傍聴人も期待した「爆女」裁判の意外な展開 <北尾トロの裁判傍聴記>

傍聴人も期待した「爆女」裁判の意外な展開 <北尾トロの裁判傍聴記>

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  • 更新日:2017/10/13
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イラスト:北尾トロ

裁判傍聴――。

的はずれな片思い、幸せをつかむ手法が行き過ぎた風俗嬢、ドロドロ不倫の後遺症……。「事実は小説より奇なり」ということわざ通り、どんな小説やテレビ番組よりもドラマチックで破天荒な展開を見られるのが、裁判だ。裁判傍聴記の第一人者・北尾トロさんが恋愛裁判だけを集めて発売した『恋の法廷式』(朝日文庫)でも、さまざまな「事件」を垣間見ることができる。今回はその中から、「爆女」たちの優良風俗店にまつわる裁判を抜粋でお届けする。

*  *  *

開廷表を見ていたら、被告人の氏名が3人分書かれた売春防止法違反の事件が目についた。被告人名はすべて女性。罪を認め、争いがないので、まとめて審理するのか。法廷に行くと、開廷30分前から人の列。顔なじみの傍聴マニアからは「北尾さんも好きだね」と声をかけられた。

妙に盛り上がっている理由は法廷に入るとすぐわかった。すでに着席していた被告人たちの存在感が半端じゃない……わかりにくい言い方だな。3人合わせて300キロ超(推定)の太った女たちなのだ。これはいかなる事件なのか。

検察官が読み上げた起訴状によれば、3人は派遣型風俗店(デリヘル)「爆乳・爆尻○○○」の経営者(A)、店長(B)、電話番(C)。同店に所属する女性を不特定多数の男性に紹介し、売春させた疑いで捕まったらしい。3人は同種の風俗店で働いた経験があり、Bは店長兼売春婦でもあったという。客の評判も良く、売り上げの詳細は述べられなかったが、堅実な利益を上げていたようだ。

被告人席でうつむく3人は、保釈中の身。黒ずくめの服装も手伝い地味な佇まいで、売春をしそうにも、それが似合いそうにも思えない……というのはぼくの印象にすぎない。

人の好みはさまざまで、極端に太った女性を好む男が世の中にはそれなりにいるのだ。先日も、太ったAV女優を売春クラブに紹介した罪で、制作会社社員が捕まった事件があり、風俗産業の一形態として、一定の需要があると考えられる。

どこが魅力なのか。爆乳・爆尻のキャッチフレーズに答えが隠されていると思う。胸が大きかったり、お尻がバーンとしてセクシーな女性を表すとき、よく使われる漢字は「巨」である。巨乳や巨尻は単にパーツが立派というだけでなく、ウエストのくびれがあることが前提となった言葉。「巨」の看板を掲げるためにはメリハリのあるボディが必須となる。

しかし「爆」は違う。「巨」の上を行くスタイルの良さを想像してはならない。「爆」は大迫力の胸や尻を示しつつ、くびれなしを保証しているのだ。全身が豊満であってこその「爆」である。くびれなど何の値打ちもない世界だ。

しかし、いくら仕事でも、女性ならスリム体形への憧れは捨てきれないはず。太り過ぎは健康をも脅かす。本人に「爆女」で稼いでいくプロ意識が薄ければ、店側が叱咤激励して体形をキープさせることも必要だろう。この店はそれができていた。経営者はかなりのやり手と考えられるが、それには理由がある。

発端はAが働いていた「爆」専門のデリヘルが営業不振で、存続のため経営者が代わりそうになったことだったという。新経営者が暴力団系だと知ったAは、店の権利を200万円で買い取ることを決意する。経営などまったくの素人だったが、放っておけば自分を含め店で働く女性たちが搾取される可能性があったからだ。

やるからには闇商売はやめようと、平成22年に当局に届け出。税理士もつけ、税金もちゃんと納めることにした。とはいえ売春はやらせるわけだが、その点については店のある地域では売春行為が常態化していたのであまり気にならなかったそうで、罪悪感のなさに驚かされる。

ともあれ、Aは経営者として邁進。所属女性の一人だったBを店長に雇って管理や面接を一任するなど、業務態勢を整えた。採用希望者への条件は、本番OKであること。客のニーズに応えるためそこだけは譲らなかったが、それ以外は女性本位の営業方針を貫いていく。とりわけ、所属女性の労働条件には気を使った。

【仕事の確保】

売り上げの半分近くを広告宣伝費に充て、客足を確保する。

【収入の確保】

女性の取り分を多くして生活の安定を図り、長く働ける職場にする。

【居心地の確保】

所属女性たちの悩みを聞き、そりの合わない者の間に入って仲良くさせるなど、スタッフが全力で面倒を見る。

これらの経営努力が実を結び、業界屈指の優良店になったのだ。ちなみにBの収入は、店長の給料23万円+売春婦としての売り上げ。電話受付のみ担当していたCの給料は30万円と悪くない数字である。

所属女性たちにとっても、収入が確保できて人間関係のトラブルがない居場所は貴重だ。全員「爆」だけに、おいそれと他の風俗店に流れることもない。長く働きたいから客への対応も良くなり、それがリピーター客を増やし、好循環が生まれる。

この店では収入の約半分を広告宣伝費に費やしていた。家賃を支払い、残りの大半を女性のギャラに充てていたら、経営者は搾取どころじゃない。カラダを売らざるを得ない状況に追い込まれた「爆」にはそれぞれ事情がある。姉御肌のAは、いま以上に堕ちていくことだけはないよう、BやCの力を借りて女性たちを守ろうとしていた。

「うちで稼ぎ、貯金して、いずれ自立していけるよう応援できれば。そういう気持ちで経営していました」

もちろん管理売春は悪いことだが、一刀両断する気になれないのは、彼女たちから素朴な人の良さが伝わってくるからだ。

管理売春は法に反するが、自ら経営者になることで働く女たちを暴力団組織から守ろうとした被告人Aの動機と、好待遇で自立を支援しようとする方針からは、さまざまな事情で働く風俗嬢たちへの愛が感じられた。

Aの店は優良店だった。その人柄と良心的なシステムのおかげで粒ぞろいの「爆女」が集まってしまい、自立どころか仕事が長続きしてしまうのは皮肉な話だが、所属する女たちはその気があれば貯蓄もでき、借金を返したり独立を図ったりすることも可能だっただろう。法律の範囲内でのサービスを徹底させていたら、より大きな事業になったかもしれない。

*  *  *

被告人質問でもいっさい言い訳せず、お互いに罪をなすりつけあることのなかったA、B、C。さらには、それぞれの関係者が証言台に立ち、愛ある証言を連発したことで、傍聴人たちの空気は変わっていく。

裁判を傍聴していた北尾さんも最後に、「この裁判、土俵際だったのは被告人だけじゃなかった。証人たちにとっても人生の勝負どころで、ここで本音を伝えずどうするとう場面が作り上げられた。しかもAからB、さらにCに証人へと、連鎖反応を起こしたようにテンションが高まる流れは作ろうとしてできるものじゃなく、下ネタへの期待でやってきた傍聴人たちを静かにさせる力を持っていた」と、感想を述べている。果たして判決は……。

かように不思議な力をもった裁判傍聴の世界。ぜひ覗いてみてほしい。

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