謝って済む問題じゃない/小林私「私事ですが、」

謝って済む問題じゃない/小林私「私事ですが、」

  • ダ・ヴィンチWeb
  • 更新日:2022/05/14

美大在学中から音楽活動をスタートし、2020年にはEPリリース&ワンマンライブを開催するなど、活動の場を一気に広げたシンガーソングライター・小林私さん。音源やYouTubeで配信している弾き語りもぜひ聴いてほしいけど、「小林私の言葉」にぜひ触れてほしい……! というわけで、本のこと、アートのこと、そして彼自身の日常まで、小林私が「私事」をつづります。

Re:二億円を受け取ってください。/小林私「私事ですが、」

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ビジュアル作成:小林私

先日、マンガ『働かないふたり』(吉田覚)を読んでいたら、寿司を食うシーンが出てきた。昨年くらいまで生モノが一切食べられなかったところ、突然刺身が食えるようになり、そこから回転寿司で、えび天、炙りえびチーズ、カニカマ天、ポテトフライ以外のものを頼めるようになった。

生来好き嫌いが激しく、しかも無理して食うと吐くというどうしようもない体をもって生きてきた為、食べられるものが増えていくのは素直に嬉しい。回転寿司に行こう。

『働かないふたり』に倣って、というわけではないが、「ほぼ無職のような」友人を突然誘ってみたところ「今から行ける」とのこと。流石は「ほぼ無職」である。平日の16時に友人を飯に誘う私も悪いのだが。

最近の回転寿司は、どこもタッチパネルで頼んだものしか流れてこない。注文した皿が近付くと音楽が鳴って、頼んだであろう皿を取るシステムだ。

そういえば先のR-1グランプリ2022で、気になる女性が寿司屋で注文した皿をメモするというネタをやっていた芸人さんがいた。ほぼ無職とは既に何度か寿司を食っているのだが、改めて気になって見てみた。

初手、わさびなす

ふざけるな。ふざける奴が頼むネタとタイミングだ。

「マナー講師が、さっぱりしたものからいくと良いと言っていた」

それはトロとかの脂っこいネタよりも淡白な白身魚からいけ、という話である。ちなみにこの直後に炙りサーモンチーズを頼んでいた。急。

かくいう私も初手にえんがわ(食べられるようになって嬉しいから)を頼んだ後にえび天を二皿頼んでいるので、どっこいどっこいではある。

このような有様なので、ずっとぼんやりとした食事をしている。ところで、回転寿司屋の冷水機は何故あんなに席から遠いのか。私は食事を「味を水で流し込んで0にする」という楽しみ方を主にしておこなっているので、食事中に水をかなりの量飲む。下手したら食事の量より多く水を飲んでいる。故に回転寿司屋に行くとよく席を立つのだが、ほぼ無職はしっかりぼんやりしている。席に戻ると、私はある事に気付いた。

「あれ?俺のこの皿ってまだ届いてないよね、パネルに済って書いてあるけど。」

「あー……見逃したな」

「見逃してるね。」

「本当に、謝って済む問題じゃないわ、これは」

「いや、別に良いんだけどさ」

「うん、だから謝らないわ」

ここからの記憶があまりない。面白すぎたのだ。

そもそも互いに「会計のとき大丈夫かな(皿を数えるタイプの店なので大丈夫だった)」くらいしか思っておらず、当然怒ってもなければ申し訳ないとも思ってないのだが、そのあまりの軽口がツボだった。

そういえば以前も就寝間際に「震えて眠る」と呟いて寝ていた。その時も、そこからあまり記憶がない。

なんだかんだ高校生時分からの付き合いの我々には、飯の流行りがある。現在、マクドナルド、牛丼、インドカレー、ピザ、寿司の順番だ。我々は一体何を取り戻そうとしているのだろうか。

「ほぼ無職」の友人には、元々「ナン食わね?」と「ピザの受け取り行こうぜ」以外の語彙がなかったのだが、奇跡的にどちらの腹でもない日にファミレス通り(田舎には必ずそういう通りがある)を車でうろついていると、はま寿司の看板が見えた。見えた、というより助手席に座っていたほぼ無職が突然、

「 ハ マ ズ シ ダ ! 」

と叫んだのだ。生身なのに音が割れていた。ハマズシダという意味不明な言葉の羅列を、眼前の看板でようやく理解した。そこから我々の寿司のターンが始まったのであった。

などと言っている内に『働かないふたり』を24巻まで読み終わりました。奇跡の追跡が美しいのでオススメです。そして非常に無職になりたい。

最近読み始めたマンガは『へうげもの』(山田芳裕)と『ヘテロゲニア リンギスティコ 〜異種族言語学入門(瀬野反人)なので、異世界で茶道を始めたらその時はまた。

こばやし・わたし
1999年1月18日、東京都あきる野市生まれ。
多摩美術大学在学時より、本格的に音楽活動をスタート。
シンガーソングライターとして、自身のYouTubeチャンネルを中心に、オリジナル曲やカバー曲を配信。チャンネル登録者数は14万人を超える。
2021年には1stアルバム「健康を患う」がタワレコメン年間アワードを受賞。
2022年3月に、自らが立ち上げたレーベルであるYUTAKANI RECORDSより、2ndアルバム「光を投げていた」をリリース。

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