開催なら日本選手が断然有利、「不公平五輪」に国民が狂喜する

開催なら日本選手が断然有利、「不公平五輪」に国民が狂喜する

  • JBpress
  • 更新日:2021/06/11
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6月8日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の理事会に出席した橋本聖子会長と武藤敏郎事務局長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

開幕まで50日を切った。日本国民から猛烈な拒否反応を示されている東京五輪・パラリンピックは結局このまま強行開催されることになりそうだ。

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主要メディアも「五輪モード」に本格突入

7月23日の開幕が近づくにつれ、不可解な報道や発表が“大本営”や主要メディアから次々と発信されている。読売新聞が今月4~6日に実施した世論調査では五輪を「開催する」と回答した人が50%(5月の前回調査比11ポイント増)、「中止する」と回答した人は11ポイント低下して48%となったという。TBSが7日に報道したJNNの調査結果でも「開催すべきだ」が44%(同9ポイント増)に達し「中止すべきだ」と答えた31%(同6ポイント減)を上回ったらしい。

読売新聞社は東京オリパラ大会のオフィシャルパートナーとしてスポンサー契約を結んでいる。そしてTBSも多額の放送権料を費やし、東京五輪の大会期間中は複数の人気競技を中継する予定だ。いわば東京五輪と蜜月の関係にある天下の大メディア2社の「公正な調査結果」にイチャモンをつけるつもりは毛頭ないが、これに圧倒的多数の人が疑問を投げかけているのは説明するまでもない。

ただ、影響力の強い大手新聞社と民放キー局が揃って開催を後押しするような結果を報じたことは、今まで世論に押されて大会実施に懐疑的な目を向けざるを得なかった主要メディアもいよいよ五輪モードに舵を切り始めたという姿勢の表れであろう。

「海外メディアの行動をGPS管理」は無理筋

主要メディアの後ろ盾があるから、もうツッコミを受けることもない――もしかするとそう踏んでいるから、摩訶不思議なことをブチ上げたのだろうか。大会組織委員会の橋本聖子会長が8日、またしてもスゴいことを言い出した。海外から訪れるメディアについて入国後14日間を念頭に事前登録された指定場所以外に外出することを防ぐため「GPSなどにより厳格に行動管理する」との考えを明言。また、宿泊先に関しても民泊や友人宅などは認めず組織委が監督できる宿泊施設に限定し、当初の約350カ所余りから約150カ所に集約させるなど感染対策を徹底させる方針も明かしたのである。

橋本会長の発言には思わず笑ってしまった。政府と厚生労働省が鳴り物入りで開発し、世に送り出した新型コロナ接触確認アプリ「COCOA(ココア)」は今年1月下旬まで約4カ月にわたって3割のスマホで機能しないなど不具合が次々に発生したばかりだ。こうした不具合が報告されていたにもかかわらず厚労省は不明瞭な役割分担などがネックとなり、うやむやにして放置し続けるという大失態を犯している。この不祥事について今年2月3日に田村憲久厚労相が陳謝したことは、まだ記憶に新しい。この“前科”に象徴されるように口先ばかりでIT化がまるで反映されない日本において本気で「GPS行動管理」ができると考えているのだろうか。

橋本会長は「厳しい罰則」を設ける強硬措置を示唆しているとのことだが、海千山千の他国メディアに対してどこまで強気で踏み込んでいけるかも甚だ疑問だ。しかも約2万8000人とされる東京五輪の海外メディア全員の行動を逐一把握するのは至難の業である。携帯電話を複数台所有しているケース、あるいはGPSがオンになっている機器を宿泊場所に置いたまま外出するという抜け道も考えられなくはない。組織委の内部からも「それこそ北朝鮮のように一人ひとりに対して監視員でも付けない限り、ルール違反者を取り締まることは実際のところほぼ不可能」と小声でささやかれているのが実状である。

筆者の知人で東京五輪のメディアパスを取得し、大会直前に来日予定の米メディア関係者は早速メールで橋本会長のGPS発言に反応して、

「残念ながら彼ら(日本政府や大会関係者)は我々メディアを管理できないだろう。なぜなら我々には知る権利がある。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックの中、オリンピックが開かれる日本の国内で何が起こっているのかを世界に伝えなければいけない。競技の取材だけではなく、東京など主要都市の街に出てリアルボイスを集めなければ意味がない。彼らが我々を制限することは、自分たちに都合の悪い真実を隠そうと試みる隠蔽と同じだ」

などとオフレコトークをつづっていた。

我々日本人にとっては迷惑な主張でしかないが、海外メディアの立場からすれば「NGとされれば余計に裏をかいて取材したくなる」というジャーナリズムの性が皮肉な形で働いてしまっているようである。

日本がメダルラッシュの予感、熱狂で「感染爆発」への備え忘れてはならない

一方、東京五輪に参加する肝心の各国代表選手たちも今大会の杜撰(ずさん)なスケジューリングと管理体制に悲鳴を上げている。豪州代表の女子ソフトボールチームは群馬県太田市で事前合宿をスタート。海外の選手団が日本国内で合宿地入りするのは初めてとあって、各メディアでも大々的に報じられたが、6日に予定されていた東海大学との練習試合がお互いの感染予防のため中止となるなど早くも破綻状態へ追い込まれている。

そのほか、海外代表選手団の事前合宿が行われる予定だった自治体から次々と「中止」が発表され、予想されていた事態とはいえ不穏なドミノ現象に歯止めが利かなくなっているのも気がかりだ。

「海外の代表選手が事前合宿を行えずに大会直前で来日し、ぶっつけ本番となればベストコンディションで競技に臨めるとはとても言えない。コロナだけでなく日本の酷暑への対応もままならないだろう。そう考えると、この東京五輪はかつてないほど日本の代表選手たちにとって絶対有利の環境になる。それが良いか悪いかは別にして“ホームアドバンテージ”で地の利を生かし、史上空前のメダルラッシュとなりそうな予感は確かにある」(組織委関係者)

ただでさえコロナ禍で身動きが取れない中、自国開催の特権を存分に生かせる日本とハンデを背負う他国との間にはとんでもない格差が生じるのは必至。たとえそんな不公平があろうともメディアは手のひら返しで日本のメダルラッシュや奮闘ぶりを針小棒大にしながら報じ「感動の押し売り」を図ろうとしている流れは容易に想像がつく。悲しいかなどうしても熱しやすい国民は強行開催に対する怒りを忘却し五輪フィーバーにあっさりと流され、7月23日の開幕以降はワーワーと熱狂して騒ぎ出すことになるだろう。これこそが政府、組織委、JOC(日本オリンピック委員会)、そして一部開催強硬派ら大会関係者の思い描く理想のシナリオなのだ。

杜撰かつ不公平な東京五輪が“大本営発表”で表向きに成功したとしても、その代償としてコロナ再蔓延のリスクが待ち受けている可能性は当然否定し切れない。一体、アフター東京五輪の日本はどうなっているのか。その答えは誰にも分からない。いずれにせよ説得力に欠ける「安心安全な五輪」の言葉のもと、国民は総動員でロシアンルーレットの回る“戦場”へと駆り出されることになる。

臼北 信行

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