セキュア 代表取締役社長 谷口辰成の挑戦 ―― スマートIoT市場との融合を見込む監視カメラ/入退室管理市場の将来性

セキュア 代表取締役社長 谷口辰成の挑戦 ―― スマートIoT市場との融合を見込む監視カメラ/入退室管理市場の将来性

  • ZUU online
  • 更新日:2022/05/14

経済アナリスト 馬渕磨理子さんが成長企業の事業戦略の狙いやユニークな商品/サービス開発の裏側に迫ります。今回、登場するのは監視カメラや入退室管理システムなどのセキュリティソリューション事業を主力とするセキュアの代表取締役社長 谷口辰成さん。同社の技術は実は、これからのわたしたちの暮らしに欠かせないスマートIoTの重要要素なんです。

画像認識×カメラがスマートIoT市場に秘める大きな可能性

馬渕磨理子(以下、馬渕) セキュアでは監視カメラや入退室管理のシステムなど、ハードとソフト両面でセキュリティのサービスを提供されていますよね。ただ、セキュリティと一口に言ってもその領域は幅広く、市場にもたくさんのプレイヤーがいると思います。まず、セキュリティ市場の現在について、谷口さんはどのように捉えていますか?

谷口辰成(以下、谷口) 一昔前までセキュリティについては、「外部からの攻撃に対し、生命や財産をどう守るか」という観点での議論が主流でした。しかし今ではそのような常識にやや変化が訪れてきています。

馬渕 どういうことでしょう?

谷口 現在では、「外部からの脅威」よりも、むしろ、「内部からの脅威」への対策を考える必要があるのです。昨今、社員による不正行為や不祥事、バイトテロなどがニュースに取り上げられることが増えてきました。「内部からの脅威」で被る企業の経済的なダメージは、「外部からの脅威」の代表である盗難などよりも、よほど大きいのです。

馬渕 なるほど。外からだけでなく、内のセキュリティも大事になっている。

谷口 脅威が多様化したこともあり、セキュリティ業界では従来のビジネスの基本だった機器販売から、セキュリティソリューション提案へと業務シフトが進んでいます。たとえばこの1、2年では従業員の健康管理も企業における広い意味でのセキュリティ対策の重要課題となりました。

馬渕 新型コロナウイルスの影響ですね。

谷口 コロナの時代では顔認証での入退室管理に加えて、体温のチェックも重要です。当社で提供している入退室管理システムではそういうチェックもできる。あとは、たとえば繁忙期ごと、あるいは時間帯ごとのオフィスの混雑度もモニタリングできます。

馬渕 入退室管理って入り口だけじゃなく、オフィス内の状況も測れるんですね!

谷口 そうなんです。ただオフィスの鍵を開け締めするだけじゃなく、入退室管理のログデータをうまく使えばオフィス自体をデジタル化できます。監視カメラ/入退室管理システムなどのセキュリティ市場は、いずれスマートIoT市場に融合されていくはずで、市場としては非常に大きなポテンシャルがあります。

馬渕 なるほど……。高付加価値カメラをセキュリティ以外の領域まで広げているのはそういう狙いですか?

谷口 そのとおりです。当社では「空間をデータ化し、知性を与えてスマートにしていく」ことを企業ビジョンとして掲げています。画像認識やログ解析のできる高付加価値カメラを店舗に導入すれば、無人店舗が実現できる。もしくはビル全体のシステムと連携すれば、効果的なエネルギーコントロールができる「スマートビル」になる。これを街全体に広げると「スマートシティ」の形成にも使えます。

馬渕 画像認識とカメラをかけ合わせて生まれる価値には大きな可能性がありますね。

個人のプライバシーを担保するテクノロジー

馬渕 ただ、監視カメラ画像の利活用にはプライバシーや個人情報の問題がありますよね。セキュアは経済産業省、総務省が策定した「カメラ画像利活用ガイドブックver.3.0」の作成に有識者として参加されていますが、行政とはどのような議論を進めているのでしょうか。

谷口 行政とはカメラ画像の推進と併せて、2022年4月に改正された個人情報保護法の遵守を考えつつ、プライバシーにどう配慮していくべきかという議論をしてきました。プライバシー問題の有識者には法律の専門家が多く、それゆえ企業の運用者側がドキュメントを読み解くのはなかなか難しい。プライバシー保護のために必要な配慮をユースケースで示し、事業者サイドが使える内容にするお手伝いをしています。

馬渕 カメラ画像の利活用と個人のプライバシーを両立することについて、現状の課題はどんな点ですか?

谷口 たとえば、匿名の画像だとしても、データを貯め続けることで個人が特定できてしまう可能性があります。特に画像認識技術をマーケティングに活用する場合に個人のプライバシーへの配慮は大きな問題です。ただし、プライバシーに配慮したテクノロジーも日々“進化”しています。自動で人物画像にマスク処理がされたり、顔を見るためには管理者でもIDとパスワードを入れないといけなかったり。当社の知見を社会の発展に活かせるところかと思います。

無人店舗も実証済み セキュアが「勝ち続けられる」ポジショニング

馬渕 では、ここからはセキュアの成長戦略をうかがっていきましょう。まず、セキュアが開発した無人店舗「AI STORE LAB」について教えてください。

谷口 監視カメラと入退室管理システムを応用して独自開発した無人店舗です。2020年7月から新宿住友ビルで実証実験を行っています。(実証実験の)第1弾として「@cosme(アットコスメ)」(アイスタイル)とコラボをしました。これまでおよそ100社が視察に来ました。

馬渕 100社も……! それはすごいですね。

谷口 「無人店舗」と言いましたが、人とAIを共存させた接客も実現できます。たとえば服を買う時なんかでも、ふらっと見たいときには店員さんに声かけてほしくないですよね。でも肝心なところでは店員さんに接客してほしい場合もあったりします。

馬渕 確かにありますね!

谷口 そういった人の行動をAIが分析し、最適なタイミングで接客を行う、あるいは来店者の属性に合わせて、その人の興味を引きそうなコンテンツをサイネージで出したりもできます。AIを使った店舗のあり方にはいろんな形態が考えられるんです。

馬渕 無人化と言うとコンビニのイメージがありましたが、色々な店舗で利用可能なのですね。

谷口 それに、店舗以外にも活用の道はあります。たとえばコロナ禍で増えた都心部の空きスペースを無人売り場に活用したり、O2O(Online to Offline)の店舗に活用できるかもしれません。

馬渕 可能性が広がっていますね……! この無人店舗事業がセキュアの次の柱になるイメージでしょうか。

谷口 現在事業化を進めており、近い将来発表する予定です。スマートIoT化が広がっていくと、セキュリティの担保や適切なオペレーションの実施の上で、画像認識や監視カメラ技術の利用が不可欠になってきます。われわれとしては、非常に大きな成長が期待できる事業だと考えています。

馬渕 無人店舗事業に加え、御社の重点戦略の1つに積極的な海外展開がありますね。

谷口 現在、東南アジアや中東の大都市ではインフラ整備が進んでいて、セキュリティも間違いなく必要になってきます。カメラを設置すれば防犯目的に使うことだけでなく、渋滞や安全対策のための分析にも活用できます。そこを新しいマーケットとして狙っていきます。すでに東南アジアの一部でシステム導入の実績もあります。現地のパートナーとの連携を深めてデバイスとソフトの両面でのサービス提供を増やしていきたいと考えています。

馬渕 海外マーケットとなると、頭に入れておかなければならないのがGAFAM(Alphabet、Amazon、Meta、Apple、Microsoft)などのテックジャイアントです。これらの企業がセキュリティ市場に参入する可能性をどう考えていますか?

谷口 当然、シリコンバレーの企業もプレイヤーとして参入してくるでしょう。実はこれまで色々な国を訪れ、海外のプレイヤーたちとIoTの未来について議論をしてきました。彼らがどういうスタンスで我々のマーケットを見ているのか、どのように参入しようとしているのかを知りたかったのです。

馬渕 どんなことが見えてきましたか。

谷口 セキュアが取るべきポジショニングです。「アルゴリズムや要素技術が強みのプラットフォーマー側」か、それとも、「ユーザーにサービスを届けるラストワンマイル側」のポジションか。結果的に我々は後者、すなわちユーザーと接点が近いラストワンマイル側に決めました。

馬渕 なるほど! それはなぜですか?

谷口 IoTではソフトとハードの両面が大事です。しかも、監視カメラなどのセキュリティサービスはハードを買ってソフトを入れればいい、という単純な話ではありません。クライアントの要望を切り分け、課題とその解決への道筋を丁寧に設計し、適切なハードとソフトをプラグインする必要があるのです。

馬渕 だからラストワンマイル側が鍵だということですね。

谷口 はい。そこを押さえていれば競争優位性につながると考えています。また、GAFAMはソフトウェアが大きな強みですが、彼らのハードはソフトほど強くはありません。両方の技術が掛け合わされる領域では日本企業も優位性があります。

ソフトウェアのエンジニアは異なるサービス間のデータ連携において主にAPI(Application Programming Interface)を想定して会話をするのですが、ハードウェアのエンジニアは「接点信号」といった言い方で機器同士の連携をイメージします。つまり、ソフトウェア業界とハードウェア業界には共通言語がほとんどなく、多くのエンジニアがコミュニケーションに苦労しているのです。しかし、セキュアでは、ソフトウェアとハードウェアのエンジニアがセキュリティという1つの領域で仕事をしています。事業を1つのシステムと見ると、コストパフォーマンスを最大化できる状態です。これが私たちの大きな強みで、この状態を追求し続けることで、将来に渡って勝ち続けられるビジネスモデルを生み出し続けられると考えています。

馬渕 非常に説得力があり、ワクワクする未来ですね。では最後に、IRについてのお考えをお聞かせください。

谷口 監視カメラや入退室管理の市場はBtoBのビジネスで、触れたことがある人は少ない業界だと思います。よりセキュアのビジネスについて理解いただけるよう、多くの個人投資家の方へのセミナーを積極的に行っています。将来の事業の魅力を伝える活動をしているので、ぜひ興味を持っていただけたら嬉しいです。

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