ジェーク“ザ・スネーク”ロバーツ ヘビと呼ばれた男――フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100<第68話>

ジェーク“ザ・スネーク”ロバーツ ヘビと呼ばれた男――フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100<第68話>

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2018/04/26
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連載コラム『フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100』第68話は「ジェーク“ザ・スネーク”ロバーツ ヘビと呼ばれた男」の巻(イラストレーション=梶山Kazzy義博)

怪奇派というよりも、ライフ・ストーリーそのものがひじょうにミステリアスでどこか反社会的なキャラクターだった。

DDTの発案者として知られ、アンダーテイカーが出現する以前のWWEの怪奇派の“大ヒット商品”だった。

父親グリズリー・スミスのコーチを受け、1975年に20歳でデビューしているから、1986年にWWEのリングに初登場した時点ですでにキャリア11年のベテランだったことになる。

“ザ・スネーク”というニックネームは、1980年代前半にNWAジョージア地区をサーキット中に定着した。

ジェーク・ロバーツがまるでヘビのような動きをすることから、実況アナウンサーのゴードン・ソーリーが「彼はスネークだ」と形容したのがはじまりとされる。

長身6フィート5インチ(約196センチ)のわりに体つきはスリムで、キャンバスをするするとすべるような動きを得意としていた。

コーナーに座り込んで静止したかと思うと、いきなりものすごいスピードで動き、また数秒後にはピタッと動きを止め、最後は相手の首をとった瞬間、いきなりDDTを決めるというのが定番パターンだった。

無言のままコーナーに座り込むと、いつも不可解な薄笑いを浮かべていた。それはサイコ系キャラクターとしての演技だったのかもしれないし、あるいはロバーツのほんとうのフィーリングだったのかもしれない。

複雑な家庭環境、少年時代に経験した(とされる)性的虐待、近親相姦、妹が犠牲者となった殺人事件、そしてドラッグ依存症といったさまざまな“秘密”が明らかになっていくのはそれから10数年後のことだった。

ビンス・マクマホンは、“ザ・スネーク”のニックネームどおりロバーツに生きたヘビを“付属品”として持ち歩かせた。

怪奇派キャラクターとしてヒールとベビーフェースを演じ分け、リッキー・スティムボート、ランディ・サベージ、リック・ルード、アルティメット・ウォリアーらと因縁ドラマを演じたが、なぜかハルク・ホーガンとの接触はあまりなかった。

“レッスルマニア8”でアンダーテイカーとのシングルマッチに完敗した試合を最後にWWEを退団(1992年4月5日=インディアナ州インディアナポリス)。

それから4年後、WWEに復帰したときは敬けんなクリスチャンに生まれ変わっていた。

“キング・オブ・ザ・リング”トーナメント決勝戦としておこなわれたロバーツと“ストーンコールド”スティーブ・オースチンのシングルマッチはプロレス史に残る“事件”だった(1996年6月23日=ウィスコンシン州ミルウォーキー)。

ベテランのロバーツを下して“キング・オブ・ザ・リング”トーナメント優勝を決めたストーンコールドは、試合終了後、「“オースチン3:16”、ストーンコールドがテメエのこてんぱんにノシたぜAustin“3:16”says I just whipped your ass」とコメント。

1990年代後半からミレニアムにかけてのストーンコールドのトレードマークとなる“3:16”なるフレーズ――聖書の“3章16節”のパロディ――は、敬けんなクリスチャンとなったロバーツを罵倒した台詞だった。ロバーツがクリスチャンでなかったとしたら“3:16”というフレーズは誕生していなかったかもしれない。

ロバーツのナゾにつつまれたロバーツのプレイベート・ライフは、ドキュメンタリー映画『ビヨンド・ザ・マット』でその断片的なエピソードがいくつか紹介された。

ドラッグ依存症のジェーク“ザ・スネーク”。神に救いを求めるジェーク・ロバーツ。ロバーツは、ふたつの人格のあいだを行ったり来たりしていた。

それはひとつのファンタジーだったのかもしれないし、悲しい現実だったなのかもしれない。持ちものらしい持ちものは、自動車とスポーツバッグだけになってしまったらしい。

WWEのリングから消えてもプロレスをやめてしまったわけではなくて、いまでも毎週のようにアメリカのどこかの弱小インディー団体のリングでひっそりと試合をつづけているという。

プロモーターはロバーツがどこに住んでいて、どうやって試合会場までやって来るかを知らないし、じっさいに試合がはじまるまではほんとうにロバーツが現れるかどうかもわからない。

ロバーツは、孤独な薄笑いを浮かべながら知らない町の知らないハイウェイをきょうも走りづづけている――。

●PROFILE:ジェーク・ロバーツJake“The Snake”Roberts
1955年5月30日、ジョージア州ストーン・マウンテン出身。本名オーレリアン・スミス・ジュニア。父親は元プロレスラー&プロモーターのグリズリー・スミス。1975年5月、デビュー。1986年、WWEと契約。1992年、WWEを退団しフリーとなるが1996年に復帰。翌年、解雇。薬物不法所持、交通事故(あて逃げ)、動物虐待などで逮捕―執行猶予。2007年12月、WWEのウェルネス・ポリシー(医療費全額負担)で薬物依存症のためのリハビリ・プログラムに入院。2012年、ダイヤモンド・ダラス・ペイジのヨガ・メソッドにより減量に成功。2014年、WWEホール・オブ・フェームで殿堂入り。現在もときおりリングに上がっている。

※文中敬称略
※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦

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