MISIAとAIの歌にある強大な説得力 多くの人の心を鷲掴みにする名演を残した2組

MISIAとAIの歌にある強大な説得力 多くの人の心を鷲掴みにする名演を残した2組

  • Real Sound
  • 更新日:2022/01/15
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MISIA『HELLO LOVE』

大晦日の風物詩『NHK紅白歌合戦』。2021年も例に漏れず、日本を代表するアーティストたちのステージが続々と披露されたが、中でも筆者の心を鷲掴みにしたのはMISIAとAI、二人の女性が見せた熱唱だった。番組のトリとして満を持して登場し、「明日へ」「Higher Love」の二曲を圧巻のスケールでパフォームしたMISIA。そして最新曲のバラード「アルデバラン」をエモーショナルな節回しで届けてくれたAI。実力派シンガーの座を確立して久しい両者をことさらに賞賛するのは少々野暮かもしれないが、20年以上にわたるキャリアに裏打ちされた清々しい名演だったと思うし、あらためて彼女たちの歌には強大な説得力が備わっているのだと自ずから実感させられることになった。

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5オクターブの歌姫とも称されるMISIAはその名の通り広い音域が持ち味で、普通の人が困難とする高音のロングトーンをも軽やかに歌いこなす神々しさに、筆者はこれまで幾度となく胸を打たれてきた。が、思うに彼女の真髄は高音以外の表現にある。とりわけ中低音における抑揚豊かな発声は、楽曲のストーリーテラーとして情景を上品に立ち上らせ、聴き手の感覚をたちまちセンシティブなモードへ変えるだけの凄みを感じさせる。

この“パワフルなボーカルを主体にしながらも様々な技巧でフレキシブルに見せ場を作れる”という特性はAIにも同様に当てはめられるだろう。野太いハスキーボイスだけでも申し分ない存在感があるところを、AIはさらに自身から湧き出る喜怒哀楽をダイレクトなまでにメロディへ乗せ、それぞれのドラマを硬軟自在に描き出していく。MISIA「Everything」やAI「Story」が時代を超えて支持され続けているのは、楽曲の魅力もさることながら、聴き手が安心して作品に没入できる環境を彼女たちが本能さながらの衒いのないセンスで提供しているからに他ならない。

もっとも、MISIAとAIが有する”歌の力”は、世間的な認知が強いバラード以外の楽曲にも親しんでこそ、よりダイナミックに体感できるはずだ。ともにゴスペルを通じて歌の楽しさに開眼したという共通点があるだけに、特にR&Bやソウルミュージックを基調とした作品においては、今に続く絶唱の源泉をしかと確かめられるかと思う。

後発デビューの宇多田ヒカルらとかつて和製R&Bブームの礎を築いたMISIAは、記念すべき初作「つつみ込むように…」や「BELIEVE」といった甘美なミディアムを得意とし、最近ではボーカルの円熟味の増加やソウルジャズへの接近によって、いっそうの繊細さと艶っぽさを体得した印象。対照的にアップリフティングなテイストも颯爽と乗りこなし、ハウスミュージックをベースにした「INTO THE LIGHT」や「CATCH THE RAINBOW」、近年でも地元・博多弁をモチーフにした「好いとっと」などを通じて、バラードを歌う姿とはまるで異なるチャーミング&アグレッシブな表情をコンスタントにアピールしている。

クラブシーンから登場した出自を持つAIもやはり、2000年のデビュー当時からブラックミュージック路線と向き合う意識が極めて高く、さらに言えば今なおそのスタイルを練磨し続けていることが彼女のアイデンティティを強化してさえいる。とりわけ活動初期から中期にかけてリリースされた「E.O.」「I Wanna Know」などのヒップホップ精神あふれるナンバーの数々は、問題提起を恐れずマイクを握る現在のAIとも共鳴する骨太な作品ばかりなので、今からでもぜひ押さえておきたい。

二人の2021年の歌唱にフォーカスを当てて話をすると、『紅白歌合戦』への出演も含め、印象的な出来事に恵まれたことがそのクオリティに大きな影響を与えたようにも感じている。MISIAは東京2020オリンピックの開会式で国歌「君が代」を歌う大役を担当したほか、12月にはおよそ3年ぶりとなるアルバム『HELLO LOVE』を発表。同作には今をときめく藤井 風が楽曲提供し、件の『紅白歌合戦』では藤井本人を交えピースフルなステージを展開した「Higher Love」をはじめ著名なアーティストとのコラボレーションも収め、より多様的な表現の追求に挑んでいる。

一方のAIも、三浦大知との共演作「IN THE MIDDLE」のリリースやライブツアーの開催など、デビュー20周年も絡めながら精力的に活動。かねてより意識を向けてきたSDGs関連のトピックでは黒柳徹子らと並んでHAPPY WOMAN賞(女性の力による持続可能な社会づくりに向けた挑戦や活動を行い、今後に期待できる個人に贈られる賞)を獲得し、エンパワーメント推進のアイコンとしての功績をまた一つ重ねた。そして極めつきは、『紅白歌合戦』でも歌われた森山直太朗作詞作曲、斎藤ネコ編曲の「アルデバラン」である。現在放送中の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の主題歌に起用されたプレッシャーから制作は試行錯誤の繰り返しだったようだが、彼女の温かいボーカルスタイルが見事に結実し、聴き手に語りかけるような低音パート、勇壮な雰囲気漂うサビと数多の聴きどころを携える傑作に仕上がった。

この一年だけでも大小関わらず、様々な事象と深く結びついては歌に力を注いできたMISIAとAI。そこに込められた人ひとりひとりの思いを見つけるたび、きっと彼女たちは自ら歌うことの使命感を高め、決意を新たにしてきたのだろう。2022年も変わらず、心を真っすぐに射抜くきめ細かい美声の発揮と、豊かな表現力のさらなるアップデートに期待している。(白原ケンイチ)

白原ケンイチ

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