中国当局の“バブル退治”で激震? 中国の不動産開発大手に経営破綻の危機

中国当局の“バブル退治”で激震? 中国の不動産開発大手に経営破綻の危機

  • AERA dot.
  • 更新日:2021/10/13
No image

恒大集団が建設中のマンション。ある日本企業には現地から「中国版リーマン・ショックになるかもしれない」との見方も届く(c)朝日新聞社

中国の不動産開発大手「恒大集団」に経営破綻の危機が忍び寄っている。世界的な金融危機の発生を恐れる声も。AERA 2021年10月18日号でその背景と見通しを取材した。

【写真】巨大で独特なフォルムをした恒大集団の本社ビルはこちら*  *  *

「恒大よ、カネを返せ!」

中国不動産開発大手の恒大集団に対し、各地で出資者が抗議の声を上げている。恒大は国内総生産(GDP)の2%にあたる約2兆元(約34兆円)もの負債を抱える。10月4日には香港市場での売買が停止された。世界でリスク回避の動きが広がり、日米などの株価が下落した。

1996年に広東省で創業した恒大は、旺盛な開発意欲で急成長した。不動産だけでなく、サッカークラブの運営や電気自動車の開発など多角化にも積極的で、借金を膨らませてきた。

■「三条紅線」で激震走る

激震が走ったのは昨年8月。中央銀行の中国人民銀行などが不動産業者の借金を規制する「三条紅線(三つのレッドライン)」を出した。習近平指導部が、不動産向けの金融リスク抑制に本格的に乗り出し、恒大は資金調達が難しくなった。

今年9月13日に恒大は「考えつくすべての手段で正常な経営を回復する」と声明を出した。恒大には約266億ドル(約3兆円)分の未償還社債があるとされるが、23日満期の米ドル建て社債は利払いをできず、30日以内に払われなければ債務不履行に。恒大が保証するドル建て債も10月3日が期限で、償還できず債務不履行になるリスクもある。破綻(はたん)が現実味を帯びる。

破綻した場合の世界への影響は楽観できない。米国のリーマン・ショックのような金融システムが揺らぐ「システミックリスク」も指摘される。ただ、中国の金融関係者は「絶対ないとは言えないが小さい」と見る。

中国当局は直接救済に消極的とされる。一方で、金融機関に不良債権を投げ売りすることを止め、融資を継続させて破綻処理を進められるなど、“強権”で軟着陸させる手段が豊富だ。すでに恒大傘下の盛京銀行の株を国有企業に買い取らせ、危機の波及防止に手を付けている。

中国の実体経済への波及も気がかりだ。恒大は未払いの工事代金など約9511億元、引き渡し前の物件の契約債務が約2157億元ある。さらに簿外の証券化商品も抱える。

「三条紅線」で危機が表面化した大手は恒大に限らない。危機が広がり、金融機関が融資に一層慎重になりそうだ。最近は不動産の販売が鈍り、長らくバブルが指摘されてきた中国の不動産市場は、一大転換期を迎えている。不動産業のGDPに対する貢献率は今年上半期の時点で7.5%ある。不動産バブルの抑制は成長のさらなる鈍化にもつながる。

■「リスク抑制」の標的

ただ、当局は経済への影響も覚悟して、不動産の規制に取りかかっている。中国共産党にとって何よりも重要なのは政権の安定で、それには経済の安定が欠かせないからだ。鈍りつつある成長に、金融によるテコの効果でカンフル剤を打つことは、バブルをさらに膨らませ、経済の脆弱性(ぜいじゃくせい)を高めてしまう。

習指導部は体制の動揺につながる金融のリスクをことごとく摘んできた。2017年には借金で不動産開発を拡大させた万達グループに資産を売却させ、20年には巨額の負債を抱えた海南航空の親会社を公的管理に。同年秋にはリスクの高い融資を手がけてきたアントグループへの締め付けも発生している。ビットコインも全面禁止した。

そうした中で登場したのが恒大を追い詰めた「三条紅線」だった。習指導部が3期目入りを決めるとみられる22年秋の党大会まで残り1年。経済の“リスク退治”は続きそうだが、やりすぎは逆に「角を矯めて牛を殺す」危うさをもはらむ。(朝日新聞経済部・福田直之)

※AERA 2021年10月18日号

福田直之

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加