レッドブル・ホンダの戦い方に変化。角田裕毅も学びたいレース運び

レッドブル・ホンダの戦い方に変化。角田裕毅も学びたいレース運び

  • Sportiva
  • 更新日:2021/05/04

ポルトガルGP決勝を2位で終えたマックス・フェルスタッペンは、前日とは打って変わって晴れやかな表情をしていた。

「今日は、自分たちのやれることはすべてやり尽くした。だから、僕はこの結果をうれしく思っているよ」

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予選ではターン4で追い風を受けてリアが流れ、縁石の外まではみ出したことで最速タイムを抹消されてしまった。それがなければポールポジションは獲得できていた。それを受けての最後のアタックも細かなミスが続き、3番手のタイムしか記録できなかった。

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2位でフィニッシュしたフェルスタッペン

マシンを降りたフェルスタッペンは大きくうなだれ、大型モニター裏のスペースに隠れるようにしゃがみ込んだ。昨年のトルコGPの予選と同じように、獲れるはずのポールを自分のミスで逃してしまったことに対する落胆と自責の念がそうさせたのだ。

それは、予選すなわちスターティンググリッドがいかに重要か、ということもでもあった。ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう振り返る。

「今年は勝つことを考えると、本当に予選のちょっとした差が影響してくるなと思っています。戦闘力が拮抗しているからこそ、予選の結果がレースの結果に大きく影響してきますから、予選で最大限にパフォーマンスを発揮して決勝をうまく戦うということです。

アルファタウリにとっても、拮抗した激しい戦いの中団グループのなかですから、一度前に行かれるとなかなか抜けない状況になりますので、予選が非常に重要になります。予選をきっちりと前のほうで通過し、ミスなくパフォーマンスを最大限に引き出してレースを完走し、初めて結果がついてくると思います」

メルセデスAMGとレッドブルは超接戦だからこそ、1度しかないピットストップをどうこなすかが最重要ポイントになる。

セーフティカーからのリスタートを利用してルイス・ハミルトンの追い抜きに成功したものの、再び抜き返され、次に標的となったバルテリ・ボッタスがDRS(※)圏内にとどまっても追い抜きまでは至らなかった。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

3位を走るフェルスタッペンとしては、先にピットインし、フレッシュタイヤの一撃を利用して前に出るしか方法はなかった。そして35周目にそれを仕掛け、アウトラップで可能なかぎりプッシュしてハードタイヤに熱を入れ、翌周に目の前でピットアウトしてきたボッタスを追い詰めて抜き去った。ここしかないチャンスを、しっかりと掴み獲ったのだ。

逆に言えば、ピットストップで抜けるのは1台だけ。この時点で5秒前に行かれてしまったハミルトンを逆転する術はなかった。それが、予選の結果が決勝の流れを大きく左右する、ということの意味だ。

ポールポジションからスタートできていれば、フェルスタッペンは首位を守って走り切っていたかもしれない。メルセデスAMGの1台に抜かれたとしても、ピットストップで抜き返せたかもしれないからだ。

すべてはタラレバでしかないが、極めて小さな差がタラレバのあちら側とこちら側を分ける。それがレッドブル・ホンダ対メルセデスAMGのトップ争いが繰り広げられる、2021年シーズンのF1なのだ。

ハミルトンはフェルスタッペンに抜かれても動じず、コース上で抜き返し、さらには僚友ボッタスを抜いてチーム内でのピットストップ戦略の優先権を手にした。

ピットストップが始まる30周目までにこれができていなければ、勝っていたのはボッタスだった可能性が高い。ハミルトンはそのことを熟知していたからこそ、冷静に、かつ攻めるべき場面ではアグレッシブに攻めてターゲットを仕留めた。あらためて王者ハミルトンの強さが表われたレースだった。

一方、レッドブルは低グリップかつ風の強いアルガルベで、タイヤをうまく作動させることができなかった。そのせいでこの週末はマシンバランスに苦労し、RB16B本来のパフォーマンスを引き出し切れなかった。

結果、メルセデスAMGよりもダウンフォースをつける方向に行かざるを得ず、ストレートスピードを伸ばせなかったため、コース上での追い抜きにも苦労しなければならなかった。レース週末全体として、レッドブルはわずかに後れを取ってしまった。

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マシンバランスの不安定さに苦しんだ角田裕毅

しかし、フェルスタッペンはこの2位に満足している。これは、レッドブル・ホンダとフェルスタッペンの戦い方が明らかに変わったことの表われだろう。

つまり、この2021年にチャンピオン獲得の可能性があると、はっきり認識しているということだ。これまでのレッドブルは、タイトル争いに加わっていなかったからこそ、失うものがなかった。だから、時には目の前の勝利を掴み獲るため、リスクも冒して攻めた。

だが、今年は違う。掴み取らなければならないのは目の前の勝利ではなく、シーズンを終えた時の頂点だ。だからこそ、取りこぼしは許されない。相手は、あのメルセデスAMGとルイス・ハミルトンなのだから。

「いつ光る走りをするか、そのタイミングを正しく選択するだけのことだ。もし今日が自分の(輝ける)日じゃないなと思えばそれまでだし、ある程度のリザルトで落ち着くしかない。

過去に僕らは、選手権争いに加わっていないからこそリスクを冒し、あるレベル以上に攻めることもあった。でも、チャンピオンシップを争う力のあるマシンを手にしていれば、アプローチの仕方も少し違ってくる。仮にそのレースで優勝できなかったとしても、(2位や3位の)ポイントを取り逃すことは許されない。

完璧な週末じゃなかったとしても、できるかぎり多くのポイントを取ることに専念しなければならない。まだまだ長いシーズンだし、リタイアや馬鹿げたミスは許されないんだ」

マックス・フェルスタッペンというドライバーの能力は、誰もが認めるところだ。しかし、単純にマシンをドライブする能力だけでなく、チャンピオン争いを経験することで、フェルスタッペンは「完成されたドライバー」としてさらに大きく成長することになる。フェルスタッペンは今、まさにその道を歩んでいる。

それは、角田裕毅にも同じことが言えるだろう。

ポルトガルGPの週末は、初体験のサーキットと、グリップが低くバランスの安定しないマシン挙動に苦しみ続けた。予選では14位に沈み、決勝でも浮上のきっかけを掴めないまま淡々と単独で走るレースになった。

「すごくタフなレースでした。今日はまったく速さがありませんでした。今週末はずっとマシンバランスの不安定さに苦しんで、ドライブするのにかなり苦労しました。何が原因なのかはまったくわかりません。何が起きていたのか、とにかくデータを分析するしかありません」

アルファタウリが低速コーナーの多いアルガルベで苦労することは予想されていた。チームメイトのピエール・ガスリーも同様の症状に苦しめられた。だが、それでもガスリーは予選でQ3へと駒を進め、決勝でも粘り強く走って10位でポイントを持ち帰った。

これも、大接戦の中団グループのなかで、ほんのわずかな差が大きな差へとつながった結果だ。

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イモラでは必要のないところでリスクを冒し失敗した角田だったが、今回はプッシュすべき場面に恵まれなかった。14位スタートで周りと同じ戦略を採った時点で、それはわかりきっていたことだった。

ただ、レース後半はハードタイヤで淡々と走るなか、角田よりすばやくタイヤに熱を入れ、ハードタイヤの性能をうまく使い切って攻めていたドライバーもいた。マシンが違うとは言え、同じような症状に悩まされていたフェルスタッペンも、まさにそうだ。

マシンのポテンシャルに恵まれないレース週末をいかに戦うか。そういう点においても、角田にとっては忍耐と同時に学びの多いポルトガルGPになったはずだ。

米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

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