日本の「平均点教育」について僕が思うこと|小山 進

日本の「平均点教育」について僕が思うこと|小山 進

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2017/09/19
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ここ数年は、小学校から高校まで全国のいろいろな学校から授業や講演を依頼されることが増えてきました。最終回では、僕が学校での講演を引き受ける理由と、教育に対して考えていることをお話します。

きっかけは「昆虫好き」

実は僕は昆虫が好きで、店の中にも昆虫のオブジェをたくさん置いています。一見お菓子作りには関係がなく、お客様から「なぜ?」と聞かれることも多いのですが、今の自分があるのは昆虫好きだったから。僕にとって”昆虫好き”は「好きなことを徹底的に深く」という僕のスタンスのルーツなんです。

幼稚園の頃から、図鑑を全て覚えては実際の虫と比べていました。図鑑にはこの木には何月から何月までいて、本州のどこどこに分布って書いてあるけど、僕が採集した場所は違うよな、とかそんなことをずっとやっていたんです。

僕は天才肌ではないですが、興味を持ったことに対しては、昆虫と同じレベルまで徹底的にやりたいと思っています。その興味が今はお菓子やチョコレートに向いているだけで、他のことでも同じです。

平均点教育でなく、得意を伸ばす教育を

学校などでお菓子教室や講演をさせていただく機会をいただく度に、背景にはさまざまな理由があるとは思いますが、先生方は子どもたちを表面的なことで評価しているのではと感じます。極端な言い方をしますが、例えば5段階9科目制で、「5が1つで他はオール1の子」と「オール3の子」がいたら、僕は前者のほうが伸びるのではないかと思うんです。

確かに先生にとっては、1科目だけ成績がよく、残りは全くできない子どもを扱うのは大変だと思います。集中力はないだろうし、興味のない科目の授業は聞いていないかもしれません。それでも、得意なことを思う存分させてあげたほうがいい。
僕は幼稚園から高校、大学でもお話をさせていただくことがありますが、目を輝かせて真剣に話を聞いてくれる子は、平均点が取れている子ではなく、いわゆる問題児として扱われていることが多いです。

でも、その子達は学校の授業に興味がないわけではなく、面白くないことには興味がないだけで、面白いと感じたことにはとても素直な反応をしてくれます。彼らも、周りの大人が「面白いかどうか」をしっかり見ている。感度が良いんですね。

だから、挨拶の声一つにしても彼らが今までで出会った大人たちの中でもひと際大きな声で挨拶をすると「ん?今までの人と違うぞ」という目で見て、前のめりになって話も聞いてくれます。そういうところは成績評価には表れない部分。そこに目を向けなければ、ついつい平均点が取れている生徒のほうが優れていると錯覚を起こしてしまうんです。

もし僕が学校の先生だったら、普段から言うことを聞いてくれる子のほうが扱いやすいし、話を聞いてほしいと思うでしょう。でも僕は実際には先生じゃない。話をさせていただくときに子どもたちに会うだけで、毎日ではないからこそ、その瞬間に先生が普段言えないことも言える。都合がいいだけに聞こえるかもしれませんが、実は、そういう瞬間のほうが効果がある。

僕らみたいな人間はどんどん活用していただければいいと思います。せっかく招いていただいて話をさせていただくんですから、こちらは限られた時間の中で何かの役に立とうと全力で挑みますよ。

目の前の問題に真剣に向き合う

以前、僕の息子が通っている大学で、経営学部の学生向けに講演をしました。彼らはいろんな経営論を勉強していて、僕も同じように勉強して経営者になったと思っていたようです。有名な経営理論を挙げられても僕は知らないので、とてもビックリされました(笑)。

僕はシンプルに目の前の問題に真剣に向き合って、解決してきただけ。確かに本屋に通って様々な本を読んできた時代もあったけれど、それは自分の行動を振り返る”答え合わせ”のようなもの。「自分はあのときこうやって解決してきたけど、この人の言っていることと同じだな」という感覚です。

キツい言い方になるかもしれませんが、”習ったこと”は所詮机上の話で、「こんな場面に出会ったら、こうやって解決しよう」と思っていてもそんな場面はなかなかやってきませんから。要は、今まで目の前にある問題にいかに真剣に向き合って、解決しようと一生懸命努力をしてきたかどうかが身になって将来に活かされていく、ということなんです。

僕が学生向けの講演の依頼をできる限りお引き受けしている理由は2つあります。1つは、自分の子どもの未来が今より生きにくい時代になるような気がし始めたから。もう1つは、店のスタッフの採用面接を14年間続け、彼らの行動や言動を見ていると、僕らの時代と全く違うことが分かってきたからです。彼らの行動を修復しようと思ったら、ある程度大人になってからでは間に合わないんですよ。できればもっと早い、幼稚園〜高校生くらいの段階までに伝えたいと考えています。

先生とは評価する基準が違う

数年前、近所の小学校から、創立20周年を記念して「生徒が紙粘土でケーキを作るイベント」の相談を受けました。審査するのかと尋ねたら、「審査なんてとんでもない。1位や順位を決めたりするのはダメなんです」と言われて驚きました。

社会に出たら競争の連続で、そこで悔しさや優しさなどいろんなことを勉強するのに、もったいないですよね。人というのは、ある時点で「人との競争」を卒業し、「誰にも負けないためにはこれぐらいやらないと!」と、自分自身との競争をするようになっていくものだと思います。

結局、審査はしませんでしたが、「圧倒的なお手本を創ってやろう」と僕自身も作品を提供しました。そのまま子どもたちの作品と一緒に展示していただいたのですが、「これ誰の作品?」と、その周りには徐々に子どもたちが集まり、ザワザワしていました。

また、僕がすごいと思った作品は、先生が褒める作品とは全然違うことに気づきました。先生が評価したものは、左右対称できっちり絵に描いたようなもの。僕が評価したのは、どこで着地したらいいのか自分のエネルギーの収めどころが分からないような力のある作品でした。それを5つほど選んで、作った子に会いたいと言ったら、その学校の問題児トップ5人でした。先生からは「何でこの子たちがいいんですか?」と聞かれましたが、僕から見たら、何でこの子たちがダメなのかと思うわけです。

先生たちは授業以外にもいろいろな業務で忙しく、だから時間のかかる子を「問題児」だと思ってしまう。でも、手がかかるぐらいの生徒のほうが、意外と面白いものを作るんですよ。

そもそも論になりますが、学校の先生になる人の仕組みを変えなければいけないと思っています。何かひとつ「これだけは絶対に負けない」と言えるほどに何かをやりきった人でなければならない、という条件を追加するんです。

先生自身にやりきった経験がないと、やりぬこうとしている子どもの気持ちを汲んで応援してあげることは難しく、夢中になって他のことが疎かになってしまっている子に、正論をかざして注意してしまうかもしれない。でも、その注意はおそらく聞いてもらえないでしょう。聞いてもらうためには、子どもから見た先生が”かっこいい大人”でないといけないんです。

昨年、リオ五輪の閉会式で日本が大絶賛されましたよね。日本の得意技を分かっているプロが集まって、誰も文句を言えないキャスティング、他の国には真似できない日本のアニメーションを交えて作ったから、あんなに絶賛されたんです。彼らのような優秀な才能を育てるには、身近な学校教育から変えていかなければならないと考えています。

夢を目標化し、1つずつクリアする

子どもたちは先生や親から「夢を持ちなさい」と言われます。それで何となく夢を持つんですが、大事なのはその後。

その夢を達成するには、いつまでに何をすれば良いのか。期限までに思った通りに進まなければ修正をしていくうちに、夢が目標に変わり、さらにいくつもの小さな目標に変わります。それを1つずつクリアしていく癖を、幼稚園や小学校の頃から身につけるような教育をすべきだと思うんです。

僕自身、「やりたいことは何ですか?」とよく聞かれますが、やらなければならないことだらけで、やりたいことにたどり着けていません。だから店のつくり方も「改善する」としか言っていない。でも僕は、やらなければならないことを、 ものすごく”楽しくやる”のが好きなんです。大切なのは、コンプレックスから逃げずに向き合うこと。店の改善も「店のコンプレックス」を直していく作業です。

そんなことを言っていたら、世の中のコンプレックス、直さなければならないところが見えてきました。もちろん全てではありませんが、もしかしたら僕が力になれるところがあるのではないかと思うようになったんです。

僕が日本の教育に貢献できるとしたら、これまで述べてきたお話を、子どもたちにはもちろん、先生や子どもに対して指導する立場の方々に対してもしていくことだと考えています。だから今後も講演活動や、外部でのお菓子教室を続けていくつもりです。

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