インスタカート新CEOに期待される「フェイスブックでの経験」

インスタカート新CEOに期待される「フェイスブックでの経験」

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/07/21
No image

食品宅配サービスのインスタカートが、新たなCEOを迎えることになった。これまで10年近くにわたって同社を率いてきた創業者のアプアバ・メフタは取締役会会長に就任し、CEOの職を、取締役のフィジー・シモ(Fidji Simo)に譲る。

シモは、これまでフェイスブックでアプリの責任者を務めていたが、インスタカートのCEO就任に伴って現職を辞することになる。今回のトップ交代は、2021年内と目されている同社の新規株式公開(IPO)を投資家が注視するなかでの動きとなる。

数多の危機を乗り越えて

アマゾンでエンジニアとして働いた経歴を持つメフタが、インスタカートのアイデアを思いついたのは24歳の時だった。そのきっかけは、ベイエリアに住んでいた際に、自宅の冷蔵庫にシラチャーソース(タイ風の辛いソース)のボトル1本しかなかった自身の体験だという。

No image

アプアバ・メフタ

サービス開始当初は、依頼された商品の購入業務のほとんどを自ら担い、ウーバー経由で配達を行っていた。2013年にフォーブスの「30 UNDER 30」に選ばれたメフタは、2017年、最大の顧客だったホールフーズがライバルのアマゾンに買収された後の経営危機を乗り切った。また、2020年には新型コロナウイルスのパンデミックにより、数週間で通常の5倍に急増した需要に対応した。長年にわたってインスタカートの舵取り役を務め、成功に導いてきた。

インスタカートのサービスエリアは、今は北米の5500以上の都市に広がり、商品を購入できる小売店舗も5万5000店以上を数える。その評価額は390億ドルにまで膨らみ、細かいところまで気を配りながら一心に同社を率いてきたメフタ自身の資産額も35億ドル(約3800億円)に達した。

メフタはフォーブスの取材に対し、最近の成功により、さらに長期的な視点で物事を見るようになったと語っている。メフタは2021年に入り、別の取材でも「20年先を見据えた戦略を展開している」と述べていた。

そして今回、メフタが見据える未来の重要な部分をシモが担うことになった。シモは2019年からフェイスブックのメインアプリの責任者を務めており、同社の「新たな顔」の1人とうたわれていた人物だ。

フランス出身のシモは2011年にフェイスブックに入社し、ニュースフィードや動画、ゲームへのウェブ広告展開で、同社の収益化戦略を推進してきた。2019年に創設されたインスタカートの広告部門は2020年に15億ドルの売上を計上しており、CEO就任後のシモが特に注力する分野となるはずだ。

シモは、「広告主にとってのROI(費用対効果)は、すでにそこにある。買い物客のカートには、まさに広告製品が入っている。カートは、広告の世界における聖杯なのだ」と語る。「私が今後推進したい取り組みの主要な部分は、さらに多様な広告フォーマットを追加し、できる限りすみやかに規模の拡大を図っていくことだ」

シモは、今年1月にインスタカートの取締役に就任して以来、メフタと関係を築いてきた。しばしば電話で連絡を取り合い、問題の分析や解決にあたってきた。この7カ月のあいだに、2人が電話で話し合う時間は長くなり、回数も増え、取締役就任から5カ月が過ぎた時の会話で、シモはフェイスブックを辞めることを考えるかもしれないとほのめかした。

No image

フィジー・シモ

メフタはこの時、電話を切るとすぐに、3時間をかけてカリフォルニア州カーメルにあるシモの自宅に車で向かったという。

シモは、夜9時に突然始まった2人のミーティングについて、「メフタには非常に説得力があった」と振り返る。「アプアバ(・メフタ)と私が毎日の習慣になっていた電話での会話をしていると、夫からは冗談で、『君は最高に現場密着型の取締役だね』と言われることもあった。だが、実際の関係構築は、段階を踏んだ非常にゆるやかなペースで進んだ」

新CEOに期待される役割

今回のトップ交代劇は、メフタによれば100%自らのアイデアであり、投資家に強いられたものではないという。これによりインスタカートは、株式を上場している巨大テクノロジー企業で10年の勤務経験を持つリーダーを得たことになる。

フェイスブックは近年、各国政府の規制当局による反トラスト法違反の疑いに関する訴訟や、他の政治スキャンダルへの対応に追われてきた。こうした問題により、フェイスブックの情報収集が及ぶ範囲や、ユーザーの個人データの扱いに関するさまざまな疑惑が浮上している。同社を創業し、CEOを務めるビリオネアのマーク・ザッカーバーグは、厳しい批判の矢面にさらされてきた。

これは、メフタが痛いほどよく知るテーマでもある。物理インフラの多額なコストを負担している100以上の食料品店の信頼を維持することは、インスタカートの成功にとって不可欠な要素だ。このインフラがなければ、メフタが開発した配送アプリも無用の長物と化してしまう。

No image

シモは、この関係がはらむ微妙なバランスが揺らぎ始めるなかで、CEOに就任することになる。インスタカートの広告事業参入は、スーパーマーケットの重要なプロフィットセンターに打撃を与えるものだ。一部には、「卵を産むニワトリの小屋にキツネを入れてしまったのでは」と懸念する向きもある。

2年前のマリ・クレールの記事では、シモは、フェイスブックの信頼回復への取り組みを担う幹部として取り上げられていた。そのシモは今回の決断について、「私は自分の役割にとても満足していて、他のことを考えることはなかったが、人生にはいろいろなことが起きるものだ」と語っている。

「(オファーを)受け入れる選択肢しかなかった。これは、ぜひ取り組むべき、信じられないほど素晴らしい冒険だと感じたからだ」

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加