【ライブレポート】鈴木祥子、鎌倉長谷別邸の庭園で生声で愛を歌う

【ライブレポート】鈴木祥子、鎌倉長谷別邸の庭園で生声で愛を歌う

  • BARKS
  • 更新日:2016/10/20
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季節の変わり目で雨が多かった2016年の夏の終わり。そんななか開催された鎌倉・長谷別邸での鈴木祥子定期演奏会『No Microphone,Please.』第二回「外で歌おう」。

心配された天気もこの日だけを狙ったように晴れ! 彼女の晴れ女パワー!と思わざるを得ない。

演奏会は、一部二部形式で、12:30~と15:30~。一部に参加された方は暑かったくらいでは?と思います。私は、二部への参加。久しぶりの鎌倉を楽しみながら、江ノ電で長谷駅へ。ライブ、コンサート、演奏会、いろんな呼び方があるけれど、音楽を聴くイベントは、その会場にいる時間だけでなく、行くことが決まったときから開催までの日々、そして、会場に行く道のりまでがライブで、特に向かう道のりは、神社でいうところの参道のようなものに思える。会場に着いて嬉しかったのは女性が多かったこと。私が彼女のライブに行き始めた20数年前は、女性が私ひとりということもよくありました。女性が多い女性のライブは、ほんと素敵です。

今回の演奏会は、マイクを使わない、生の声での歌。鈴木祥子という人が今何をやりたいのかが伝わってくる、彼女らしい場所であり演出だ。庭にはwurlitzer。ステージという場所はなく、演奏する人と聴く人が同じ目線。そして、時に融合する。ライブやコンサートには、お決まりのルールのようなものがあるが、この日はそんなこと関係なくまさに自由。彼女が見せたい今の鈴木祥子を演出してくれているよう。そして、黒のトップスに黒に花柄のスカートで登場。

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演奏会の始まりは、10月2日が日曜日ということで、日曜日にちなんだカバー曲を4曲。ギターで大滝詠一さんの「青空のように」。まさにこの日の空は青空。そして、「ビューティフル・サンデー」。英語と日本語を混ぜて歌うスタイルは彼女らしさ。この日のギターは、最近仲間入りをしたという12弦。厚い音に吸い込まれるような感覚だ。マイクなしでも充分な力がある。続いて、Shirellsの「アイ・メット・ヒム・オン・ア・サンデー」。日曜に会った彼との1週間の恋の歌。カバーで歌われる曲は、いつも楽しみで今回も期待を裏切らない。

5曲目でオリジナルへ。1989年に発売されたオリジナルアルバムのタイトル曲「水の冠」。個人的には、このアルバムで彼女に出会ったのでとても嬉しかった。“オレンジ5つも絞ったジュース”は、作詞家、川村真澄さんの小説『雨が降る靴』にオレンジが4つになって描かれているシチュエーション。そして、「絶望するように愛すること」の深さを毎回考えさせられる。

続いて1997年に発売された『Candy Apple Red』から「ぼくたちの旅」。『Candy Apple Red』は、ショートカットの彼女と赤いギターが印象的なアルバム。“気がつけば動きだしてる”は、まさに今の彼女なのかなと思いつつ。爽やかなメロディに、空を見上げて旅する姿を思う。

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懐かしい曲が続いたところで、新しい曲「北鎌倉駅」。鎌倉に住んでいるから生まれた曲とのこと。実際に北鎌倉駅で書いたそう。北鎌倉駅から見上げる空は、どんな色だったんだろう。休日に行くといつも人が溢れているこの駅も、きっと平日の昼間は静かにものを考えられる場所なんだろうなと。

発売当時、怖くてなかなか聴くことができなかった曲「花束」。とても重く感じていたのだけど、今となってはそのままにしか受け取れなかった自分の若さを思う。開放された空間で、高い空、鳥の声に包まれて聴くと新たな面を感じる。演奏会も夕方になり、“夕日の色に染まってく”という歌詞が染みる。

2010年にリリースされたシングル「my Sweet Surrender」。Surrenderが意味する降伏と幸福が、同じ音であることから書かれたこの曲。愛がテーマの曲が多い彼女が、行きついたひとつの場所なのかと思う。愛することも愛されることもエゴの塊だけど、ある時そうじゃなくなる時が来るのだろうかを思う。

デビューアルバムからの「ベイビー イッツ ユー」。これをリリースした頃の彼女と、今の彼女はどれくらい同じでどれくらい違うのだろう? 個人的には“ひとりで生きてゆく”ことを素敵以外の何物とも思っていない私は、今も昔も大好きな曲。彼女自身は、ひとりで生きることと、ふたりで生きることをうまくMCでまとめてくれました。

「Get back」は、都会に疲れた女性が田舎に帰る心情と行動を歌った歌。故郷がある人、東京で生まれ育った人。それぞれの生き方があり、常に隣の芝は青い。東京に生まれた人を心底うらやましいと思った時代もあったけれど、今は帰る場所があることの素晴らしさも知っている。彼女の歌を聴くようになって、帰る場所の大切さや、帰る場所の怖さを知った。そして、彼女は今も帰る場所を探しているのだろうか、と思う。

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本編ラストは、「GOOD OLD DUSTY ROAD」。外での演奏会のせいか、何度も空を見上げた。そして、この曲も空を見上げずにはいられない。彼女が音楽を続ける理由はきっといくつもあるだろうけれど、思いはひとつなんだろうな思わされる曲。“たったひとつぶの たった一瞬の たったひとつの歌”。そこにあるもの。そこにあるほんの小さなもの。それが世界につながる、それが宇宙につながる。そんなことを思う。

歌いながら長谷別邸内に消えた後、アンコールの声が高まる。気づけば陽は傾き、日差しが優しくなっている。夕方の空はこんなにも柔らかかっただろうか。

アンコールは、セルフカバーで坂本真綾さんに提供した「風待ちジェット」。wurlitzerの音でのポップな曲調、優しい歌詞に癒される時間。そして、リクエストタイムへ。いくつかの曲が挙がる中、夕方の部では、「ときめきは涙に負けない」と「光の駅」。奇しくも、“寝転んで 雲の形”で始まる「ときめきは涙に負けない」。今日は空につながる歌が多い。そして、自ずと空を見上げて雲を見ている自分に気づく。12弦で演奏したことないと言いながら「光の駅」。この曲では、勝手にキラキラと光る海を窓に映しながら走る江ノ電を想像してみる。ア・カペラでの「TRUE ROMANCE」では、日常に戻りつつも目覚めるたびに生まれ変わる自分を思って、明日からも新しい自分を描こうと思う。

そして、ラストはカーリー・サイモンの「Never been gone」。秋が始まる季節のマイクなしでの野外での演奏会。今の鈴木祥子が詰まった場。音楽との関わり方は、音楽を好む人の数だけある。思うようにならないこと、できないことも多いけれど、立ち止まったらそこで終わってしまう。どこに行きたいのか? 何をしたいのか? 自分に問うことでしか見つからない。それを目の前で証明してくれた、そんな演奏会だった。次は年明けのレコーディングライブ。今から楽しみだ。

寄稿:伊藤緑

<鈴木祥子マンスリー・レコーディング・ライブ・其の二。『しょうことスタインウェイのお正月』>

@銀座・音響ハウス第一スタジオ

2017年1月7日(土)

開場15:00 開演15:30

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