“砂漠のマラドーナ”が歩んだ流転の人生「あのゴールですべてが変わった。うんざりだ」

“砂漠のマラドーナ”が歩んだ流転の人生「あのゴールですべてが変わった。うんざりだ」

  • サッカーダイジェストWeb
  • 更新日:2017/09/15
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2年間のサッカー禁止令が解け、1998年W杯にエントリー。背番号10を担い、国民の期待は高かったが、スピードもパワーもすっかり衰え、見る陰もなかった。(C)REUTERS/AFLO

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23年前、このベルギー戦の鮮烈弾が、その後のオワイランの人生を劇的に変えてしまった。(C)Getty Images

少し、懐かしい人物に登場してもらおう。

世界の各大陸で、ロシア・ワールドカップ予選が佳境を迎えている。すでに予選を突破したのが日本、サウジアラビア、韓国、イラン、ブラジル、メキシコ、ベルギーで、開催国のロシアを含めた8チームの出場が確定。11月中旬の大陸間プレーオフで最後の1枠が決まり、全32代表が出揃う。

そんななか、FIFA(国際サッカー連盟)が公式サイトでかつてのワールドカップ・ヒーローをフィーチャーした。すでに来夏の本大会行きを決めているサウジアラビアとベルギーの両雄が戦った、1994年アメリカ大会のグループリーグ最終戦。初出場のサウジに1-0の大金星をもたらしたのが、“砂漠のマラドーナ”こと、サイード・アル・オワイランだ。

試合開始5分、自陣でボールを受けたオワイランはドリブルを開始。するするとマーカーを交わしてスピードを上げると、最後は名GKミシェル・プロドオムをも打ち破る。5人の守備者を抜き去って60メートルを独走した、大会史に残るセンセーショナル・ゴール。サウジはグループ2位に浮上、首位の“赤い悪魔”は3位に転落した(ともにラウンド・オブ16に進出)。「ワシントンの奇跡」と謳われた、世紀のアップセットだ。

8月19日で50歳になったサウジの英雄は、当時をこう振り返った。

「紛れもない私のベストゴールだった。すべてのサウジ国民に、すべてのアラブ人に捧げたものだ」

2002年にFIFAは、ファン投票によって定められた「ワールドカップ・ゴール・オブ・ザ・センチュリー」を発表。そのランキングにおいて、オワイランの独走弾は堂々6位に選ばれている(1位はディエゴ・マラドーナの5人抜き)。

さらにサイトでは、名脇役の当時の証言も紹介されている。ベルギー代表のCBで主将だった、ジョージ・グルンが「どんどんどんどん行かせてしまった」と悔やめば、指揮官のポール・バン・ヒムストは「普通の選手ならあそこまで長くは走れない。だから誰もタックルに行かなかったんだ」と守備陣を擁護。そして、「じゃなきゃあんなことにはならない。キーパーまで打ち破られるとは……異常だよ」と溜め息をついた。

だがオワイランにとっては、かならずしも栄華の始まりではなかったようだ。

「たしかにあのゴールは私にスポットライトを当て、世界中の誰もが私のことを知ってくれた。ただ、あのゴールによってすべてが変わった。重くのしかかったんだ。もう1000回近くあのゴールを観たんじゃないかな。はっきり言おう。もう、うんざりだとね」 世界を驚かせた一撃で、オワイランは一気にスターダムを駆け上がった。26歳にして王室からロールスロイスのご褒美をもらい、国民のアイコンとなったのだ。

だがそこが彼のサッカー人生のピークだった。欧州の強豪クラブからオファーが殺到したものの、当時のサウジは国外でのプレーを許可してくれなかった。やがて堕落した生活を送るようになり、イスラム教の戒律を破ってしまうのだ。なんと女性を伴った飲酒行為に及ぶなど、現行犯で逮捕されて服役。およそ2年近く、サッカーから切り離された。

1998年のフランス・ワールドカップのメンバーに食い込んで華々しく代表復帰を果たしたが、もはや全盛時とは比べ物にならないほどレベルが低下していた。2001年、英雄は34歳でスパイクを脱いだ。

流転のサッカー人生を送ったオワイラン。FIFA公式サイトはこんな一文で締めている。

「本人はもう、あのワンダーストライクは観たくないと言った。だが、サウジ国民にとってそれはあり得ない。いつまでも夢であり続けている。何度リプレイされようが、来夏のロシアで現代表チームがどんな金字塔を打ち立てようが、オワイランとのあのメモリーは、永遠に色褪せないのだ」

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