小室佳代さんは重罪を犯したのだろうか “正義”のバッシングは一線を越えた

小室佳代さんは重罪を犯したのだろうか “正義”のバッシングは一線を越えた

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  • 更新日:2021/10/13
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婚約内定の際の会見の眞子さまと小室圭さん(c)朝日新聞社

作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、眞子さまのお相手の小室圭さんの母親、佳代さんをめぐる世間の反応について。

【写真】あっ、カモを落としちゃった!大慌ての眞子さま*      *  *
小室佳代さんは、何か罪を犯したのだろうか。

眞子内親王の強い意思があるにもかかわらず、「国民への説明責任」を訴える声は相変わらずやまない。先日はジャーナリストだという男性が佳代さんを検察に告発したというニュースが流れた。遺族年金と傷病手当金を不正に受給したという詐欺罪にあたるというのである。

そもそも内親王の結婚が「問題」となったのは、佳代さんの元婚約者の男性が、佳代さんとの間に金銭トラブルがあることをマスコミに訴えたことから始まっている。週刊誌の報道などによれば、佳代さんの夫が死亡した後、男性は佳代さんと婚約する。もともと同じマンションに暮らしており、亡くなった夫とも親しかった。男性は圭さんの父親代わりとして、佳代さんに頼まれれば生活費を渡し、学費や留学に関わる費用も支払った。婚約期間2年の間に、男性が佳代さんに渡した金額は400万円強。経済的な負担を強く感じた男性は佳代さんに婚約破棄を申し出て、さらに400万円の返済を求めた。佳代さんはこれを「借金のつもりはない」と拒否したというのが「トラブル」の内容だ。

このことをもって内親王の婚約は暗礁に乗り上げることになった。そして佳代さんに対する過剰なマスコミの取材、度を越したバッシングが今に至るまで続いている。まるで、“金をたかるような人物”が皇室に近づこうとしたこと自体が大それた罪であるでもいうように、佳代さんは「嘲笑してもいい人」「たたき続けていい人」とされ、勤め先とのトラブルなども事細かく報じられ続けている。いったい、佳代さんが犯した罪とは何なのだろう。この国で人前で歩くのも困難なほどに人生をさらされるような罪を、彼女は犯したとでもいうのだろうか。

私は以前、男性3人の殺害の容疑で逮捕された女性の事件を追ったことがある。100日間にわたる裁判員裁判で彼女が世間を大きくにぎわしたのは、彼女がインターネットで知り合った男性たちからわずかな期間に1億円以上のお金を受け取っていたことだった。マッチングサイトで料理やピアノ好きをアピールし、“女性らしい”従順さと結婚への憧れを語る女性に、指示されるまま数十万円を振り込んだ男性は一人や二人じゃなかった。返金を要求する男性もいたが、彼女は決してATMの前でナイフを突きつけたわけでもない。「あなたは私にいくら出せますか? 今日中に40万必要なんです。将来を真剣に考えてますか?」とショートメールで迫られ、男性たちは暗示にかかったように送金してしまっていた。

佳代さんと元婚約者をこの事件にあてはめるつもりは毛頭もない。ただ佳代さんの「たたかれ方」を見ていると、あの事件がどうしても頭をよぎる。たたかれ方が似ているのだ。男と愛と金。これを利用した、または利用しているように見える女を絶対に許さないという男性たちの決意のような力。実際の裁判では、物的証拠のない事件そのものよりも、彼女の愛を裁くような男性検事や裁判官からの質問が相次いだ。「あなたは、本当にその男性を愛していたんですか?」「愛していたなら、なぜ彼の部屋を掃除しなかったのか?」「愛していたなら、なぜ他の男性とセックスしたのか?」……。正しくない女、清廉潔白でない女、過度のぜいたくを求める女、分相応に生きようとしない女、男に従順でない女、男の純情を利用した女……。そんな女は絶対に許すわけにはいかないのだ、という社会の空気は濃厚だった。

週刊現代の記事によると、佳代さんは、お金を返してほしいと言う元婚約者男性に対し、「借りてはいない」とする手紙を男性に書いている。そこで、あろうことか男性の名前を間違えていたという。2年間の婚約生活がどのようなものかは分からないが、男性は「お金だけ」を求められていると最終的に認めたのだろう。だから自ら去ったのだろうし、男性の手記からはそもそも恋愛関係があったかどうかも定かではない。佳代さんの目にはいつも息子しか映っていなかったかもしれない。でも、だとしても? それは第三者が正義の顔をしてたたくようなことなのだろうか。匿名の男性の一方的な語りだけで、一人の女性の人生をここまでおとしめてよいのか。

佳代さんを検察に告発したジャーナリストは、佳代さんが遺族年金を不正に受給したと考えているという。佳代さんと元婚約者は生計を一つにしていたわけではなく、住居も別だった。記事によると元婚約者の男性は「肉体関係はなかった」と言っており、状況から見れば事実婚状態ですらない。検察は告発を受け取ったが、受理するか、否かは不明という。また佳代さんは適応障害の診断で休職していたにもかかわらず、知人の店で働いていたことが、「傷病手当金の不正受給」だとも言われている。ずさんさを問われても仕方ないかもしれないが、佳代さんが置かれているのはそもそも普通の状況ではない。常軌を逸した報道のなか、それでは、どうやって生きればいいというのだろう。

ミソジニー=女性嫌悪の激しい社会は、女性に二つの役割を与える。

母のように全て許し受け入れる女と、男を性的に刺激する女。

そして母であるべき女が性的な振る舞いをしたときは、徹底的にたたく。性的に刺激する女が「被害を訴えた時」は全力でたたく。今回の眞子内親王の結婚をめぐる「騒ぎ」をみていると、この国のミソジニーがクッキリと輪郭をもって浮かび上がるのが分かる。佳代さんのたたかれ方を見ていると、男を利用するように見える女が許せない、女のくせに、母のくせに、という怒りが聞こえてくる。そしてまた皇室の女性は事実上、男性と結婚しなければ家を出られない、外から来る女性には男児を産むことが求められる性差別的制度であることが明確に浮かび上がった。どちらにしても、ミソジニー社会は、女性たちの本音など、女性たちの欲望など、求めていないのだ。

この男性ジャーナリストの告発に、「よくやった」というコメントがSNS上には数多くある。検察に捜査される可能性のある女を母親に持つ息子が内親王の夫になるのは許せない、という声のようだが、そもそもその声が含む強烈な女性嫌悪こそ、告発されるべきものなのではないか。佳代さんへの攻撃は、明らかに一線を越えた。この国に生きる女性が例外なく危険水域におかれているように感じる。

■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

北原みのり

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