ポルシェにひかれて死亡した小4男児、重なった“2つの不運”

ポルシェにひかれて死亡した小4男児、重なった“2つの不運”

  • 週刊女性PRIME
  • 更新日:2021/01/14
No image

事故があった交差点。道幅は広く見通しもいいが、夜間は暗くなる

正月で静まりかえった東京・世田谷区の閑静なエリアが、凄惨な事故現場となった。

【写真】事故があった交差点と、現場に供えられた花やお菓子

「パトカーや救急車がたくさん駆けつけていて、男の子が倒れていた。警察が“あきらめないで! 頑張って!”と声をかけていて、お母さんか弟かの泣き叫ぶ声が……」(目撃者)

弟が乗るベビーカーを押していたときの惨事

1月3日、日曜日の夜10時ごろ、世田谷区上用賀の環状8号線交差点の横断歩道上で、交通事故が発生。近くに住む小学4年の三村光太くん(享年9)が、弟(2)が乗るベビーカーを押しているところを左折してきた乗用車にはねられてしまったのだ。

ベビーカーの弟と歩道にいた母親(38)ともうひとりの弟(8)にケガはなかった。

「車はポルシェで、男の子に衝突後、車の前に倒れていた男の子を確認せずに、車を路肩に寄せようと車を動かし、さらにひいてしまったそうです」(現場近くの住民)

ポルシェを運転していたのは、神奈川県藤沢市で広告業を営む和三(わさん)恵太容疑者(45)。自動車運転処罰法違反(過失傷害)で逮捕され、

「歩行者はいないと思って、そのまま左折してしまった」

と供述。少量の飲酒をしていたようだが、検査ではアルコールは検出されなかったという。

活発で明るくて、誰にでも好かれる少年だったという光太くん。約12時間後の翌4日の午前10時32分に搬送先の病院で息を引き取り、和三容疑者の容疑は、過失致死に切り替えられた。

「日中、この辺りは見通しがいいけれど、夜は暗くてね。特にお正月は道路沿いの自動車販売会社などの明かりもなかったので、余計に暗い。

5年ほど前には右折した車にお年寄りがぶつかる死亡事故が起きました。その前までは歩道橋があったんだけど、撤去されてからは危なくなったね」(前出・住民)

コロナで病院がいっぱいだったことが影響

今回の事故で、光太くんの父親が「病院をたらい回しされた」「着くまでに40分かかった」と証言する報道も。週刊女性が取材した関係者も、

「救急車が最初に事故現場から車で5分ほどの国立病院に行こうとしたところ、断られたと。そのあと、いくつの病院に断られたのかはわからないですが、最終的には世田谷区ではなくて、品川区の大学病院までわざわざ30分かけて行ったようです。

光太くんが亡くなったあと、警察は“コロナで病院がいっぱいだった影響が大きかった”と遅れた原因を話していたそうです」

日本の病院までの救急搬送にかかる平均は約40分。東京都はワースト1位の約50分というデータもあり、遅すぎたとは言えない。

しかし、世田谷区内には15の救急医療機関があるので、少しでも早く運ばれていれば、光太くんの命は助かった可能性も。

今回のような救急搬送時の仕組みを東京消防庁に聞くと──。

「東京都の救急の際は、大手町と多摩にある災害救急情報センターという司令室が、救急車にどの病院に行くべきか指示を出します。

その場合、もちろん近場ということもありますが、受け入れ可能かどうかを優先する場合が多いので、その区だけではなく、近隣の地域も対象となります」

正月とコロナ、不運すぎた状況

救急医療に詳しい労働者健康安全機構理事長で、昭和大学名誉教授の有賀徹さんは今回、2つの不運があったと説明する。

「ひとつは正月で医療機関の人手が最も少ない時期だったということ。もうひとつは、新型コロナウイルスの影響もあったと思います。

ICU(集中治療室)では通常は1人のナースが2床を診ますが、コロナの重症者の場合は1人のナースが1床を診ることになっていて、人手がかかります。となると、人員がひっ迫して、他の治療を妨げてしまいます」

特に年末から東京で猛威をふるっていて、1月3日だけで816人の新たな感染者を出していた。世田谷から少し離れているが、港区の都立広尾病院でも救急患者の受け入れを制限していることも報じられた。

浮き彫りになった救急・地域医療の問題

搬送要請を断ったとされる国立病院にも何らかの事情があったのだろうか。週刊女性の取材に、病院は次のように回答した。

「個人情報に関わることですので、個別案件にはお答えすることができません。ただし、コロナを理由でお断りすることはございません」

世田谷区のほかの14の救急医療機関にも尋ねてみると──。

「救急からの要請を受けたかどうかは、個人情報なので答えられない」が5病院。明確に「要請はなかった」が3病院。

「夜間対応はしていない・外科がない・救急医療に対応していないので、要請はなかったと思う」が4病院。「回答なし」が2病院だった。

「光太くんの両親は、コロナとか医療体制というよりも、“犯人が2度ひいたことが憎い”と言っていました」

と関係者が話すように、容疑者を憎む気持ちは遺族として当然のことだろう。しかし、どんな不測の事態にも備え、普段から医療体制を充実させる必要がある。

前出の有賀さんもこう指摘する。

「重傷者の搬送は1分遅れるごとに、1%死亡率が高くなると言われているので、少しでも早めていくことは大事です。しかし、医療費や税金がかかる問題なので、地域や国民の了解も必要だと思います」

医療崩壊も叫ばれる状況になり、改めて浮き彫りになった救急・地域医療の問題。 光太くんの命を無駄にしないためにも、真剣に向き合っていかなくてはならない。

週刊女性PRIME

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加