
"弁護人の質問に答える青葉真司被告。視力についての質問で、弁護人が自身の手を見せて「指を何本上げているかわかりますか」と聞く場面もあった=7日、京都地裁、絵・岩崎絵里"
36人が死亡した2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人など五つの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第7回公判は19日午前、京都地裁で被告人質問が続いた。検察側が小説の執筆に取り組んだ経緯を尋ね、青葉被告は「仕事もしていないし、小説ができあがれば仕事の問題も解決すると思った」と述べた。
青葉被告は16年に京アニ大賞に2作品を応募したが、落選している。このうち、長編作品の執筆には09年から約7年かけたと説明。この間、コンビニ強盗事件で服役しており、「ノートを1冊買ってアイデアを書きためていた」と述べた。小説を書くきっかけとなった京アニのアニメ作品「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」については「こんなにすごいアニメがあるんだと痛感した」と語った。
これまでの公判で、青葉被告は京アニ大賞に落選後、自身の作品を京アニに盗用されたと考えるようになり、「小説とも京アニとも関わりたくない」と思ったという。18年にテレビで偶然京アニ作品を視聴し、再び盗用されたと考えたとした。
事件1カ月前は自宅のある埼玉県で無差別殺傷を計画。事件を起こせば「パクりは害だ、という結末になったと伝えられるのではないか」と述べた。派遣の仕事を転々とした自身と、08年に東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件の加藤智大(ともひろ)・元死刑囚との境遇を重ね、「他人事とは思えなかった」と語った。
事件3日前に京都に向かい、その後現場の第1スタジオの下見やホームセンターでガソリン携行缶などを購入。直前には「(事件は)好ましいことではない」と犯行にためらいがあったと説明したが、自身の半生を振り返り、「どうしても許せなかったのが、京都アニメーション」と考え、犯行に及んだとした。
検察側は、京アニに自身の小説のアイデアを盗用されたと思い込むなどし、事件を起こしたと主張。一方の弁護側は「闇の人物と京アニが一体となって、自分に嫌がらせをしていると混乱した」と反論し、心神喪失で無罪と主張している。(光墨祥吾)