【見解】牛づくりは、人づくり 宮崎総局・古川剛光

  • 西日本新聞
  • 更新日:2017/10/13

◆和牛五輪を取材して

「宮崎県」。アナウンスが会場に響き渡った。9月に仙台市で開かれた第11回全国和牛能力共進会(全共)の最終日。肉質を競う「肉牛の部」で最高位の内閣総理大臣賞の発表を固唾(かたず)をのんで聞いた。「良かった」。重圧から解放され、安堵(あんど)したような雰囲気が関係者に漂っていた。

雌雄や月齢などで区分された9部門で競うこの大会は、5年に1度開かれ「和牛五輪」とも呼ばれる。そして、各県が目指す大賞が三つある。宮崎が3連覇を狙った総合成績の団体賞は、発表前に鹿児島県の受賞が確定し、「種牛(しゅぎゅう)の部」の優等首席(1位)群から選ばれる総理大臣賞は大分県が47年ぶりに獲得。残るは「肉牛の部」の総理大臣賞だけ。無冠のままでは帰れない。8日間取材していた私もさすがに胸が熱くなった。

今大会、関係者は牛の遠距離輸送に危機感を持った。宮崎‐仙台間、約1700キロの道のりで、長時間の陸送に疲れた牛が体重を大きく減らす危険があった。3連覇に向け周到な準備と細やかな体調管理が必要だった。昨秋には試験輸送を実施。最終的に渋滞の少ない北陸ルートを選び、到着後の管理も見事だった。

宮崎県は9部門中3部門で優等首席を獲得。団体賞3連覇は鹿児島県に阻まれたが、見方を変えれば、南九州勢がほぼ独占したとも言える。宮崎は3大会連続の総理大臣賞受賞でもあり、農家たちには「やりきった」という充実感もうかがえた。

若い力にも目を見張った。2010年の家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」で牛や豚335頭を全て失った高鍋農業高(高鍋町)が、特別枠で初開催の高校の部で全国2位。さらに、高校生として30年ぶりに全共本選に出場した小林秀峰高(小林市)が、ベテランの大人たちを押しのけて部門5位に入った。快挙にもかかわらず、1位を逃して悔し涙を流す高校生たちは頼もしく映った。

和牛の生産力は、農家だけでなく、それを支える技術員や農協、行政、獣医師など地域全体の総合力だ。「牛づくりは、人づくりなんですよ」。「チーム宮崎」の旗振り役だった長友明博・全国和牛登録協会県支部事務局長の言葉の意味が分かった気がした。

次回22年全共の開催地は鹿児島。雪辱を期す宮崎県勢の優勝争いが今から楽しみだ。

=2017/10/13付 西日本新聞朝刊=

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