【寄稿】北朝鮮問題、中国が当てにならない訳

【寄稿】北朝鮮問題、中国が当てにならない訳

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/12/07
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――筆者のダニエル・ナイデス氏は海兵隊員の経験を持つサンフランシスコのライター

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ドナルド・トランプ米大統領は先週、米全土が射程に入るミサイルを北朝鮮が発射したことについて、「北朝鮮の挑発的な行動について中国の習近平国家主席と話したばかりだ(中略)事態は対処される!」とツイートした。

マール・ア・ラーゴで初めて習氏と会談して以来、トランプ氏は習氏が朝鮮半島危機の解決に協力することに期待してきた。米国の現在の朝鮮半島政策は中国の協力に左右されているようだ。この辺で北朝鮮と中国の関係を大局的にとらえておきたい。

議論は相反する2つの説が支配的だ。まず、中国は金正恩体制を気に入っているわけではなく、平和と安定を脅かす脅威だとみている点では他国と同じだという説。ただ、中国政府はがんじがらめになっている。北朝鮮への影響力は世界が想像するほどではないし、中朝国境で人道上の悲劇を生むことを懸念している。端的に言えば、中国は世界と同じ懸念を抱いており、何か手を打ちたいのはやまやまだが、両手を縛られている状態だ。

これと対立するのが、中国にとって、あまりに強く北朝鮮に迫ることは本当の国益にならないという説だ。北朝鮮は、中朝国境と在韓米軍の間で有用な緩衝材の役割を果たしているのだから。レアルポリティーク(現実政治)で考えれば、北朝鮮が不安定で何をするかわからないことへの懸念は本物だが、鴨緑江の向こうに敵がいるよりは、やや常軌を逸した同盟国がいてくれたほうがずっとましだ。

中国の動きに対する解釈の大半は概ねこの2つの説の間のどこかに入る。ただし第3の説もある。中国が朝鮮半島の緊張を直接あおっていなくても、エスカレートするに任せている可能性があるという説だ。20年以上に及ぶ米国主導の外交、制裁、脅しのいずれをもってしても北朝鮮の核・ミサイル計画は止められず、本当に犠牲になったのは米国の信頼性だけだった。世界唯一の超大国は、貧困にあえぐ小国を誘惑または強要して従わせることができなかった。米国に寄り添うべきか、あるいは中国の影響下に入るべきかを検討しているアジア諸国が、この力不足に気づいたことは間違いない。

北朝鮮を使って米国の力や影響力の限界を鮮明にすることは、アジア・太平洋地域における米国の重要性を損ねようとする中国のより広い戦略に合致しそうだ。米国とその同盟国による一貫した抗議にもかかわらず、中国は東シナ海と南シナ海で人工島群を拡大し、軍事拠点化を進めている。中国は、領有権を巡るフィリピンとの係争で国際裁判所が下した法的拘束力のある判断を無視することができる。このことは、米国主導の国際システムが有効でも重要でもないとのメッセージを増幅することになる。

中国が積極的に北朝鮮を操っているという意味ではない。そうする必要はない。単に、北朝鮮が核政策を進め、科学者を教育することを容認し、体制をぎりぎり存続させるだけの外交・経済的支援を提供することによって、中国は危機を悪化に任せている。この危機で、歴代米政権の無能ぶりがますます露呈するはめになり、米国への敬意は後退する一方だ。

この論理を疑う向きは緊迫が高まった時の「骨太な」対応に言及するかもしれない。それは、当然とも言える米爆撃機の低空飛行だ。だが米国の飛行機は来ては去り、北朝鮮はペースを速めながら武器の計画を続けている。米海軍の船舶が中国の人工島近くを通過する「航行の自由」作戦とまさに同様、そうした飛行が大きな影響を与えないのは、力を誇示しているからというより、米国という存在が通過することを示しているからだ。一方、中国はそこに存在し続ける。

中国に仲介を求めるトランプ氏の手法はこのメッセージを強めることになるだけでなく、中国が自国への認識に影響を及ぼすことにとどまらず、アジアで米国の存在を後退させようと試みる機会にもなる。中国は米韓合同軍事演習と北朝鮮の核開発を同時に凍結する計画を提案した。実現すれば、米政府は韓国との軍事同盟の重要な柱を奪われ、数十年にわたるアジアでの取り組みが色あせる。一方の北朝鮮が現在持つ核能力は無傷のままだ。

米国の対応は同盟国を弱らせるのではなく強化するものでなくてはならない。中国の積極的な領有権主張の拡大と高まる北朝鮮の脅威を受けて、米国の同盟国は領有する島の武装化など自国の軍事力拡大に向けて独自の手段を講じ始めている。米国は先頭に立ってこうした措置を調整・加速し、東は日本から南はベトナムやタイに至るまでの国々を団結させ、中国と北朝鮮を取り囲む輪を築くべきだ。

北朝鮮のミサイルの脅威を受けた対応としてはっきり示されているものの、そうしたアプローチは明らかに中国の構想と衝突し、中国政府当局者が最も懸念する包囲網という結果につながる。中国が依存する西アジア発の諸航路を脅かすなど、見えない経済的リスクももたらす。しかも、近くを通過するだけの船と違い、包囲網という状況には終わりはない。中国政府へのメッセージは明らかだ。北朝鮮の敵意を抑えよ。さもないと、自分の首を絞めることになる。

北朝鮮は核武装しており、これが変わる気配はない。変化が必要なのは米国の問題の受け止め方である。中国が北朝鮮の好戦的な態度を許しているのは、アジアにおける米国の影響力を弱め、最後にはそれを消し去って、自国の覇権を確立する戦略の一環だ。これに対処するため、米政府は不安定化をあおる中国政府に報いることを避け、中国の動機を覆さなくてはならない。北朝鮮を抑えることに失敗すれば、アジアでの米国の役割は縮小どころか拡大するであろうことを極めて明確に示すことだ。

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