【街金は見た!】街金が絶対にお金を貸せない条件《逃げる債務者、回収する債権者の知恵くらべ》

【街金は見た!】街金が絶対にお金を貸せない条件《逃げる債務者、回収する債権者の知恵くらべ》

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  • 更新日:2020/10/16

日頃見えてこない生活金融の現場。『ぼく、街金やってます』の著者であり、現役街金経営者のテツクル氏の実話をもとにバラ色の20代から暗黒の20代後半へと変わるお話しをする。 多重債務者の現実。それを「見続け、貸し続け、回収する」街金の現実。 債務者と債権者の壮絶なドラマをお届けします。

■街金にとって一番怖いものとは何か

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街金にとって、反社会的勢力、世間でいう「反社」は絶対に付き合ってはいけない相手です。
たまに債務者を詰めると、
「ちょっと同席してもらいたい人がいるんで」と、ガラの悪いおじさんを連れてくることがあります。
これは困ります。早々にお引き取りいただくように促します。繰り返しますが、こちらから積極的にも消極的にも反社とお付き合いすることは絶対ありません。
お付き合いしてることがバレたら、問答無用で貸金業の免許を召し上げられてしまいます。ぼくが怖いのは、反社よりも、貸金業の免許でぼくの首根っこをおさえてる東京都です。都庁には足を向けて寝てません。
都庁の皆さま、ぼく、法令遵守して真面目にやってますから、大丈夫ですよ。

あと、担保にする不動産に反社がかかわっている場合もお金は貸せません。
もし、担保物件のマンション内に反社の影があれば、当然貸せません。一戸建でも近所にそういう人がいたら貸したくないですね。売って返済できないケースがあるから。
そうです、街金も反社とはかかわりたくないんです。

ある日、ひとりの債務者候補が、知り合いのブローカーに連れられてやってきました。内装業を営むCさん。
「ああ、これはテツクルさん、はじめまして。このたびはよろしくお願いいたします。助かりますありがとうございます。これをご縁に、なにとぞぜひ長いお付き合いを……」
ものすごく下から目線のCさん。
自宅マンションを担保にお金を借りたいとのことで、翌日Cさん宅を訪問しました。街金でも、担保になる物件は必ず見に行きます。

Cさん宅は、東京の下町。1階に中華料理屋の入ったマンションです。
中華料理屋が入ったビルやマンションは、換気扇からもれる油で建物全体が汚れます。Cさんのマンションも例外ではありません。
油で覆われて薄汚れた外観、油っぽいエントランスや廊下、全部写真を撮ります。とにかく、汚い。

Cさん宅は、汚部屋でした。ゴミがあふれていました。おばあちゃんちの臭いがしました。
街金にお金を借りに来る人は、生活よりもお金のことで頭がいっぱいなのか、身なりや住まいに無頓着になってることが多いです。

それにしても、Cさん宅、本当に内装業者なのかと疑うくらい、荒れています。フローリングのシミ、壁紙はところどころ剥がれて、破れて。
靴を脱いで上がりたくない部屋に入り、写真を撮ります。息を止めて写真を撮ります。帰り道、コンビニに寄って靴下を新調します。

汚部屋の改装費用を計算して、Cさん宅の査定からそれをさっぴいた金額を貸すことになりました。月々9万円の利息を1年間払ってもらいます。元本は最後の支払日に一括で返してもらいます。

「じゃあ、Cさん、これから毎月よろしくお願いしますね。こちらからも電話しますけど、利息の支払い忘れないでくださいね」
「はいはい、どうもありがとうございます。助かりました。本当にこれをご縁に……」

どこまでもCさんは低姿勢です。

■利息日3回めに振り込まれず・・・

Cさんは、最初の利払日、ちゃんと振込みがありました。

2回め、振込みがありました。
3回め、振込まれてませんでした。

「もしもし、Cさん?」
「ああ、テツクルさん、どうしました?」
「どうしました? じゃなくて、利息振込まれてないんですけど」
「あ! 今日でしたね! すいません! 明日必ず入れておきます」
「頼みますよ」

翌日。入ってません。
「もしもし、Cさん?」
「あ、あー。どうもすいません」
「今日も入ってないんだけど。どうなってんの?」
「すいません、仕事が入ってしまって、時間とれなくて。用意してあるので、明日は必ず入れますから」
「ほんとに?」
「ほんとです」
「次はないよ?」
「大丈夫です」

翌日。入ってません。
「おい、入ってないんだけど」
「あ、ああ……」
「ああ、じゃなくてさ、何なんだよ」
「ええ、ええ……」
「テキトーな返事すんなよ。いつになんだよ」
「……明日には、必ず」
「現金、あるんだよね? ないの? どっち?」
「……あります……」
「絶対明日入れろよ? 絶対だからな」

フラグ立ってます。もうダメなやつです。

電話を切って、そのままCさん宅に向かいます。
エレベーターを降りて、Cさんの部屋に向かう途中、目の端に何か違和感のあるものが入ってきました。前回来たときにはなかった、立派な木の看板が、Cさん宅の数軒先にかかっています。

「なにがし組なんとか一家」

とても分厚い木の看板には、そう書かれていました。文字の部分を彫り、そこに墨を流した本格派です。年季も入ってます。年代物の反社です。

◼︎5万円で反社の看板を外させた債務者

え? あれ?
この前来たときに見落としたかな? 撮影した写真を見直したけど、看板の影も形もありません。このご時世、こんな看板持って引っ越して来られるわけもなく。
突如現れた反社の看板。Cさんに確認しなきゃなりません。

ピンポーン。
「あ、え、テツクルさん……どうしたんですか……」
「ちゃんと払ってくれないから来ちゃったよ」
「すいません、すいません、せっかくのご縁なのにすいません」
「そういうのいいから、利息は?」
「ごめんなさい、明日には必ずなんとかしますんで……」
「現金ないんじゃねーか」
「大切なご縁を……」
「あのさ」
「はい……」
「ご縁はいいんだけどさ、あれ何?」

ぼくは看板を指して聞きました。

「はぁ……よくわかりません……」
「反社の看板だろ」
「そうですか?」
「いやいや、どう見てもそうだろ。こないだ来たときはなかったよね?」
「そうですかね?」
「Cさん、何か隠してるでしょ」
「こんなご縁で助けていただいてるテツクルさんに隠しごとするわけないじゃないですか……」
「顔、踏んでもいい?」

詰めるぼく。逃げるCさん。
でも、結局白状しました。
「実はですね……テツクルさんが来る日、頼んで看板外してもらったんです……」
「は?」
「だって……看板あったら貸してもらえないでしょ?」
「当たり前だろ」
「そうだと思いまして……」
「どうやったら外してもらえるの?」
「相談しに行ったら、5万円で1日外してやると言われまして……」

実は、その組織はそれほど大きなものではないらしく、しかもCさん宅の並びの部屋はお泊まり当番のお兄さんしかいない部屋で、Cさんの相談をきいたお兄さんはちょっとした小遣い稼ぎを思いつき、一時的に看板を隠すことに協力してくれたとのことでした。
「せっかくのご縁を……」
「Cさん、もういいからさ、家売って返してよ。買ってくれる人、紹介するからさ、家賃払えばこのまま住めるようにしてあげるよ。リースバックっていうんだよ」
「え、いや、それは……」
「じゃ、いま利息払えよ」
「あの、明日には必ず……」

結局Cさんは自宅を手放し、新オーナーに家賃を払って住み続けることで決着しました。でも、並びに反社が立派な看板を掲げている家が簡単に売れるわけがありません。

そこで、中国人の投資家をCさんに紹介しました。中国人って、反社とか気にしない人が多いんです。
中国人投資家がCさんに払う売買代金から貸したお金を回収して、ぼくとCさんのご縁もここまでです。

後日談ですが、Cさんの部屋を買った中国人、汚部屋に住むCさんのことを不憫に思ってか、部屋のリフォームをCさんに依頼しました。なのに着手金を払った直後、Cさんは大量のゴミを部屋に残して失踪したそうです。

当然、中国人はちょう怒ってぼくに電話してきましたが、しばらくすると、自分でリフォームをはじめたようで、楽しそうにその様子の写真を送ってきました。
趣味が増えてよかったね。

テツクル

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