北朝鮮と韓国の史上初の南北合作ドラマが大失敗に終わった理由

北朝鮮と韓国の史上初の南北合作ドラマが大失敗に終わった理由

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  • 更新日:2021/09/24
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映画などコンテンツ制作に熱心だった金正日総書記(写真:TASS/アフロ)

歴史を通して現在と未来の知恵を学ぶ──。それが、私たちが歴史を重視する理由だ。しかし、歴史の必要な部分のみを取捨選択して合理化する歴史歪曲の悪弊がある。韓国と北朝鮮は一つの歴史を受け継いできた民族だが、分断から半世紀以上が過ぎた今、歴史に対する見方は全く違っている。

純粋に歴史を見るのではなく、現実的な要求によって自分たちに必要な歴史だけを取捨選択し、都合のいい歴史観を形成する。このような例は「張吉山」と「死六臣」をめぐって行われた南北交流ドラマの制作過程からも窺える。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

2007年8月8日から11月1日まで、韓国のKBS 2TVで史上初の南北交流ドラマ「死六臣(サユクシン)」が放映された。韓国公共放送KBSが創立特集として意欲的に準備した南北交流ドラマだったが、ゴールデンタイムに平均2-3%の低調な視聴率を記録して幕を閉じた。南北政府レベルで行われた事業で、少なくない資金が投入されたドラマの結果は惨憺たるものだった。

普通のドラマなら早期終了するところだが、南北共同制作ドラマという象徴性から24話まですべて放映された。「死六臣」が失敗した理由は何なのか。

韓国側は、南北合作ドラマを企画した際、韓国の作家・黃晳暎(ファン・ソクヨン)の歴史小説『張吉山(チャン・ギルサン)』を提案した。張吉山は朝鮮時代後期、黄海道地域で活動した義賊である。

黃晳暎の『張吉山』は1974年、韓国日報に歴史大河小説として連載されたこともあって人気が高く、韓国側は北朝鮮の黄海道地域で活動した義賊・張吉山を題材に南北合作ドラマを作ることを提案した。

北朝鮮のドラマ制作の実務者も大方、賛成の立場だったが、上級機関である中央党宣伝扇動部と国家保衛部の介入で状況が変わった。「張吉山」ではなく、「死六臣」を題材とする南北合作ドラマの制作を逆提案したのだ。「死六臣」は朝鮮第6代王の端宗が叔父の世祖によって廃位された後、端宗を復位させるために命を捧げた6人の臣下の話である。

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南北合作からただの南北交流に転落

北朝鮮当局が南北合作ドラマを「張吉山」から「死六臣」に変更した理由は、民心が騒然とする中、黄海道地方の義賊・張吉山をドラマ化すると、ただでさえ生活が苦しい北朝鮮住民が現状を想起するというものだった。むしろ酷い拷問を受けながらも、端宗の復位のために命を捧げた6人の忠臣たちの話こそ、北朝鮮に必要だとして、北朝鮮当局者が南北合作ドラマを「張吉山」から「死六臣」に変えさせたのだ。

北朝鮮では、歴史主義的原則と現代性の要求を結合することを重視する。歴史上存在した史実でも、今の現実的な要求に合致しなければ、選択してはならないという意味だ。南北合作ドラマの制作を切望していた韓国のKBSは、自分らが提案した「張吉山」を取り下げ、北朝鮮の要求を受け入れて「死六臣」を作るほかなかった。

このように題材の選択から陳腐になった南北合作ドラマだが、制作の協議に入ると、北朝鮮の一方通行の独走体制で進行した。

南北が共同で制作するドラマは南北双方のテレビで放送される。北朝鮮側は、韓国の俳優が出演するドラマは北朝鮮テレビでは放送できないため、韓国は企画段階までの参加とし、残りは自分たちが判断すると要求した。KBSは制作費を出して朝鮮中央テレビという外注業者に下請けさせる形となり、「死六臣」は南北合作ドラマから南北交流ドラマに転落した。

韓国が制作費用を出し、北朝鮮が制作した南北交流ドラマ「死六臣」は放送開始後、南北双方からそっぽを向かれた。北朝鮮の視聴者は南北交流ドラマということでかなり期待したが、陳腐極まりない死六臣に失望した。韓国はゴールデンタイムに2-3%の最悪な視聴率を記録した。

このドラマでは、時代劇専門俳優として北朝鮮でも無名に近い俳優を抜擢したこともあり、初めて目にする北朝鮮の俳優が新鮮だという評価も韓国国内ではあった。また、従来の英雄中心の時代劇と違って、平凡な民衆の人生を細かく表現していたなど肯定的な見方もあったが、無名ゆえのぎこちなさと異質さ、単純なストーリーに対する不満が多かった。

あまりに単純な北朝鮮の人物設定に韓国人も唖然

韓国の視聴者が最も多く指摘したのは吹き替えだった。韓国のドラマは俳優のセリフをそのまま流す同時録音で制作されるが、北朝鮮のドラマはあとでセリフを入れる吹き替えが一般的だ。「死六臣」は、一部は同時録音されたが、大部分は吹き替えで、吹き替えドラマに不慣れな韓国の視聴者は不自然さを拭えなかった。

また、北朝鮮の作家たちが設定した単純な人物構成とキャラクターの設定も問題だった。あまりにも明確な北朝鮮劇作の善悪は、韓国の視聴者が小学生の時に読んだ古典小説を読み直すような錯覚を覚えるほどだった。

主人公のソン・サンムンは善行だけを選ぶ正義の使徒として登場する。悪役のハン・ミョンフェは、これ以上はないほど否定的な姿だけを見せている。典型的で単純な善悪構造に興味を感じるには、韓国視聴者の目線は高すぎるレベルに達していたのだ。

韓国の視聴者は、せめて脚本だけでも南北の作家が共同で作業して劇をより面白くしていたら、あるいは南北を代表する有名俳優が一緒に出演していたら、相応の人気を集めることができただろうと考えた。しかしそれは、北朝鮮を全く知らない韓国人の見解だ。

北朝鮮政府が最も恐れたのは、南北のドラマ作家や俳優、スタッフが共同で作業する時の韓国の発展だ。

韓国は、技術や装備はもちろん、映画やドラマを作るコンセプトなどが既に世界的レベルに達している。もし北朝鮮の俳優や制作スタッフが韓国との共同作業で、このことを知り、ドラマや映画の制作で、知らず知らずのうちにコンセプトを真似することになると、北朝鮮当局にとって取り返しがつかないことになる。だから北朝鮮は、一歩も譲歩せずに「死六臣」の制作一切を強く主張し、韓国KBSには相応の制作費用の負担のみを要求したわけだ。

結果的に、南北分断以来、初めて作られた南北交流ドラマ「死六臣」は、ドラマの内容と同様、悲劇的に幕を閉じた。南北文化交流協力という象徴性を掲げながら文化産業の実利を失った韓国と、歴史の史実を扱えず、ドラマをドラマらしく作れない北朝鮮の硬直性が惨憺たる結果をもたらしたのだ。

郭 文完

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