アップルが「コーダ」の次に推す「チャチャ・リアル・スムース」 製作陣が振り返るマジカルな時間

アップルが「コーダ」の次に推す「チャチャ・リアル・スムース」 製作陣が振り返るマジカルな時間

  • 映画.com
  • 更新日:2022/06/23
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「チャ・チャ・リアル・スムース」(Apple TV+で配信中) 画像提供 Apple TV+

2021年のサンダンス映画祭で観客賞を含む4冠、第94回アカデミー賞では作品賞を含む3部門を制覇した「コーダ あいのうた」。同作を世に送り出したアップルが次にプッシュするのは、22年度のサンダンス映画祭で観客賞を獲得した「チャチャ・リアル・スムース」(Apple TV+で6月17日から配信中)だ。同作の監督・脚本を務めたのは、主演も兼任したクーパー・レイフ。共演者のダコタ・ジョンソン、バネッサ・ブルクハルトとともに、インタビューに応じてくれた。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

主人公は、大学を卒業したばかりの22歳のアンドリュー(レイフ)。進むべき道が定まらず、ニュージャージーにある実家で暮らしている。ある日、ユダヤ教の成人式パーティーで盛り上げ役として働くことに。そんな彼が若い母親ドミノ(ジョンソン)と、自閉症の娘ローラ(ブルクハルト)とパーティー会場で出会い、風変わりな友情を深めていく。

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本作のアイデアは、どのように生まれたのだろう。レイフにたずねてみた。

レイフ「最初は、ドミノというキャラクターがいるだけでした。自閉症を抱える子どもによって、自分の人生の段階を永遠に定義される母親(=ドミノ)。そこから、僕自身も理解することができる世間知らずな22歳の若者アンドリューを創造し、そんな彼がドミノと関係を持つという設定になったんだ。そして、そんな2人が出会う場が必要でした。そこからバル・ミツバー(ユダヤ法を守る宗教的・社会的な責任を持った成人男性のこと)のパーティーという設定が出来上がり、アンドリューがその場の盛り上げ役になったんだ」

ジョンソンは出演だけではなく、プロデューサーという立場でも参加することに。「2年前、Teatime Picturesというプロダクション・カンパニーを立ち上げたんです。本作は、そのプロダクションで企画から開発した作品のひとつ。だから、誰かが書いた脚本をもとに製作したわけではなく、脚本から開発し、私の会社を通して製作したものです」と情熱を傾けたプロジェクトであることを明かす。さらに、本作の脚本は「自分の魂に触れ、とても共感の持てるもの」と語っており、プロデューサーとして「真実味のある脚本を守ること」を重視していたそうだ。

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ブルクハルトは、本作で映画初出演。ローラと同じく、実際に自閉症を抱えている。ローラというキャラクターについて、どれほど共感を抱くことができたのだろう。

ブルクハルト「(映画初出演の場では)とてもポジティブな体験ができ、心地よい環境でした。私はローラに似ている部分がたくさんあると思います。特に、自閉症の人が持つ特徴や傾向。人と打ち解けるのに時間がかかること、人のことをすごく気にかけることに共感します。ただし、私とローラでは、表現の仕方が違うと思っています。それにローラよりは、社会的に成熟しているとも思っているんです」

見どころのひとつとなるのは、劇中で使用されている楽曲。レイフは脚本執筆時、いくつかの楽曲を念頭にしていたのだろうか。

「実は、最後の楽曲に関しては、念頭に入れて書いていました。『最後の曲が上手くいけば、映画自体も上手くいく』という信念があるからです。当初は、ブルーノ・マーズの楽曲『24k Magic』を選択していましたが、ミュージック・スーパーバイザーのロブ・ローリーからは『おそらく使うことは難しいだろう』と言われました。ロブとは相談を重ねながら、予算に余裕があるかどうかを確かめていきました。最初に誰もが知っているような有名な曲を提示し、観客には『名曲ばかりを使用するのか?』と思わせておく。その後に、人々があまり知らない楽曲、安い予算で使用できる曲を使うことになりました。もっとも、リップス・インクの楽曲『ファンキータウン』は誰もが知っている曲ですが、ブルーノ・マーズの楽曲よりは安かった……ということもありました。つまり、全ての楽曲を脚本には記していませんでした」

紆余曲折あり、最後の楽曲として使用されたのは、ルーペ・フィアスコの「The Show Goes On」。物語は、この楽曲で特別なエンディングを迎えることになる。

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企画から完成まで多くの時間を割いた「チャチャ・リアル・スムース」。最も記憶に残っていることは「バネッサに初めて会った時のこと」(ジョンソン)、「僕もそう思う」(レイフ)とのこと。その言葉を受けて、ブルクハルトが「私が2人に会ったのは珈琲店。自閉症の私は、怖くて車を降りたくなかったんです。2人に会うことも怖かった。でも、最後には会うことができて、自分も落ち着きを取り戻せました。ダコタは、あの時犬を連れてきていましたよね」と振り返ると、レイフは「土砂降りの雨が降っていたことを覚えているよ」と付け加えてくれた。

劇中では、ブルクハルトの演技によって“マジカルな時間”が生まれている。ジョンソンは、彼女とどのような関係性を構築したのだろう。「バネッサに関して最も感謝しているのは、彼女には嘘偽りがないということ。彼女は“リアルな会話をしたい”と思っていて、世間話、出鱈目な会話には興味を持っていないんです。だから、彼女が物事についてどう思っているのかを知りたかったですし、セットでは彼女の観点がありがたく思えました。彼女と話すことが好きでしたし、今でもそう思っています。我々と全てのことを共にしながら、『あなたは周囲から望まれて、この映画の中にいる』ということを感じて欲しかったんです」と語る。そんな温かい目線が、人への想いとして、本作を包み込んでいるような感覚を受ける。

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最後に、レイフに作品に込めたメッセージを聞いてみた。

「脚本家としては『自閉症について学んでほしい』と思って、作ったつもりはないんです。核にあるのは、人と人の関係は、どれだけ特別で、親密で、永遠のものになり得るのかということ。そして、人の絆についても語りたかったんです。それはローラという人物を書き始めてから、より具体的になっていきました。そして、バネッサ自身の変化も見ることができました。ローラとバネッサが、どう融合していったのかも伝えたかったんです」

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