浅野忠信とCharaの長男・佐藤緋美 “二世”の肩書きを掻き消す実力

浅野忠信とCharaの長男・佐藤緋美 “二世”の肩書きを掻き消す実力

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2021/10/14
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堂々とした演技で注目を集める佐藤緋美(写真/『ムーンライト・シャドウ』公式HPより)

小松菜奈(25才)が初の単独主演を務めた映画『ムーンライト・シャドウ』が9月10日より公開中だ。宮沢氷魚(27才)との共演でも大きな話題となっていた本作だが、特に注目を集めているのが、恋人と兄を同時に亡くした少年・柊役を演じた佐藤緋美(21才)だ。浅野忠信(47才)とChara(53才)を両親に持ち、モデルとしても活躍する佐藤。“二世”の肩書きに負けない佐藤の魅力について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。

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『ムーンライト・シャドウ』は、愛する恋人を失った1人の女性が、大きな喪失感に向き合いながらも、前に進む姿を描いた作品。世界30か国以上で翻訳されている吉本ばなな(57才)による同名短編小説(新潮社刊『キッチン』収録作品)を、映画『アケラット-ロヒンギャの祈り』や『Malu 夢路』などの作品が国際的な評価を得た、マレーシア出身のエドモンド・ヨウ監督(37才)が実写映画化した。

あらすじはこうだ。最愛の恋人・等(宮沢氷魚)と幸福な日々を過ごしていた主人公・さつき(小松菜奈)。彼女はある日、交通事故で等を失ってしまう。大きな喪失感を抱え、なかなか立ち直ることができないさつきだったが、“死者ともう一度会えるかもしれない”という「月影現象」を知る。彼女は等と再会を果たすため、彼と多くの時間を過ごした川へと向かう。

本作は、何よりもまずキャスティングが素晴らしい。単独初主演の小松は、1人の女性が経験する幸福な時間と突然の不幸、そしてそこからの再起を限られたセリフや表情、動きでミニマルに表現している。会話劇がメインの作品や、モデルでもある彼女の被写体としての魅力が際立つ作品など、これまでのキャリアの全てが詰まった主演作になっているのではないかと思う。そんな主人公・さつきとともに喪失感に向き合うのが、等の弟であり、兄と自身の恋人を同時に亡くした少年・柊役に抜擢された佐藤緋美だ。

浅野忠信とCharaを両親に持ち、いわゆる“二世俳優”である佐藤。SNSには「柊役の子が素晴らしくて調べたら、浅野忠信とcharaの息子で驚き」といった声が多く見られ、本作で彼の存在を知った人は少なくないようだ。だが、佐藤は決して“鳴り物入り”でデビューしたわけではない。筆者は、2018年に上演された舞台『書を捨てよ町へ出よう』で俳優デビューした佐藤を始めて観たが、日本の現代演劇の最前線で活躍する藤田貴大(36才)の演出や、藤田作品の常連共演者陣に必死に食らいつこうとしていた姿は今でも強く印象に残っている。彼が二世俳優であることは後で知った。

その佐藤が柊役をどのように演じて魅せるのか、とても期待していた。というのも、原作を読む限り、柊という人物は一筋縄ではいかないキャラクターだからだ。彼は普段から精神的に不安定で、そのうえ兄と恋人を同時に失ってしまう。だが、最終的にはさつきとともに自身も“喪失”から立ち上がっていく。

佐藤はインタビューで、「監督は細かく演技に指導をせず『自由にやっていいよ』というスタイルだったので、伸び伸びとやらせてもらいました」と振り返っている。キャリアはまだ浅いながらも、演劇作品を俳優デビューの場に選び、反復稽古によって“演技のいろは”を学んで鍛えた経験や、場数を踏んでいないからこそ発することができる瑞々しさが、今作の柊役には活きていたと思う。「自由にやっていい」という現場は、彼が自分自身を試す場にもなったのではないだろうか。

また、柊は主人公のさつきが唯一“喪失感”を共有し合える存在である。となれば、本作の主演は小松とはいえ、佐藤も彼女に匹敵するレベルの演技力が求められるはず。事実、物語はかなりの割合で柊にフォーカスしている。ここで佐藤の強みを感じたのが、彼もまた演技にとどまらず、モデル業や音楽活動など、多くの表現の場を知っているということ。俳優業を始める前からファッション誌などに登場していたし、音楽では“HIMI”名義で活動しているほか、ロックバンド・King Gnuの常田大希(29才)率いるmillennium paradeの代表曲『Fly with me』にボーカルとして参加したり、母のCharaと映画『ゾッキ』の主題歌をデュエットするなど、異彩を放っている。

本作におけるエドモンド監督の即興的な演出や“画”で見せる手法には、柔軟な音楽活動や被写体として彼が培ってきた素養がマッチし、遺憾なく発揮されていたように思う。その結果、“二世”の肩書きを掻き消すほどの佐藤自身の実力を、観客に知らしめられたのではないだろうか。

【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。

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