
大槻ケンヂ 撮影/川しまゆうこ
90年代の音楽シーンに颯爽と現れ、ティーンエイジャーを中心に熱狂的なファンの支持を集めた筋肉少女帯。そのフロントメンバーが大槻ケンヂだ。今年メジャーデビュー35周年を迎え、アルバム『一瞬!』の発売、ライブ活動やフェスへの出演など、今なお変わらず精力的な活動を続けている。
音楽シーンのみならず、エッセイ、小説、DJなど幅広く活動している大槻ケンヂさんの、THE CHANGEを聞いた。【第4回/全5回】
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大槻ケンヂさんは、筋肉少女帯としてのワンマンライブ以外にも、ソロアーティストとしても精力的にイベント出演をしている。今年9月に開催された音楽フェス、『アーバンギャルドpresents 鬱フェス2023』(以下鬱フェス)にも、主催のアーバンギャルドとコラボレーションする形で出演。「鬱フェスは、初回からずっと出てますからね」と大槻さんは話す。
――今年の鬱フェスで大槻さんは、黒地に明るめの虹色で刺繍が施された、華やかな特攻服を着ていました。以前とは、ファンや周りから求められることが変わってきましたか?
「若いころって、ロックや音楽に求めるものって、反逆や怒りだったりした。でも大人になると、そういうものを求めるより、むしろファンタジーを求め出すんだなって実感した。バンドというジャンルに限らずそうだと思うんですよ。表現者に癒しやファンタジーを求めるようになるから、キラキラしたほうがいいって思うんです」
長年活動を続けるなかで、ライブでのスタンスにも変化があったと大槻さんは語る。
「僕は若い頃ライブを観に来るお客さんは“敵”みたいな気持ちでいたんですよね。ライブは戦いの場って感じていた。80年代のパンクはそういう雰囲気だったんです。でも、いつからかお客さんはライブを楽しみにしてくれているって気づいた。
それに気づくのが結構遅かったかな(笑)。それからもう、常に“楽しくやろう”って意識していますね。お客さんを楽しませるのにはまず自分が楽しまないといけない。それってごく基本的なことだなって痛感しています」
まさかの赤いちゃんちゃんこ事件!?
――大槻さんはミュージシャンであり、新曲『50を過ぎたらバンドはアイドル』というタイトルにあるようにアイドルだと思います。
「僕たちがデビューしたバンドブームの頃は、まだ20代だった。当時は、ロックバンドで世に出るなんてことは、若者が突然“俺はアメリカ大統領になる! “っていうのと同じくらい、周りから“なに、言っているの”って思われる無謀な話だったんです。
でも今では僕よりも年上の先輩方が、元気にやっていらっしゃるからね。僕たちもまたギラギラしはじめるかもしれないですね」
インタビューが進むにつれ、大槻さんはにこやかに最近のライブの様子や身の回りの出来事についても語ってくれた。
「今年の鬱フェスで、赤いちゃんちゃんこを着たんです。ステージ上ではメイクや衣装の上から着ているじゃないですか。でも、スタジオでアーバンギャルドとリハーサルをやったときに、ぼさぼさの髪型と素顔でちゃんちゃんこを着たら周りがシーンとしたんですよ(笑)。アーバンギャルドも僕を見て“あっ、おじいちゃんだ……”って顔をしていて」
――それはショックでしたね。
「去年の鬱フェスでは、出演者のアイドルグループのメンバーが、僕を見て“優しいおじいちゃんだ”って言ったんです。そうしたら、アーバンギャルドが”大槻さんはおじいちゃんじゃない“って言ってくれたのに、1年後に赤いちゃんちゃんこを着せるのはおかしいだろう、って思いましたけどね(笑)」

大槻ケンヂ 撮影/川しまゆうこ
筋肉少女帯での夢、そして野望は海外へ
メジャーデビューから35年目を迎えた今も、ミュージシャンとしての目標は高い。
「ユニコーンやウルフルズとか、僕らと同世代で毎年大きな夏フェスに出ているバンドもいるじゃないですか。筋肉少女帯も、フェスみたいなイベントに呼ばれても対応できる体力を持っていたいですね」
――筋肉少女帯といえば、武道館ライブが印象的です。
「筋少の武道館公演は5回やっていますね。自分がライブをするまでは、武道館のある九段下にも行ったことがなかったし、若い頃は“武道館幻想”なんて持っていなかった。逆に今こそ、もう何回かは武道館でライブをやりたいな。でも冬は嫌かも(笑)。
冬の武道館って寒いんだよね。知り合いのバンドが冬に武道館でライブをやるのを観に行くと、会場が寒くてしょうがないんだよ(笑)。だから、できれば冬は避けたいかな」
――活動期間が長いと、ファンの方も長く応援されているのではないですか?
「そうですね。古いファンの方だと、何十年も前から観に来てくれているんです。僕が確認できている一番古いファンの方が、だいたい25、6年前から見に来ていますね。ライフスタイルが変わって、しばらく見に来られなかった人が戻ってきたりもする。そうやって、長い期間応援してもらえるのはありがたいですね」
――ファン歴が長い人たち以外にも、若い世代のファンもいますよね。
「ファン層は、つねに入れ替わりますね。異なる世代の人たちが、筋少を聴いていましたってリスペクトしてくれたりする。そうやって下の世代にも繋がっていく。筋少も今年でメジャーデビュー35周年だし、ファンのみんなも、“元気にステージに立っていてくれればそれだけでいい”って思っているのかもしれないですね(笑)」
ライブ以外にも、今後の活動における野望がある。
「たとえば筋肉少女帯の曲が、TikTokでバズって、みんなで踊ってほしいですよね。戸川純さんの『好き好き大好き』みたいに、海外で大ブレイクとかしても楽しいんじゃないかな」
――ちなみに、大槻さんは飛行機が苦手だったと思うのですが、乗れるようになったのですか?
「乗れない……。だからたとえ世界のどこでブレイクしても、僕は行かない(笑)。海外のファンの人に日本に来てほしいな」
大槻さんの絶妙すぎるトークで、同席していたカメラマンや編集者から常に笑い声が聞こえる。和やかな雰囲気のインタビューとなったのは、その人柄の表れだろう。
THE CHANGE編集部