デザインが主役となる時代へ。DeNA、BCGを経て「坪田朋」が示す、次世代へのロールモデル

デザインが主役となる時代へ。DeNA、BCGを経て「坪田朋」が示す、次世代へのロールモデル

  • careerhack
  • 更新日:2017/11/14
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企業の経営陣に「デザイナー」が名を連ねる時代へ

「僕は、デザイナーを夢のある仕事にしたいんです。グラフィックをつくる人というイメージを覆したい」

こう語ってくれたのが、「デザイン × 経営」の第一線で、キャリアを開拓する坪田朋さん。ライブドア、DeNAのデザイン戦略室立ち上げ、外資系コンサル会社ボストン・コンサルティング・グループのBCG Digital Venturesを経て、育児動画メディア『Babily』を展開するOnedotへ。

就いた役職は「CCO(チーフクリエイティブオフィサー)」だ。日本企業では馴染みの薄い役職だが、経営陣の一人として、クリエイティブの側面から課題を解決。海外だとビジネスの中枢を担う重要ポジションとして認知される。

彼が発信するのは「よりデザインが重要な時代になりつつある」ということ。そして、デザイナーが活躍できるフィールドの広がりだ。

「ビジネスは “ デザイン思考 ” そのものです。デザイナーは事業をつくっていけるし、活躍の場はもっと広がっていくはず」

彼の未来に懸ける想いには、若手デザイナーへの熱いエールが込められていた。

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2017年9月に、坪田朋さんがCCOとして参画したOnedot。大手消費財メーカーであるユニ・チャームとBCG Digital Venturesが共同出資して誕生したスタートアップだ。同社が運営する育児動画メディア『Babily』は、中国で200万ユーザーを獲得している。

「デザイナー × 経営」のキャリアを切り拓きたい

ーまだまだ日本には経営にコミットできるデザイナーは多くありません。坪田さんがCCOに就任された背景などから教えてください。

もともと「事業を立ち上げる立場になりたい」という気持ちが強くありました。「デザインは課題解決」と言われていますが、事業も同じ。事業をつくるとなると、売上や予算が必要だし、突き詰めていくと決裁権も……という話になるわけです。

そして、デザイナーが経営に携わることで、ユーザーファーストの考えを浸透させられる。ユーザー目線をメンバー全員に憑依された状態をつくることが、デザイナーが経営に関わる意義だと考えています。

たとえば、Onedotはデザイン思考の手法を使って事業を立ち上げましたが、現在も定期的にユーザーインタビューを実施しています。新しく入ってきたメンバーも、デザイン思考のプロセスを踏んでユーザー理解を体感してもらうことが狙いです。過去インタビューのドキュメントを見返したところで、差は埋まりませんからね。

日本の企業だとユーザー調査が機能していないケースも多いですよね。若手が調査して、ドキュメントにまとめて、意思決定者に報告する…これではユーザーファーストな意思決定はできません。直接ユーザーから話を聞いて、その家に訪問して空気を感じてきた人と、そうでない人とでは、思考にギャップが生まれてしまいます。

サービスに深く関わって、製品の意思決定をする立場なら、偉い人でも、若手でも、分け隔てなく、全員が足を運ぶべきだと思います。当然調査の時間はとられますが、チームの認識がすり合うので意思決定材料を集める時間も短縮できますし、メンバーが自走しても成果物の方向性がズレません。

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ー 事業としてデザイナーの視点がより重要な時代になりそうです。同時にデザイナー側の視点からも伺うと…経営に近づくと責任も大きなものになりますよね。経営にコミットすることに後ろ向きな人もいると思います。

本能的なお話をすると、自分が正しいと思うモノをつくりたい。つくれるというのがあると思います。自分の理想を追いかけるためにも、裁量が与えられる職種・役職に就こう、と。こういった選択ができるようにしていきたい。

Appleのジョナサン・アイブがCDOに就任したときのインタビューで「このポジションになってようやく理想が実現できるよう立場になった」「これからが楽しみだ」みたいなことを語っているんですよね。私も同じような捉え方としています。

僕が、ジョイントベンチャーを選んだ理由

ー 坪田さんご自身のキャリアもユニークだと感じました。ライブドア、DeNA、BCG Digital Venturesときてスタートアップへ。同時に、前職でも理想的な仕事はできるような気もします。あえて転職した理由とは?

悩みましたが、自分が立ち上げに関わったサービスの成果を出す所まで責任を持ちたいので、Onedotに移りました。デザイン思考やオープンイノベーションの手法が語られる機会は多くなってきましたが、その手法でサービスをつくって成功した話ってあまり聞かないじゃないですか。

「デザイン × 経営」のキャリアを切り拓きたいという話にもつながりますが、若手のロールモデルとして、日本でデザインを認めてもらうためにはわかりやすい実績が必要だと思うんです。だから、僕自身も成果を出すことにチャレンジをしています。理屈じゃなくて、結果で語れたほうがカッコイイですからね(笑)。

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前職のBCG Digital Venturesが快く送り出してくれたのは本当に感謝しています。同時に、”デジタル商社”とも呼ばれ、大企業 × デジタルイノベーションを日本で推進しようとしている同社にとって、ジョイントベンチャー第1号のOnedotの成功は援護射撃になると思います。だから、なんとしてでも成果は残したいですね。

ー Onedotはどういう経緯で生まれたんですか?

日本と中国で出生率を高めていくという背景があったものの、特に中国では一人っ子政策の撤廃でベビー・マタニティ市場の盛り上がりに合わせて育児情報ニーズが増えています。デジタルネイティブ世代にリーチしきれていない課題もあり、デジタル領域での事業解決のための方法が『Babily』であり、ユニ・チャームとBCG Digital Venturesのジョイントベンチャーでした。

ー ユニ・チャームといえば大手企業ですが、ジョイントベンチャーの魅力とは?

意外に思われるかもしれませんが、かなりのスピード感をもって進められることですね。大企業が培ってきた「コネクション」「ノウハウ」「インフラ」といった支援を受けることでスピード感をもって進められます。

『Babily』でいえば、支援がないと中国ファーストは不可能でしたし、営業面でもかなりサポートしてもらいました。 また、育児領域のコンテンツは専門家や大学教授の力を借りてコンテンツをつくっていく性質があるんですね。育児事業で活躍しているスペシャリストな方々に支援いただく際の信頼度という点でもかなり強みになったと思います。

ゼロスタートアップでやってたら、めちゃめちゃ大変だったでしょうね…。

あと、私自身の経験が大手企業のコンテンツとテック系企業がコラボレーションしたビジネスに可能性を感じているというのもあります。

たとえば、以前DeNAと任天堂の協業案件に関わって感じたことですが、日本のコンテンツ産業とデジタルが融合する事で、まだまだイノベーションの余地があると考えています。

マリオの生みの親である宮本茂さんがAppleの製品発表会にに登壇したときのことは、今でも鮮明に覚えてるくらい感動しました。先輩方がつくり上げてきた日本のコンテンツをデジタルに再構築することで、まだまだ世界にインパクトを残せるんじゃないかと考えています。

デザイナーを、夢のある職業に

ー 大手企業の資本があるとはいえスタートアップ。さらに中国市場という未開の地。CCOのロールモデルもまだまだ少ない。坪田さんが道なき道を進む原動力とは?

僕は、デザイナーをもっと夢のある仕事にしたい。新しい道を切り拓いて、経営にコミットするというポジションがあることを自ら実践して一歩でも業界を前進させたい。

経営という領域に足を踏み入れない場合、デザイナーのキャリアは職能チームの長で終わります。それだと今の市場評価で年収は800万〜1000万円くらいが天井です。インターネット黎明期を経験している僕ら世代がそのポジションに落ち着いてしまったら、若手はポジションも給与も天井が見えてしまい夢がなさすぎる。IT業界のデザイナーになりたい人がいなくなってしまったら、悲しすぎますからね。

結局、負の感情の反動なんですよ。過去にはリソースも予算もないのに、短納期で仕上げるように言われて、悔しい想いをたくさん経験したし、理想を実現できなかった自分のアウトプットを見るたびに死にたくなる。そして、同じように憂き目に遭ってきたデザイナーもたくさん見てきました。

ただ、愚痴をこぼしても何も変わらない。世の中を変えるためには、デザインを理解して意思決定できる人が経営者に関わり、意思決定できる立場になるしかないんです。ただ、理想を語ってるだけだとカッコ悪いので、僕は実績を残して後進に背中を見せていきたいと思っています。

僕自身も経営や新たに兼業にチャレンジしている途中ですが「デザイナー=グラフィックをつくる人」というイメージを覆すことで、若手のキャリアの道を切り拓いていきたい。そして、同じ気持ちでチャレンジする若手や仲間と一緒に業界を盛り上げたいと思います。

「デザイナー仲間としか話さない」ではダメ

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ー 最後に、デザイナーが経営感覚を身につけ、CCOなど上位のポジションを目指すために大切なことって何でしょう?

経営者をはじめとする数字感覚を持った人とコミュニケーションをとることだと思います。

デザイナーって同じ職種だけでかたまりがちだし、デザイン領域以外と距離をとる人も多い。僕自身も、若いときやライブドア時代は、経営者や事業部長と話すことは苦手だったし、議論してもビジネス感覚がないからキャッチボールにもならなかった(笑)。

でも、DeNAで新規事業をはじめようとしたとき、「エンジニアやBizDevの力を借りないとサービスをつくるチームがつくれない」ということに気づきました。デザイナー仲間と話しているだけじゃダメなんだ、と。DeNAのBizDevには結構揉まれましたね(笑)。PLなど数字の勉強をしたのも、その時期でした。

UIデザインスキルはヒューマンインターフェースガイドラインが公開されたり、知識が体系化されてきたことで、そこまで大きな差が開かない状況になったと思うんです。新市場を生み出す一部の天才を除いて。その後の人生で自分のつくりたい製品をデザインするためには、デザインともうひとつ武器を持った方がいい。

僕の場合は「事業をつくるデザイナー」でした。未開の領域だったとしても、勇気を出してチャレンジして、一度壁を乗り越えることができれば、新しい世界が広がると思います。

ー デザイナーが「経営」に近づくことで、今後、より革新的なサービスが生まれる。そういった可能性を感じると共に、若手デザイナーにとっても重要なお話、参考になるお話が伺えたと思います。本日はありがとうございました!

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