インコの好物はお茶漬け 直木賞作家の家に集まる動物たち

インコの好物はお茶漬け 直木賞作家の家に集まる動物たち

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  • 更新日:2021/04/08
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黒川博行・作家 (c)朝日新聞社

ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は、「家の動物」について。

【オカメインコの写真はこちら】

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頭と背中が青く(きれいな群青色)、腹の赤い(煉瓦色)小鳥が庭の梅の木に吊るした洗面器に入って餌を食べていた。スズメが近づいてくると威嚇して追い払い、キジバトが来ても気にするふうはない。大きさはヒヨドリほどか。はて、なんじゃろか。初めて見る鳥だから正体が分からない。

グーグルで『日本の野鳥』を調べて、イソヒヨドリだと分かった。ウィキペディアによると「スズメ目ヒタキ科に分類される鳥の一種。アフリカとユーラシア大陸に広く分布する鳥で、和名どおり海岸や岩場に多く生息している。近年は内陸部の地方都市で繁殖が確認されるようになり、大都市圏で見かけることも珍しくない」とあった。

うーん、これはうれしい──。うちの庭に来る鳥は、ウグイス、メジロ、シジュウカラ、ムクドリ、ヒヨドリ、スズメ、キジバトだが、また一種増えた(アオサギが来たこともあったが、池に飛び込んで金魚を襲うのには参った。羽を広げると二メートル近くもあるやつがバシャバシャしているのを見るのは、ほんと気分がわるい。猫も来て金魚を獲るから、いまは池を金網で覆っている)。

もっといえば、タヌキの餌付けをしていたころもあったし、池のカエルを狙ってシマヘビが、キジバトの卵を狙ってアオダイショウが来たこともあった。アシナガバチとコガタスズメバチも巣を作った。玄関の軒下にツバメが巣を作りかけたときはうれしかったが、カラスに目をつけられたのか、途中で巣作りをやめたのにはがっかりした。

セキレイはうちの近くの路上でよく見かける。小さいのに、走るのがやたら早い。ひとを恐れている感じはないが、近づくと逃げる。遠くには逃げず、一定の間合いをとる。ネットの画像を見ると、たぶんハクセキレイだろう。

このところ、ムクドリのつがいが台所のエアコンの穴に出入りしている。そろそろ卵を生んで温める時期だ。毎年のことだが、雛が無事に巣立ってくれるとうれしい。ムクドリの巣はダニがわくらしいが、穴は台所側から塞いでいるので害はない。

オカメインコのマキは片時もわたしのそばを離れない。昼、わたしが目覚めたときは、いつも腕にとまって眠っている。マキ、起きよか──。腕にとまらせたまま台所に下りると、よめはんの肩に飛んでいって挨拶がわりに耳をつつく。マキちゃん、痛い──。よめはんが泣いてみせると、マキはよろこんでジジッと鳴く。マキは人間と同じようにサラダを食い、コーンスープを飲み、ピザやうどんを食う。いちばん好きなのがごはんで、茶漬けにすると二十粒くらいはあっというまに食って、そのあと自分の餌を食う。満腹になったら歌をうたいながら、テーブルの上を歩きまわって、いたずらをする。いまのお気に入りは鉢植えのレタスをバラバラにすることで、三日もすれば根だけになるから、またよめはんが買ってくる。

わたしが仕事をしているとき、マキは机のそばで遊び、夜、寝るときはトコトコと布団のそばに来て、わたしの腕にとまる。マキは一日に十四時間は寝ているだろう。うちの庭に来るスズメやキジバトは夜明けから日暮れまで懸命に餌を探して生きているのに。

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

※週刊朝日  2021年4月16日号

黒川博行

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