2017年に国民的ヒットが出なかった理由と2018年に起こること

2017年に国民的ヒットが出なかった理由と2018年に起こること

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/01/14
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「国民的ヒット曲」がなかった2017年の日本の音楽シーン。2018年は国内外で何が起こるのか? 『小沢健二の帰還』著者の宇野維正さんと『ヒットの崩壊』著者の柴那典さんが音楽、映画、テレビ、芸能界、東京五輪……「2018年の展望」を縦横に語り尽くす。

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(左)宇野維正さん、(右)柴那典さん(写真・岩本良介)

2017年、日本で起きていたこと

柴 今回は2018年の音楽やエンタテインメントがどうなっていくかを語り合おうと思うんですが、まず宇野さんは昨年をどう振り返っていますか?

宇野 海外と日本では状況が全く違うよね。どっちから話をしようか。

柴 まず日本の音楽シーンの話をしましょうか。以前にもコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53891)に書きましたが、2016年にリリースされた星野源の「恋」が2017年も最大のヒット曲になりました。

宇野 そのことが象徴的だけれど、2016年って異例なほど日本で多くのヒット曲が生まれた年だったよね。その勢いのまま2017年も沢山のヒットが生まれるのかと思いきや、まったくそんなことはなかった。それは音楽だけでなく映画でもそうで。

柴 映画に関してはどうだったんですか?

宇野 若年層の観客に向けたコミック原作の実写映画はほぼ壊滅的だった。興収20億円がメジャー配給作品のヒットの基準とすると、それを超えたのは『銀魂』だけ。

あと、少ない製作費で高収益を見込めることでここ数年ずっと量産されてきた女子中高生向け映画も、ヒットしたのはラノベが原作の『君の膵臓をたべたい』くらい。

1年前の『君の名は。』と同時期に同規模で公開された『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』も惨敗。

柴 DAOKO×米津玄師の「打上花火」はヒットしましたね。

宇野 そう。あれは映画がヒットしなかったのに主題歌がめちゃくちゃ売れた珍しいケース。ダウンロード系のチャートでは夏以降ずっとトップ3をキープしていた。

柴 「打上花火」はビルボードジャパンの年間チャートでも3位でした。映画がヒットしたらこの曲は世代を超えた国民的ヒット曲になったかもしれなかった。

宇野 ホントそう。映画の評価と切り離してもっと広がってもいい、現代のポップスとして完璧な曲だった。2017年の紅白に何が足りなかったって、「打上花火」でしょう。

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は、『君の名は。』と同じようなものを期待して観にいった人が失望したことによって、必要以上にバッシングされたところもあった。

そういう2016年の反動がいろんなところで起こっていたのが、2017年だったのかもしれない。

柴 結局、年末からお正月にかけてのテレビでも『逃げるは恥だが役に立つ』の再放送と『君の名は。』の地上波初放映が注目されてましたね。やっぱり2016年を引きずっている。

宇野 『カルテット』のように、1年を通して人々から語られ続けた作品はあったけどね。でも、そういう作品が、必ずしも世間的にヒット作とならない時代になってきている。そう考えると、「恋」の持続力はすごいことだよね。

柴 もちろん「恋」のロングヒットにポジティブな側面もあるとは思うんです。今の時代は、あれだけのパワーを持った曲であれば、すぐに消費されて飽きられず、一つの曲が1年以上にわたって影響力を持ち続けることができるということも言える。けれど逆に言えば誰もあの曲を超えられなかったとも言える。

宇野 でも、星野源自身は周到に「恋」のイメージをちゃんと更新していった。2017年、星野源は音楽作品としてはシングルの「Family Song」しか出してないんだけど、年を越えても終わる気配のない「恋」の狂騒からは慎重に距離をとっていた。

柴 星野源が2018年にどう動くかは大きなポイントだと思います。

宇野 星野源がすごいのは、日本の音楽シーンのど真ん中の役割を引き受けつつも、ラジオでチャンス・ザ・ラッパーやアジズ・アンサリ(アメリカのインド系コメディアン。ドラマ『マスター・オブ・ゼロ』のクリエイター兼主演)に言及するなど、同時代の海外カルチャーの重要な動きにも常に目配せが効いているところ。

そこが見えているのと見えていないのとでは、今はまだ現象面ではそこまで出ていないけれど、数年後に圧倒的な差が生まれてくると自分は思ってる。

柴 星野源だけじゃなく、いろんなアーティストやクリエイターに言えることでしょうね。それは日本においてもということですか?

宇野 うん。ここまで世界中のカルチャー全体が変革しているわけだから、その大きな波は時間差があっても必ず日本にも押し寄せてくるはず。

2018年のグラミー賞から見えてくること

柴 アメリカの音楽シーンの現状を象徴的しているのは、2018年のグラミー賞の主要3部門が、ほぼ全員ラップ/R&B系のアーティストに占められていて、白人のアーティストがほとんどいないことですよね。

宇野 ラップ/R&Bが完全にポップ・ミュージックのメインストリームとなったのは今始まった話ではないけれど、グラミーのような権威もいざ変化する時には容赦なく変化するんだなって。

柴 最多ノミネートが8部門のジェイ・Z。それに続くのがケンドリック・ラマーの7部門。

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ケンドリック・ラマー〔PHOTO〕gettyimages

宇野 本命はケンドリック・ラマーでしょう。ちなみにケンドリック・ラマーのアルバム『DAMN.』は2017年にアメリカで最も売れたアルバムでもある。

最も売れている作品と最も評価されている作品が同じということは、今のアメリカの音楽シーン全体に活気があって、健全に機能している証拠だね。

柴 実際に、アメリカの音楽業界は2017年も前年度の収益を大きく更新しましたよね。

ただ、ストリーミングを中心にあれだけたくさん聴かれたエド・シーランがグラミーにノミネートすらされていないというのは驚きましたよ。オーソドックスなロックやポップスに対しての風当たりはものすごく強くなっている。

宇野 まあ、賞を獲るかどうかは別として、ノミネートはされてもよかったよね(笑)。

柴 去年はビヨンセの『レモネード』が主要3部門を受賞しなかったことで物議を醸しましたよね。

宇野 主要賞を獲ったアデル自身、受賞を喜ぶのではなく、ビヨンセに対して恐縮するような事態になってました。アデルの『25』はもちろん素晴らしい作品だったけど、リリースされたのは2015年の秋。そこから去年のグラミーまでの1年ちょっとで、そのくらいエンタテインメント界全体の空気が変わってしまった。

柴 グラミーがようやくその空気を反映するようになったということでしょうか?

宇野 そう。実際にフランク・オーシャンやドレイクといった影響力の強い黒人系アーティストの中には、ここ最近、グラミーに自分の作品を提出しないという動きもあって。

日本でいうとレコード大賞や紅白に出ない大物アーティストみたいな話と思われるかもしれないけれど、グラミーでそういう事態が起きるというのは異例のことで、実際に視聴率の低下にも影響が表れている。

柴 これもシーンに活気があることの証拠ですけど、ラップのシーンでは確実に世代交代が進んでますね。ポスト・マローンやリル・ウージー・ヴァートのように、ヒットチャートにもどんどん新しい世代のラッパーが登場してきている。

宇野 2017年は完全にトラップがメインストリームのシーンを覆い尽くすようになった一年だった。2017年の2月にフューチャーが『FUTURE』と『HNDRXX』を2週連続でリリースしてどっちも1位になったのが象徴的で。

柴 テイラー・スウィフトの新作『レピュテーション』もトラップのビートを全面的に取り入れてましたね。

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エド・シーランとテイラー・スウィフト〔PHOTO〕gettyimages

宇野 ただ、トラップのブームもそろそろ落ち着いてきたというか、さすがに流行りすぎたことへの反動が出てきたのも2017年後半だったと思う。テイラー・スウィフトのアルバムも、音楽性よりもやっぱりリリックの内容で語られているよね?

柴 そうですね。今回の作品はポップスターが作られたものであるという構造自体をテーマにしたアルバムですね。ポップスターの裏の顔というか、本音というか。

宇野 カニエ・ウェストとの確執とか、自分に向けられた罵倒とか、ゴシップとか、そういういろんな自分の評判を戯画的に歌っている。

90年代リバイバルの功罪

柴 そういえば、今回のテイラー・スウィフトの変化って、小沢健二が予言していましたよね。

宇野 そうなんだよ。ちょっとゾッとする話なんだけど、3年前に開催された岡崎京子展のタイミングで出版された展覧会図録『岡崎京子 戦場のガールズ・ライフ』に小沢健二が寄稿していた「『みなさん』の話は禁句」というエッセイは、まさに今回のテイラー・スウィフトの話なの。

柴 あのエッセイについては、『小沢健二の帰還』の中でも結構ページを割いて触れてましたよね。

宇野 そう。「スターは大衆に細かく分析される、と言うけれど、もしかしたらスターのほうが、大衆なるものをより精密に分析する。社会を分析する。でも、スターたちはその話はしない。『みなさん』の話は、禁句だから」ってやつ。

柴 テイラー・スウィフトは『レピュテーション』で、その禁句を放ってみせた。

宇野 そう言ってた小沢健二も、最近のエッセイではガンガン禁句を放っていてとてもおもしろいんだけど(笑)。

柴 岡崎京子と小沢健二といえば、2018年2月には岡崎京子の代表作『リバーズ・エッジ』の実写映画が公開されますよね。当然のように、そこでは小沢健二も主題歌を手がけていて。

宇野 「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」。その曲も、かなり問題作なんだよなぁ(笑)。

柴 それと、夏には大根仁監督の『SUNNY 強い気持ち・強い愛』が公開される。どっちも90年代の日本を舞台にしていて、こちらもサブタイトルに小沢健二の曲名が引用されている。

宇野 うーん、その二つの作品は小沢健二の関与の仕方も違うから切り離して考えた方がいいと思うんだけど。

ただ、映画業界や音楽業界で力を持っている人の中心が50代から40代へと移行してきたことで、彼らが青春時代を送ってきた90年代のリバイバルというのは、これからもいたるところで出てくるかもしれない。

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柴 僕も90年代に青春時代を過ごした人間ですけど、安易なリバイバルには警鐘を鳴らしたい気持ちはありますね。

宇野 これもちょっと、日本と海外を同一線上では語れないと思うんだよね。

アメリカやイギリスでは、スミスでもキュアーでもニルヴァーナでもいいけれど、80年代や90年代のポップカルチャーが基礎教養のように多くの人から共有されているじゃない? ちゃんと若い人の間でも聴かれ続けてきたし。

でも、結局、日本だとサブカルの狭い世界の話に終わっちゃいがちで。そこを渡るのは、なかなか危うい橋だと思う。

柴 ただ、じゃあもっと広いところはどうかと言うと、90年代リバイバルが、ただ単に「懐かしい」で終わっちゃう感じがありますよね。「バブリーダンス」は受けたけど、じゃあそこから何が生まれたのかという。

宇野 ブームのきっかけに女子高生のダンス部というフックがあったというのはもちろんわかって言うけど、あれ、年末の音楽番組を見ててかなり暗澹たる気持ちになったんだよね。

現在進行形のヒット曲はほとんどない中、荻野目洋子の80年代ユーロビートのカバーだけがやたらウケてるっていう。やっぱりリバイバルって、現在進行形のカルチャーに活気があるから初めて楽しめるものだと思うんだよね。

ポリティカル・コレクトネスの配慮・利用

柴 テレビの話題では、2017年の大晦日に放送された『絶対に笑ってはいけない アメリカンポリス24時』でのブラックフェイス問題が、年明け早々、世界中の主要メディアで報じられるという事態が起こってますね。

宇野 うーん、あれに関する国内の擁護コメントとかを見てると、ちょっと絶望的な気持ちになってくる(苦笑)。

柴 というと?

宇野 簡単に言うと、あれを擁護するということは、「これからも日本は文化的鎖国をしていこうぜ」って話でしょ?

確かに文化的鎖国をしたところには様々な既得権も存在していて、そこで生活をしてきた人はその構造を変えたくないんだろうけれど、さすがにもう無理なんじゃないかな。

柴 ネットによって一瞬で世界に広まっちゃいますしね。

宇野 それもあるし、多くの日本人が誤解しているように思えるのは、ポリティカル・コレクトネスの問題って、別に政治的、社会的な問題だけじゃなくて、逆らうことのできない商業的な要請でもあるんですよ。

好成績を続けている『スター・ウォーズ』の主要キャラクターが女性や黒人の若者なのもそうだし、去年世界で最もヒットしたアメコミ映画が『スパイダーマン』でもヒーローが総結集した『ジャスティス・リーグ』でもなく、単独女性ヒーローの『ワンダーウーマン』だったのもそう。

ポリティカル・コレクトネスに配慮しない作品が、だんだんお客さんから見向きされなくなってきてる。

柴 まさにそうですね。日本でも、特に若い世代ほど家父長的な価値観にそっぽを向くようになってきている気がします。

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宇野 現在のエンタテインメントの活路って、まさにそこにあるんだよね。それは例えば、ストリッパー出身のカーディ・Bみたいな新しいタイプの黒人女性のスターが台頭している音楽シーンにも表れている。

柴 そういう意味では、『逃げ恥』でのLGBTの描かれ方や、あの作品が放っていたメッセージもすごく現代的でしたよね。

ポリティカル・コレクトネスは配慮するものではなくって、あまりいい言い方じゃないかもしれないけれど、むしろそれを利用することがヒットの条件になりつつある。

宇野 うん。さっき「そこが見えているのと見えていないのとでは、数年後に圧倒的な差が生まれてくる」と言った理由の一つも、そういうことです。

柴 日本にはそういうメッセージを発していく意識的なカルチャーの担い手がまだ少ないですよね。

宇野 でも、紅白で紅でも白でもないスロットにこだわって、トータス松本と一緒にNHKホールで「目抜き通り」を披露した椎名林檎とか、本当にいろいろ考えてるよね。

だって、みんな昔からずっと思ってたでしょ。「なんでドリカムやいきものがかりが紅組なんだ?」って。

柴 たしかにそうですね。AAAは一体どっちなんだ、とか。そういう意味でも紅白に足りなかったのは「打上花火」だったかもしれない。

旬のクリエイターにあやかる問題

宇野 あと、日本の音楽業界に関してすごくダサいと思うことがあって。

たとえばライゾマティクスの真鍋大度さんにしても、MIKIKOさんにしても、素晴らしい仕事をしている人だと思いますよ。でも、一度そういう裏方的なクリエイターが脚光を浴びると、本当にみんながそこに群がっていく。

勝手に「佐野研二郎問題」って言ってるんだけど。そのせいで、イノベイター的存在だったPerfumeがやってることすら、最近はちょっとお腹いっぱいになってきているという。

柴 ビルの屋上で踊りつつ渋谷の街に仮想空間を重ね合わせたPerfumeの紅白のパフォーマンスは世界的にもかなり革新的だとは思いますけどね。

とはいえ、真鍋さんら2010年代の前半に世に出てきたクリエイターの次の世代がなかなか生まれてないような気がします。

宇野 海外を見てると、音楽業界は全てのカルチャーで一番進んでる。そこから新しいデザイナーや映像監督やカメラマンがどんどんフックアップされている。

これはアーティスト自身の問題というより、スタッフの問題なのかもしれないけれど、今旬のクリエイターにあやかろうとする態度って、カルチャーを送り出している人間としてのプライドがないのかなって思う。

逆に言うと、海外はスターの裏側にいるスタッフに、メチャクチャ感度の高くて優秀な人がたくさんいるという話でもあるけれど。

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椎名林檎が引き受けるリスク

柴 こないだ東京オリンピックの開会式と閉会式のプランニングチームも発表されましたね。椎名林檎さん、MIKIKOさん、山崎貴監督ら8人が選ばれた。

宇野 必然的に、そこで一つのピリオドが打たれるよね。

柴 というより、実はもうピリオドは打たれているんだと思います。

これは去年から言ってることなんですけど、2020年の東京オリンピックはクリエイティブとしては未来を目指すものではないと思うんです。

むしろ2010年代の総決算になるわけで、そこに関わった人は、2021年以降にはいわば過去の人になってしまう。

宇野 「過去の人」というとさすがに語弊があるんじゃない? ただ、「権威側の人」と見られるのは間違いないし、既に椎名林檎はそういう視線にさらされている。でも、そのリスクを承知で引き受けているわけだから、偉いと思いますよ。

柴 そうですね。でも、2018年に新しいことを始めようとする人にとっては、今、目の前のことではなくて、オリンピック後のことを考えたほうがいいと思ってます。

宇野 そういえば、「新しい地図」のロゴデザインは佐野研二郎なんだよね。東京五輪から真っ先に排除された彼が「新しい地図」をやってるというのは、なかなか皮肉が効いてる。

今年公開される映画の企画も含めて、「新しい地図」の動きには、必ずしも全面的にワクワクしてるわけじゃないんだけど。そのあたりはSMAP時代と同じように、ちょっと広告代理店臭が強すぎるというか(笑)。

柴 ともあれ、2018年は時代の変わり目になるように思いますね。2019年4月には平成が終わることも予定しているわけで、実質的には2018年が平成の最後の1年になる。おそらく平成の30年を総括するような動きも増えていくはずで。

宇野 そうか。東京五輪のときは平成じゃないんだよね。

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〔PHOTO〕gettyimages

柴 それもあって、2018年は何かが始まるというより終わっていくことが象徴的な年になるという気がします。

宇野 SMAPの解散に続いて、今年9月には安室奈美恵が引退する。のんの活動も本格化してきたし、所属事務所とモメていると報道されているローラが、それでも相変わらずCM女王に君臨していたり、何かが変わりはじめているということにはみんな気づいているんじゃないかな。

柴 たしかに変わらざるを得ない状況になってきてますね。

2018年、安室奈美恵が引退する

宇野 結局、音楽業界も映画業界も、日本のメインストリームにあるほとんどのものはこれまでずっと芸能事務所の論理と倫理で動いてきた。

その構造自体はそう簡単には変わらないのかもしれないけれど、芸能界のあり方が変わってきているのと連動して、音楽業界も、映画業界も、もちろんテレビも、きっといろんなことが変わっていく。

そういう意味では、やっぱり安室奈美恵の引退は象徴的な出来事だと思う。

柴 というと?

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安室奈美恵〔PHOTO〕gettyimages

宇野 数年前に彼女が事務所から独立したのは、活動を辞める時期を自分で決めるためだった。つまり、前の事務所にいる限りはそれを決められなかった。

だから事務所を移籍して自分でゴールラインを定めた。NHKの特番のインタビューで彼女自身がそう語っていた。

だとしたら、自分のキャリアの終わらせ方すら自分で決められない芸能界って何だろう、という話になる。

柴 たしかに。音楽の世界には、たとえばハイスタのように、自身が事務所の社長をやっているようなインディペンデントなアーティストが沢山いますよね。

宇野 たとえばハイスタがサプライズでCDをリリースした時にはファンがすごく盛り上がったわけじゃない?

小沢健二にしてもそうだけど、ああいうやり方って、「この人たちはこれまで自分のやりたいようにやってきた」というファンとミュージシャンの長年の信頼関係があるから成り立つわけで。

そうじゃない人がマーケティング的なサプライズを仕掛けたところで、しらけるだけ。

やりたいことをやっているか

柴 あと、下の世代のアーティストから憧れの対象になるかどうかというのも大きいですよね。

もともとのファンは一緒に歳を重ねていくものだけれど、ハイスタや小沢健二のように下の世代のバンドが積極的にリスペクトを表明するアーティストは若いファンが増える。

そこも、音楽それ自体の評価はもちろんですけど、そのアーティスト自身が自分のやりたいことをどれだけやっているかがキーになる。

宇野 そう。そこにある程度の独立性がないと、アーティストは尊敬されない時代だと思います。たとえ事務所に所属していても、そこでアーティストが独立性を持って動いていないと憧れの対象にならない。

柴 たしかに。アーティスト自身が意思決定しているかどうか、という。SNSが普及したことで、よりそのことが見えやすくなった。

宇野 ドラマや映画とのタイアップとか、これまで以上に慎重にやるべき時代になったと思います。「やらされ感」が出ているものに、もう人は反応しないから。安易で付け焼き刃的なタイアップだったら、むしろやらないほうがマシだという。

柴 『君の名は。』と「前前前世」みたいに、制作側とアーティスト側ががっぷり組んで生み出していくようなものじゃないとプラスにはならないですよね。

そういうタイアップの論理だけじゃなく、古いしがらみや価値観で動いていることが透けて見えるようなエンタテインメントはどんどんそっぽを向かれるようになっていくと思います。

宇野 うん。2019年に年号が変わって、その翌年に東京五輪があって、その前後に日本でも時代の景色はがらっと変わる。そういうことがいよいよはっきりしてきた気がします。

(構成:柴那典)

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