森喜朗氏の「女性蔑視発言」、本質は日本の「上下関係」ではないかと米在住者が感じたワケ

森喜朗氏の「女性蔑視発言」、本質は日本の「上下関係」ではないかと米在住者が感じたワケ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/02/22
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そもそも日本語には「上」「下」という言葉が多い

女性蔑視発言により、東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会会長、森喜朗氏が辞任を表明した。発言内容も問題だが、反省の色が見えにくい謝罪会見や、後任選出基準に森氏の圧力が見え隠れしたことなど、その後も尾を引いた。

また異常なまでに報道が過熱し、舌禍がオリンピック開催の可否論争にまで波及したが、18日には新会長として、橋本聖子オリンピック・パラリンピック担当大臣が就任し、一応の決着がついた形だ。

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さまざまな問題が噴出した一連の流れを、筆者は海外から俯瞰していて考えたことがある。

男女差別もさることながら、日本は年齢、職業、国籍や移民ステータスなどで相手をジャッジする傾向がある。

筆者はこれまで個人事業主として、多くの日本企業の海外サポートをしてきた。そのほとんどが気持ちの良い取引で終わったが、なかにはとある大企業のお偉いさんが女性、年下、個人事業主など明らかに自分より弱い立場の人に対して見下すような態度なのを、側から見かけたことがある。

20年近く住んでいるアメリカではあまり見たことがなく、日本のビジネスをリードする立場にある人がこんなあからさまなことをするのかと驚いたものだ。

そもそも日本語には「上司」「部下」「卑下」「下っ端」「上から目線」「下働き」「見下す」など、人間関係において「上」や「下」の言葉が多い。

筆者が日本に住んでいた2000年初頭までは、「上級国民」や「マウンティング」などという言葉を日常的に聞くことはなかったが、最近は頻繁に耳にするようにもなった。上下関係を言葉ではっきりと示す傾向は、近年特に顕著になっているのかもしれない。

また日本人は年配の人、先生と呼ばれる地位の人、会社の役職に付いていたり名刺の肩書きがよい人などを一律に「エライ」と持ち上げる傾向がある。健全な人間関係というのはお互いフェアであるべきで、上とか下などの考え方は不要なはずだ。

男女格差や性差別は日本だけ、ではない

なぜ「日本の上下関係」を思い出したのかというと、今回の女性蔑視発言は到底許されるべきではないが、ただ冷静に考えると性差別というのは日本だけではないからだ。

韓国や中国などアジアの国々や南米諸国にも男尊女卑の考えが少なからずある。中東諸国の性差別は世界でもっともひどいとされる。

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世界経済フォーラムが発表した、2020年版世界のジェンダーギャップ(男女格差)指数ランキングで、世界153ヵ国中、日本は121位、韓国は108位、中国は106位、インドは112位と、日本はカースト制度のあるインドよりランクが低い。ワースト3にはパキスタン、イラク、イエメンと中東諸国が並んでいる。一方でアイスランドやノルウェーなど北欧諸国は、もっとも男女格差が少ない。

多文化主義のアメリカでさえ53位だ。アメリカは建国以来、性差を含むあらゆる差別と闘ってきた。女性が投票権を得たのは101年前の1920年だ。その後、差別が解消されたのかといえばそうではなく、男女平等のためにフェミニズム運動は続いた。

ただ、近代のアメリカには日本のような「女性は三歩下がって」「家事や子育ては女性の仕事」などの発想がないから、まだマシと言える。

とはいえ近年でも、映画業界からスポーツ、そして一般のオフィスまで、男女の賃金格差がたびたび問題になっているし、女性大統領も未だ誕生していない。

結局のところ、表面的に見えないだけで、アメリカにも性差別はシステム的に残っている。

完全に男女平等でないからこそ、いまだ水着着用のミスコン大会がもてはやされ、レディファーストの習慣が残り、女性&有色人種初の副大統領の誕生やバイデン政権の人事に女性や有色人種の比率が高いことがニュースになるわけだ。

今回の騒動の本質

森氏は辞任したが、これで日本にある根深い問題が解決するわけではない。そしてなぜ今回、日本での騒動がこんなに世界中で注目され、騒がれてしまったのだろうか。

筆者は、今回の騒動の裏には、厳格すぎるほどの「縦社会」「上下関係」や弱者を蔑む意識が存在し、それが日本の差別問題をさらに厄介にしていると考える。

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例えば、森氏が言ったとされる「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」や「女性は競争意識が強い」という発言。話が長かったり競争意識が強いのは人の性格によるものだから、筆者は真に受けなかった。「(森氏)は男性、女性で物事を区別する考えの人なんだな」という感想を持ったくらいだった。

それよりも気になったのは「組織委員会のみんな(女性7人)はわきまえておられる」と発言した方だ。「わきまえる」という言葉には、「言わなくてもわきまえろよ」という無言の圧力が見え隠れする。

ニューヨーク育ちの知り合いが、日本に就職した時のエピソードがある。

人生経験のために親のルーツである日本に住んでみようと決めた日系二世の彼は、住み慣れたニューヨークを旅立ち、東京にある金融系大企業に就職した。しかし、日本の上下関係やしきたりを初めて体験し、辟易したという。半年ほどで退職し、アメリカにとんぼ帰りした。

「日本の上下関係は厳格すぎて肩が凝る。自分の居場所ではないと感じた」と言っていたのが印象的だった。

また、アメリカで通訳をしている別の知人(女性)は、「ある日本の大企業の幹部らと初めて会った際に、きちんとした挨拶がないなど明らかな上から目線で、ばつの悪い会合だった」と愚痴を漏らしていた。

日本がまずやるべきこと

筆者は以前、当地で取材をしたクリエイティブディレクターであるレイ・イナモトさんの発言に、妙に納得したことがある。

イナモトさんは、米誌に「世界でもっとも影響力のある50人」に選ばれた人物で、広告業界の最先端から日本を見守っている人物だ。

そのイナモトさんは“日本が変わるために必要なこと”としてこのように発言していた。

「日本の企業や社会がまずやるべきことは、年功序列と男尊女卑をなくすことだと思う」。

もちろん、日本の年功序列によって培われてきた良い面もたくさんあるだろうが、筆者は、上下関係とも繋がる年功序列をなくして、完全実力制にするのは賛成だ。

アメリカの会社では、実力ありきで昇進するのが一般的だ。毎年、個人の目標や年収を上司と確認し、外部からコンサルタントを入れて、綿密に実績を評価していく。

またアメリカ人は、フェアネス(公平性)をとても大切にする。「客は神様」のような考え方はなく、お互いをフェアな関係と捉える。だから客側からも「売ってもらってありがとう」というような感謝の言葉が自然と出てくる。

筆者は、経験豊富な年上の相手を敬うことと、厳格すぎるほどの上下関係とは別物だと考えている。上下関係は敬語や先輩・後輩文化とも繋がっているので、一朝一夕で解決できる問題ではないが、少しずつ意識を改革することなら今日からでもできるはずだ。

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