KISEKIでは旅行者用にもネット環境は整備していたのでzoomを使ったビジネスのアイデアをどんどん実行していった。zoomビジネスを以下に羅列する。

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マッサージを谷口光利先生から習得した盲目のセラピスト

昔から進めていたルワンダ柄の衣料品をネットで販売していたが美緒さんがデザインしたアフリカンテイストのドレスの通信販売も軌道に乗ってきた。

新たにzoom利用のベビーシッターとキッズスクールをシングルマザーにやってもらった。初めはルワンダの歌や踊りを日本とやっていたのだがエストニアにいる友人の勧めでその頻度が増えてきた。

オンライン英会話も格安でスタートしたら一緒に手伝ってくれる日本人インターンの方が協力してくれた。

マッサージ教室は日本ボディーケア学院の谷口光利先生が数年前からKISEKIで講師になってスタートした。今では正式なライセンスを持ったルワンダ人セラピストも施術をしている。さらにキガリ在住のアーティスト鈴木掌さんによるスパの設立計画も進んでいる。

イベントショップはシングルママたちの独壇場になってきた。ファーマーズマーケット、ヤードセール、ダンスイベント、ファッションショーを美緒さんがプロデュースしてシングルママたちが活躍している。

初めはKISEKIの従業員だけだったのが今や近くのスラムに住んでいるシングルマザーも50人ぐらいが勝手にやってきて一緒に楽しみながらイベントに参加しているのだ。

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海外のサイクリニストとKISEKIのシングルマザーたち

「デジタル技術」よりも大切なものとは何か?

さらに「人生相談」、「歌」「踊り」「講演会」といろんなコンテンツをやってきたが、夏休みに入ると日本の高校や大学の部活の代表者たちにKISEKIとコラボをするイベントを提案した。ルワンダのシングルママたちはいつもグループ内で歌ったり踊ったりすることを日本の学生たちと一緒にお祭り感覚でやってみようと言うことになった。

そこで立ち上がったシングルマザーたちは思い思いのデザインの服を見にまとい日本の高校生相手にアフリカンダンスを披露したのである。一言でいえばアフリカンダンスといってもルワンダの村で打楽器を打ち鳴らしながらダンスをするだけなのだが生まれながらのリズム感が素晴らしいので周りにいる人たちが一緒に踊りだすのである。

zoomで繋がった日本の高校生たちにとってみると大変ユニークで楽しいイベントになったのである。一方のルワンダのママたちは、日本の高校生たちのブラスバンドに対して、初めはビデオを流していると思っていたのだが実はシングルマザーたちのためだけの生バンドであることに気が付いてからは興奮が頂点に到達して異常な盛り上がりとなったのである。

デジタル技術を駆使して、世界と繋がって楽しむことが新しい「ルワンダの奇跡」なのだがもっと大切なことは普段からの人と人の関係性ではなかろうか?美緒さんの生き様は世界のサイクラーであり、地域密着型のビジネス志向であり、自然体で友人たちを繋ぎとめる熱意と志である。

今回の新型コロナ禍で新しいボランティアの形が見えてきた

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オンラインセミナーの様子

日本の政府間援助プログラムもそれなりに機能しているが一般の庶民が潤うまでに時間がかかりすぎる側面がある。特に日本のJICAベースのODAプログラムはTICAD7の声明に基づいて粛々と進められているが経済的な支援よりも教育や技術支援が中心であるため時間がかかるのは仕方のないことである。

こんな調子で色々なボランティアのイベントにチャレンジしているが従来型ではなく新しい形の地に足のついたボランティアがKISEKIの持ち味になってきた。必死で手当たり次第に思いついたアイデアをすべて実行に移しているともいえる。日本の受け入れる側からすると煽られながらも楽しいのでリピーターが増えてきた。

休日返上でzoomを利用したイベントや講演会やセミナーが過去100日で80回も実行された。民間ベースでアフリカを助けたいと言う正式な支援団体や若者たちもたくさんいるが、腰を据えて長年にわたり現地に溶け込まないと本当のボランティアにならないという意見もよく聞く。しかし今のKISEKIにはそんな話に耳を貸す余裕はない。唯ひたすら知り合った人々にお願いしながら今を大事にしながら実行あるのみなのだ。これはコロナ時代のデジタル環境だからこそ実践できているのだろう。

さて、アフターコロナはどうなっていくのだろうか?

日本でも早や、半年以上のコロナ禍への対応を続けているが我々の生活は「コロナ疲れ」と「コロナ慣れ」が共存し始めている。

そんな環境から知らず知らずに「デジタル技術」「グローバル化」「ダイバーシティー」(多様性)が世界を変えてゆくのではないだろうか?

「グローバル化」と「ダイバーシティー」がさらにスピードアップしていくデジタル技術にどのように関わるのかを深堀していきたいと思っている。

さて次回のパート3では美緒さんはまたまた新たな試練に巻き込まれていく。思いもよらない事件が次々に襲い掛かってくるのだが、そこで山田美緒さんは重大な決断を迫られることになる展開に迫っていきたい。

中村繁夫

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