熱く激しい獅子舞バトルを描き、空前の大ヒットを飛ばした中国アニメ『雄獅少年/ライオン少年』が、2023年5月26日(金)より全国公開。
劇中のヒロイン・チュンの日本語吹き替えを担当したのが桜田ひよりさん。作品の見どころや20歳を迎えてからの変化などについて語ってくれました。
中国作品のダイナミックな映像に胸を打たれた

20歳を迎えて海外作品に挑戦した桜田さん。衣装協力:e.m. 青山店、エイタークルー(Hdxuly,)、CHARLES & KEITH JAPAN
――女子高校生役を演じた劇場アニメ『薄暮』から4年。海外アニメの初の吹き替えとなりました。
すでに完成している作品に声を入れるという初めての経験でした。いただいた台本の構成も日本のものとは異なり、まずは読み方から始めました。
先に声を収録していった『薄暮』やこれまで経験してきたドラマや映画とも作り方が違っていて、とても不思議な気持ちでしたね。改めて、声だけで表現することの難しさを知った作品でもあります。
――中国で公開されたオリジナルはどんな印象でしたか?
中国ならではの楽器を使った音楽、普段私たちが知っている獅子舞よりもカラフルで大迫力ある動き、そして映像美などに胸を打たれました。そこに日本語のセリフを入れていくことにはワクワクしました。

躍動感ある獅子舞のシーンは観る者を引きつける見せ場に。©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.
――吹き替え版で共演されたのは、花江夏樹さんや山寺宏一さんら、声優界を代表する方ばかりです。
あまりに豪華すぎるので、「本当に私で大丈夫なのかな?」と。プレッシャーはすごくありましたし、実際の収録では何度も監督さんに「大丈夫でしたか?」と聞いたり、「今度はこうしてみますか?」とアドバイスをいただいたり、いろいろと試行錯誤しながら進めていきました。収録は私ひとりだけだったので、ほかのキャストのみなさんに迷惑かけることなくできて良かったです。

「少女・チュンは人間的にも魅力的な人物」(桜田さん)。
――謎めいた少女・チュンを演じるうえで、心がけた点を教えてください。

桜田さんが演じた少女・チュンの獅子舞の演技に魅せられた主人公のチュン。©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.
芯の強さと可愛らしさを持ち合わせた女の子だったので、年相応なところもありつつ、主人公の男の子が心動かされるような素敵な女性像をイメージしました。声をできるだけ低くしてみたり、ちょっとした呼吸のタイミングを注意したりと、いくつか意識していた点はありました。
演じていくうちに、チュンは性別関係なく人として尊敬できる人物なんだと実感しましたね。
――桜田さんが感じたこの作品の一番の魅力はどこでしょう。
私が吹き替えたチュンの登場シーンは、どちらかというとシリアスですが、作品全体としては、友情やバトルシーンに引き込まれつつ、要所要所に出てくるコミカルさが印象的でした。予想外の展開もあって、クスッと笑えたりするのがいいんです。

獅子舞大会優勝を目指すためチアン(左)にコーチ役を頼みにいった3人。©BEIJING SPLENDID CULTURE & ENTERTAINMENT CO.,LTD ©TIGER PICTURE ENTERTAINMENT LTD. All rights reserved.
――映像でのお芝居と声だけのお芝居、それぞれの醍醐味について教えてください。
映像のお仕事は、表情など視覚的なものを含めて、演じる楽しさがありますし、10代だからこそ、20代だからこそできる役柄があると思うんです。さすがに、おばあちゃんになって制服は着られないですよね。そういう意味では、今を楽しむという部分が強みだと。

今作で声優の仕事の難しさと可能性を感じたそう。
反対に、声のお仕事は年を重ねても学生の役柄ができたり、実写ではできないような設定や動きができたりすることが強みだなと思います。ただ、声だけで感情を出すことの難しさはもちろんですが、自分が想像していたより、お腹から出す声というか声量が大事だということを学びました。
観ている人にいかにキュンとしてもらえるか

「この年になって学園ものを演じるのが新鮮です」
――今春に「Seventeen」専属モデルを卒業し、女優としてのキャリアは10年以上になりました。
振り返ると、これまで個性的なキャラを演じることが多かったですが、高校を卒業してからは、ヒロイン役が増えてきました。この年齢になって、ようやく制服を着て、青春に重点に置いた学園モノをやらせていただいてますね。
今、まさしく“初めての青春”を味わっている気がして。新たな経験をしながら、毎日毎日、新鮮な気持ちで演技をしています。「いかに観ている方にキュンとしてもらえるか」に視点を置いたことで、これまでとは違った表現になると気付いたのも大きいですね。

「家族と飲むお酒がおいしい」というのが20歳になってからの変化。
――20歳になられた2022年末には、ドラマ「silent」で目黒蓮さん演じる主人公の妹・萌を演じられました。ご自身の中で変化はありましたか?
特にないんです。自分自身としては「周りの評価に影響されていないな」と思っています。「とても話題性のある作品に出演させていただいた」という気持ちです。
20歳を迎えての大きな変化は、お酒を飲めることになったことぐらいでしょうか(笑)。ひと通り何でも飲めるのですが、引き込もりな性格なので、誰かと飲むようなことがないんです。次の日、仕事がお休みで、心にゆとりがあるときだけ家族とちょっとだけ嗜む感じです。
――アニメや漫画などがお好きと聞きました。最近沼にハマった作品は?
最近は忙しくて、沼にハマる機会がなかったのですが、好きなモノに対してはまっすぐに行くタイプです(笑)。そういえばアニメの『進撃の巨人』を改めて第1話から見返しました。「Final Season」に向け、しっかり伏線回収をしたかったんですよね。見たのは2周目だったのですが、いろいろなシーンで何回も鳥肌が立ちましたし、改めて気付かされることも多かったです。あとは、配信サイトで『ガンニバル』や私の好きなハン・ソヒさんが出た『サウンドトラック#1』などのドラマも見ました。
――「19時以降に食事をしない」「毎日1.5リットルの水を飲む」など、コンディションをストイックにケアされてます。
ドラマの撮影に入ると、1クール、2ヶ月半の間、体重や見た目を維持しなくてはいけないので、決まり事がないと、体がぜんぜん変わってきちゃうんです。いろんな雑誌で読んだり、いろんな方の話を聞いたりしたものを一度試行錯誤して、自分に合ったベストなものを編み出していきました。ただ、それは仕事をしているときだけで、仕事がないときは好きな時間に好きなものを食べています。

二段ベッドから卒業するのが今の目標だそう。
――新たに始めてみたいことはありますか?
基本的に休みの日は家にいるので、身の回りの充実を求めて、部屋の家具を新調したいです。今だに小学生の時から兄と使っていた二段ベッドで寝ていて、今の部屋だとモチベが上がらないんですよ(笑)。
アンティーク家具を置くとか明確なスタイルはないんですけど、自分の好きな色で統一したいですね。すごくお金がかかるので、それを目標に仕事を頑張りたいです!
桜田ひより(さくらだ・ひより)
2002年12月19日生まれ。千葉県出身。14年、ドラマ「明日、ママがいない」で注目を浴び、18年『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』で映画初主演。その後も幅広いジャンルの作品に数々出演。22年放送のドラマ「silent」では萌役を演じたほか、23年7月には映画『交換ウソ日記』の公開も控える。
文=くれい響
写真=鈴木七絵
スタイリスト=前田涼子
ヘアメイク=菅井彩佳
くれい響