味の素が「16時半退社」に成功したワケ? 勤務時間を短縮して起こったこととは......

味の素が「16時半退社」に成功したワケ? 勤務時間を短縮して起こったこととは......

  • J-CASTニュース
  • 更新日:2018/02/15

社員の退社時刻が16時30分という驚きの「働き方改革」を進めている、食品大手の味の素。2018年2月7日、東京・世田谷の昭和女子大学で開かれた「働き方改革フォーラム 味の素に聞きたい 『なぜ16時半退社になったのですか?』」で、改革を進めている味の素の高倉千春・グローバル人事部次長に、ジャーナリストの白河桃子さんと昭和女子大学の坂東眞理子理事長が迫った。

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なぜ『16時半退社』に成功したのか? 高倉千春・グローバル人事部次長が語る『味の素』流・働き方改革」(2018年2月12日付 「企業探究」)の第2弾。働き方改革の「成功のヒント」がここにある。

「ミスを恐れるな、6割よければGO! という精神」

坂東眞理子さん「率直に聞きます。日本企業には『滅私奉公』『24時間働け』『チームプレーを乱すな』という風潮が強いです。そんな中で、味の素が16時半退社を成功させた。早く退社するのは相当なプレッシャーだと思いますが、味の素にはチームプレー精神はないのですか?」

高倉千春さん「あります(笑)。社員全員が仲のよい会社ですから。確かに日本企業の強さはチームプレーです。『ITで世界を席巻するインドのリーダーと日本のリーダーが組めば世界最強になれる』とよく言われますね。
しかし、日本式の働き方では、世界の人材を獲得することが難しくなっています。たとえば、当社の本社では16時半に一斉に退社していますが、米国支社では『なぜ、一斉なのか。私は好きな時間に退社したい』と、むしろ一斉に同じことをするのを嫌います。それぞれの国民の多様性を認めないと、グローバル企業はやっていけない時代です」

白河桃子さん「会社の中で抵抗はなかったのですか」

高倉さん「ありました。特に営業部門では『得意先が働いているのに先に帰るわけにはいかない』と強く反対しました。社長の西井孝明が全国の得意先を1社ずつ説明して回りました」

白河さん「顧客をどれだけ巻き込むことができるか、トップの本気度が改革には重要ですね」

坂東さん「消費者主権主義というか、『おもてなし精神』というか、サービス業では顧客の無理難題に対応するためにも待機しなければならない風潮が強いです。それをどう変えたのですか」

高倉さん「(ミスを防ぐことを考えるより)6割よければGO! という精神です。外資系企業では、先頭を走った者勝ちです。『早く仕事をやった者は、間違いがあっても早く帰れる。問題は残っている者にチェンジできる』という考えですね。日本企業は脇が硬すぎるため、みんなが疲弊します。西井は、たとえば会議の書類でも『簡単でいい』とルール化しました」

坂東さん「念のために備えると、あちこちで労働時間が長くなる。それをなくしたわけですね」

「AIが導入される時代に、自分の働きがいは何なのか」

高倉さん「はい。それには社員一人ひとりが自律的に働き、しっかり責任を持つことが大事です。グローバル化が進む米国西海岸の企業では、メールがすごく短いし、『CC』が入っていない。責任が明確、かつシンプルです。当人同士だけでパッパと物事を決め仕事が早く終わります。
会議も立ってやるところが多く、砂時計を持ち込み、『3分以内で説明しろ』です。当社でも立ち会議を増やす一方、『8分の1会議』と称して、時間や資料など会議にかけるエネルギーを8分の1に減らしました」

白河さん「2017年度から仕事削減のルールを決め、1日32分間勤務時間を減らし、16時半退社を成功させたわけですが、仕事量の圧縮は具体的にはどうしたのですか」

高倉さん「まだ道半ばですが、仕事をつくり出すより、やめるほうが難しいです。自分を否定することになりますから。そこで労働組合と話し合い、いったん仕事をゼロベースにして、まず労働時間の短縮を決めました。形から入ると、おのずから重要な仕事にフォーカスして優先順位を付けざるを得なくなります。どの仕事を捨てるか真剣に考えるようになります」

坂東さん「ムダと思える仕事を一生懸命やるのが、真面目な人でエライと思われるのが日本企業の風土ですからね」

高倉さん「じつはムダな仕事をなくすより、何をやるかが大事です。たとえば、AIがどんどん導入される時代に、自分は何ができるのか、自分の生きがい、働きがいは何なのか、突き詰めて考える必要があります」

白河さん「女性の活用がいま言われていますが、そうなるとオジサンの再活用も重要になりますね(笑)。人材開発の専門家の中原淳・東京大学准教授は『これからは人生に3回大学に行く時代が来る』と言っています。青春時代、シニア時代、そして企業の中堅で働いている時の学び直しです。常に刺激を受けることで自分自身が活性化していくわけです。大和証券のように、社員の学び直しに補助する企業も増えてきました」

高倉さん「それと若い優秀な人材をどう確保するかが大事です。米国西海岸のバイオサイエンスの中小企業では、人材獲得合戦がスゴイです。社長たちが自分の評価やレーティング(格付け)をコメント付きで公開している。それがシェアされ、優秀な若者たちが企業を選択する判断材料になっています」

白河さん「日本の就活生のサイトでも、トップのメッセージや会社を評価するコメントが盛んになりましたね」

坂東さん「トップだけでなく、現場の管理職も部下にレーティングされたらいいと思います」

高倉さん「当社では社長の西井も部下から評価されます。ランダムに選んだ300人が評価書を提出して、西井も1枚1枚真剣に読んでいます」

「これからは共感力が高い女性のリーダーシップに期待」

白河さん「味の素の16時半退社が実験的で素晴らしいと思うのは、働く女性が気兼ねなく保育園に迎えに行けて、女性活躍におおいに役立っている点です。イノベーションが盛んな企業は女性社員の割合が高いという調査があります」

高倉さん「男女の比較でいうと、女性のほうが『共感力』が高いです。男性社員は自分の弱みを同僚に打ち明けませんが、女性同士は『ちょっと聞いて』と心を開き合う。AIが入ってくると、ますます『共感力』がリーダーシップの中で大事になってきます。当社でも女性に活躍に大いに期待しています」

フォーラム参加者のプロフィール

●高倉千春(味の素グローバル人事部次長)
1983年農林水産省入省。フルブライト留学生として米国ジョージタウン大学留学、MBAを取得。1993年からコンサルティング会社の組織改革担当、ファイザー、ノバルティスファーマーなど外資系企業の人事担当を歴任。2014年に味の素に入社、2017年から現職。

●坂東眞理子(昭和女子大学理事長)
1969年総理府(現内閣府)入省。内閣府広報室参事官を経て1995年埼玉県副知事、2001年内閣府男女共同参画局長。2004年昭和女子大学教授。主な著書に『女性の品格 装いから生き方まで』『働く女性が知っておくべきこと グローバル時代を生きる知恵』など。

●白河桃子(少子化ジャーナリスト、内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員)
慶応大学卒。住友商事、リーマンブラザースなどを経て現職に。2008年中央大学山田昌弘教授と『婚活時代』を上梓、婚活ブームの火付け役に。女性活躍支援について発信。主な著書に『後悔しない「産む」×「働く」』『御社の働き方、ここが間違ってます!』など。

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