安易な気持ちで始める「ウォーキング」が、あなたの老後を破壊する

安易な気持ちで始める「ウォーキング」が、あなたの老後を破壊する

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/01/13
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寝たきりが嫌ならダイエット、体力作り、ストレス発散……。その目的は様々だが、とにかく日本人はウォーキングが大好きだ。しかし、その効果を盲信してしまうと、あなたの生活に重大な影を落とすかもしれない。

軽い膝の痛みが大事に

肩からタオルをかけ、鮮やかな色のウェアに身を包み颯爽と歩く人たちの姿は、今や街のありふれた光景だ。汗ばんだ肌をタオルで拭うときの彼らの表情は充実感に満ち満ちている。

近年、日本のウォーキング人口は増え続けている。'16年度には、4500万人を超え、過去20年で2倍になった。

特に若年層に比べ、年齢層が高いほどウォーキング人口は多く、週1回以上のウォーキングが習慣になっている60歳以上の高齢者は約半数に上る。

「歩けば健康」――そう信じて疑わない人は多い。1年半前に勤めていた不動産会社を定年退職して以来、ウォーキングを日課にしていた清水豊さん(65歳・仮名)もそんな一人だった。

「会社勤めをしていた頃は、外回りの営業で、日中は革靴の底が擦り減るほど歩き回っていましたし、身体はよく動かしていたほうだと思います。

ただ、仕事を辞めた途端に、家の中で横になってテレビを見る時間が増えた。腹周りも気になり始め、このままではいけないと思い、1年前から、一人でも気軽にできる運動をしたい、とウォーキングを始めたんです」

始めてから2ヵ月ほどで、お腹の肉は落ち、「歩く」ことの効果を実感。清水さんは、歩けば歩くほど健康体になる、そう思い込んでウォーキングを続けたという。ところが……。

「始めてから半年ぐらい経った頃でしょうか、膝に軽い痛みが出始めました。それでも、早朝のウォーキングはもう生活のルーティーンになっていましたし、健康のためと信じていたのでやめる気はなかった。

また、妻から無駄な贅肉が落ちたことを褒められたのも嬉しかった。今の体型を維持して、若々しさを保ちたいという気持ちもあったかもしれません」(清水さん)

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清水さんはサポーターを付けるなどして、ダマしダマしウォーキングを続けた。しかし、痛みが出始めてから3ヵ月後、清水さんは、ついにガマンができなくなって病院で診察を受けた。

そこで深刻な「変形性膝関節症」を発症していることがわかったのだ。すでにちょっとした距離でも歩くのが億劫になるほど、膝の損傷は重いものになっており、以来、清水さんは、一日の大半を自宅のベッドやソファーの上で過ごさざるをえなくなったという。

これが「正しい」歩き方

健康になりたいという一心で始めた運動のせいで歩けなくなる。まことに皮肉な話だが、そんな本末転倒とも言えるケースは決して珍しくない。

ウォーキング関連の多くの著書を持つ東京都健康長寿医療センター研究所・運動科学研究室長の青柳幸利氏が警鐘を鳴らす。

「仕事をリタイアした方が、運動不足を気にして、『この程度の運動なら俺にもできるだろう』と、ウォーキングを始めるケースは極めて多い。しかし、ここには大きな落とし穴があります。

『間違った歩き方』を続けると、健康効果がないどころか、寝たきりになってしまうことさえあります」

ウォーキングをする人は清水さんのように膝を悪くする人が多いが、その原因は「歩く姿勢」にある。

例えば「猫背」。年齢を重ねるにつれて、大腿筋や腹筋、背筋などの筋力が衰え、前傾姿勢になってしまう人が増える。知らず知らずのうちにこうした猫背状態で、歩き続けてしまう人は多い。

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「猫背だと、身体全体の重心が前にいき、自然と腰が引けてしまう。腰が引けると、必ず、膝が曲がります。

正しいウォーキングには足が着地するときに膝が真っ直ぐになっていること、また、かかとから着地してつまさきで蹴って歩くことが必要。しかし、猫背のままだと、どうしても膝が曲がってしまい、負担がかかる」(前出の青柳氏)

最初は大した痛みではないと思っても、長いスパンでダメージが蓄積してしまうと、清水さんのように歩けなくなってしまうことも多い。青柳氏が続ける。

「誤った歩き方を続けていると、膝の軟骨が大きく擦り減ってしまい、骨と骨が直接ぶつかるようになる。その結果、激痛が生じます。若い頃なら、しばらく休養すれば、軟骨も回復しますが、年を取ってからではそうもいきません。

こうなってしまえば、膝の痛みをダマしダマしして、こらえて過ごすか、人工関節を入れるかのどちらかです」

人工関節には当然、手術とリハビリが伴う。また、置換が成功しても、脱臼や感染症のリスクが上がる。さらに、使用を続けていれば、人工関節が摩耗してしまい、再手術を繰り返すことになる場合もある。そう易々と手術を決断すべきではない。

ではそうしたリスクを避けるために、正しい姿勢で、身体に負担をかけない歩き方をするにはどうすれば良いのか。長尾クリニック院長の長尾和宏氏が語る。

「猫背は、重い頭を支えるために、肩や顎、首を前に突き出し、膝を曲げることによってなんとかバランスをとっている状態です。こうした姿勢になってしまうのは、お腹に力が入っていないためです。

正しい姿勢を保つには、まずはお腹を意識して、力を入れること。そして、胸の上側の筋肉が軽く緊張する程度に肩甲骨を引く。そして、最後に骨盤を少しだけ、前傾させる。そうすれば背筋がピシッと伸びた理想的な姿勢になるでしょう。

正しい姿勢ができない人は、歩くときもバランスを崩して転倒しがち。だから、何より姿勢が大切なのです」

正しい姿勢のほかに、ウォーキングは適切な速度・量を意識することも大切だ。年齢が違えば、身体機能も違ってくる。それを踏まえた上で、自分にピッタリの「歩行速度」で歩かなければならない。

そこで目安となるものが、『運動強度』と呼ばれるものだ。前出の青柳氏が語る。

「理想なのはこの運動強度が『中強度』であること。『なんとか会話はできる程度』の早歩きがその人にとっての『中強度』です。

競歩のように腕を目一杯振るようだと早すぎますし、鼻歌が歌えるような速度だと遅すぎて意味がない」

歩きすぎて免疫力低下

時間があればできるだけ歩く、そんな人も少なくないが、歩く量に関しては、「過ぎたるは及ばざるが如し」だ。

「とにかく運動しなければという意識から歩き過ぎている日本人は多い。そもそも、日常生活を送っているだけで、十分に歩くことはできる。

毎日の買い物で最寄り駅まで歩けばそれだけで、良い運動になります。また、掃除や洗濯などの家事でも身体を動かしていますよね。

こうした運動を全く考慮せずに、ウォーキングにばかり時間を割くと運動過多になってしまう。その結果、過度の疲労から免疫力の低下を引き起こし、ウイルスや細菌などの抗原を撃退できずに、病気にかかりやすくなってしまいます」(前出の青柳氏)

また腰痛を改善するため、ウォーキングをする人も多いが、これは逆効果。望クリニック院長の住田憲是氏はこう解説する。

「歩くことで血行が良くなり、一時的に腰回りの筋肉が緩み、痛みが和らぎます。

しかし、根本の原因が治っていないため、すぐに緩んだ筋肉に異常な収縮が起き、痛みや痺れが生じる。歩くことで、炎症が起きたり、かえって悪化してしまうケースが多い」

都会でウォーキングをしている人にはさらなる注意が必要と話すのは、亀戸佐藤のり子クリニック院長の佐藤のり子氏だ。

「私が診察する患者さんで多いのは、街をウォーキングしているときに、自動車や自転車のほか、子供、散歩している犬などの急な飛び出しに加え、キャリーバッグに引っ掛けられて怪我をする人ですね。

年齢を重ねるにつれて、当然反射神経も鈍くなりますので、ウォーキングの最中に咄嗟の反応ができず、転んでしまって、脚の骨を折ったり、地面に変に手をついて手首を骨折したりするケースが非常に多い」

ウォーキングと同様、軽い運動と思っていると、痛い目に遭うのがゴルフだ。

緑あふれる自然のなかでゆったり歩きながらラウンドするのは適度な運動になるし、なんとも気持ちがいい。だが、スイング時の身体への負荷を甘く見てはいけない。

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ゴルフもやめなさい

前出の住田氏はスイングする際の「中腰」の姿勢こそが危ないと語る。

「人間の骨盤は体の中央にある逆三角形の仙骨とその左右にある腸骨、主に3つの骨から構成されています。仙腸関節は仙骨と腸骨を結ぶ関節で、左右に一つずつあります。

ゴルフの中腰姿勢で負担がかかるのがこの仙腸関節です。

中腰だと仙腸関節が緩くなり、これをルーズパックというのですが、非常に不安定な状態になる。

ルーズパックの関節がぐらぐらした状態でスイングをして、腰をグッと捻じると、関節の動きに障害が起き、ひどくなると炎症を起こします。

こうなってしまえば、もうゴルフどころか、まともに立っていられないほどで、日常生活にも支障をきたすようになります」

聖マリアンナ医科大学スポーツ生理学ゴルフ医科学研究所代表・吉原紳氏もゴルフのスイングの危険性をこう話す。

「スイングは、息を止めて打つ無酸素運動なので、心拍数と血圧が同時に上がる。
特にティーショットを打つときは周りの注目も集まっているので、緊張してしまって、心拍数が上がりがちです。

接待ゴルフなんかだと余計に気を遣ってしまいますよね、それも良くありません。

またパッティングで集中し過ぎてしまって、血圧が高まり、その瞬間に脳梗塞などを引き起こすケースもあります。

急な心拍数の増加や血圧の上昇は、脳卒中や急性心不全などの虚血性心疾患を起こします。

特に50代以上の人は発症のリスクが高く、後遺症で歩けなくなったり、最悪の場合、発作を起こしたあと、そのまま、ゴルフ場で亡くなってしまう人もいます」

さらに起伏のあるコースには危険な「落とし穴」がいっぱいだ。

安倍首相が来日したトランプ米大統領とゴルフをプレーした際にバンカーで派手に転んでしまった様子が報じられた。大事にはいたらなかったようだが、打ちどころが悪ければ、骨折する危険も大いにある。

他にも、OBギリギリの急斜面で力んでスイングした拍子にひっくり返ってしまえば目も当てられない。

高齢になってもどうしてもゴルフを楽しみたい人は入念なウォーミングアップが欠かせない。その上、前日はしっかりと睡眠を取り、お酒も抜くなど、万全の体調で行う必要がある。

気軽にできる運動は「リスク」を甘く見がちだ。しかし、その気軽さゆえに重大な結果を招くこともあるのだ。

「週刊現代」2018年1月6日・13日合併号より

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