フロンターレに大敗もサンフレッチェは強い。上位進出もあると思える理由

フロンターレに大敗もサンフレッチェは強い。上位進出もあると思える理由

  • Sportiva
  • 更新日:2020/09/15

◆消えていった天才Jリーガーたち>>

勝ったり、負けたり。よくも悪くも、つかみどころのないチームである。

今季J1で9位につける、サンフレッチェ広島のことだ。

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これまで15試合を戦い、6勝6敗3分けと完全に五分の星で勝ち点21なのだから、全18クラブの真ん中に位置する現在順位は、妥当な成績ということになるのだろう。

しかしながら、総得点23は、現在2位のセレッソ大阪(総得点25)、同4位の名古屋グランパス(同24)と比べても遜色なく、総失点19はJ1全体で5番目の少なさだ。

各クラブの消化試合数に違いがあるにしても、残している数字から考えれば、広島はトップ5に食い込むくらいの順位にいても不思議はない(成績はすべて第16節終了時点。広島は1試合未消化)。

本当は強いのか、弱いのか。かつて4シーズンで3度のJ1制覇を成し遂げた"元・王者"は、その判断が難しい状態にある。

今季ここまでの戦いを振り返ると、広島にははっきりとした必勝パターンがあることがわかる。それはすなわち、無失点だ。

失点をせずに試合を進めるなかで、FWレアンドロ・ペレイラ(7得点=チーム最多)、FWドウグラス・ヴィエイラ(5得点)などの個人能力を生かす、あるいはセットプレー絡みで効率よく得点を奪う。そうした試合運びで、勝利を手にしてきた。

今季広島が挙げた6勝のうち、5勝が完封勝利。唯一の例外は第15節の清水エスパルス戦(4-1)だが、これにしても、大量リードで試合の大勢が決したあとに1点を失ったものであり、基本的な流れは必勝パターンに当てはまる。

しかも、無失点が勝利の条件とは言っても、ひたすら守りを固めてワンチャンスを生かすような戦い方をしているわけではない。失点を取り返そうと前に出てくる相手の力を利用し、巧みなカウンターで加点するのもまた、広島が得意とするところである。5つの無失点勝利の中に1-0のスコアがひとつしかないことが、その証拠だ。

第1節で鹿島アントラーズを、第2節でヴィッセル神戸を、立て続けに3-0で粉砕した連勝に、広島の"長所"が存分に表れていた。

先制した試合のほとんどは、少なくとも引き分けに持ち込んでおり、先制しながらの逆転負けは、第3節の大分トリニータ戦(1-2)があるだけだ。

しかし、無失点に抑えることこそが勝利の方程式となっている広島ではあるが、守備の強さを売りにしているかというと、決してそうではない。

むしろ、ボールを保持して試合を進め、そのなかで守備への切り替えを早くして相手の攻撃を抑え、ショートカウンターにつなげる。それこそが、目指すサッカーのスタイルである。

だからこそ、悪いボールの失い方をしたり、チーム全体が間延びしたりして、組織的な守備ができない状態になると、意外なほどに脆い。

2敗2分けと4試合勝利から遠ざかった第10節から第13節を見ても、あっさりと崩されて失点を重ねるケースは目についた。

そんな"短所"がモロに表出したのが、第16節の川崎フロンターレ戦だったのだろう。

広島は前半14分、川崎のパスワークについていけずに先制を許すと、後半開始からわずか5分あまりの間に3失点。終盤にはPKを献上し、さらに1点を追加された。

最後にMF浅野雄也のゴールで一矢を報いはしたが、結果は1-5。屈辱的な大敗だった。

広島を率いる城福浩監督は「川崎のクオリティーの高さは認識していた」と言い、こう悔しがる。

「多くの失点をすることは想定していなかった。結果として5点を取られて負けたのは本当に悔しい。自分たちの現在地をしっかりと受け止めないといけない試合だった」

最近6試合で3失点以上を喫するのは、これが3試合目。これだけ必勝パターンが崩れれば、成績が安定しないのも無理はない。

だからといって、短所の改善に注力するのは得策ではないだろう。

大敗を喫した川崎戦であろうとも、広島の長所は間違いなく発揮されていたからだ。

広島は先制を許した前半、29分の飲水タイムを境にして、確かに主導権を握った。ボール支配率を高め、広島の選手たちが敵陣に攻め入り続けると、対照的に川崎の選手たちは互いの距離感が悪くなり、奪ったボールを前線につなぐことができなくなった。

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完敗した川崎戦でも、広島が主導権を握る時間が多くあった

カギを握っていたのは、ダブルボランチの青山敏弘と川辺駿である。

それまでは相手の守備網の外で、安全にパスを回すことが多かった広島が、この時間帯に入ると、ボランチから効果的な縦パスが打ち込まれるようになった。前半31分のレアンドロ・ペレイラのヘディングシュートにつながった場面などは、まさにそこから生まれている。

後半に入っても、広島が強度の高いプレーを連続で見せるシーンは多かった。

前へ前へとパスを打ち込み、相手を食いつかせたらサイドチェンジ。ボールを失ったとしても、早い守備への切り替えで奪い返し、連続攻撃を仕掛ける。速いテンポで攻守が繰り返される様は、かなりの迫力があった。

もちろん、すでに0-4になっていたのだから、川崎がある程度手を緩めた面はあるだろう。勝負が決してから、目を覚ましたのでは遅い、とも言える。だとしても、首位を独走する、さしもの川崎も自陣で耐えるしかなかった。そんな場面は確かにあった。

鋭い攻撃で相手の守備を後手に回らせることが、結果として相手の攻撃を封じることにもつながる。これこそが広島の"堅守"の正体であり、"長所"でもある。これがもっとコンスタントに続けられるようになれば、第1、2節の連勝時のような強さが常に発揮され、順位も自然と上がっていくに違いない。

強さと脆さ。広島の現在地とは、その両方が同居している状態なのだろう。勝ったり、負けたりのなかでは、ともすれば、強さが脆さに覆い隠されてしまいそうにもなる。

だが、広島が持つ強さは本物だ。上位進出の可能性を秘めた強さである。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

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