
写真/大野洋介
在宅期間が長くなり、ストレスから食べ過ぎてしまう人も多いだろう。そんなコロナ太りの解消に役立つのが、漢方を採り入れたダイエット「漢方ファスティング」だ。AERA 2021年1月18日号は「漢方」を特集。
【「氣生薬局」代表久保田さんと生薬を独自配合したお茶はこちら】
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東京・大塚の「氣生薬局」では、「漢方ファスティング(断食)」を行っている。太っているのは、何かが過剰になった状態。漢方薬の力を借りて体内の余分なものを排出し、バランスが取れた「中庸」の状態に戻す。その結果、太っていない体を手に入れられ、体質改善にもつながる。
神奈川県在住の女性(43)は、もともと氣生薬局に不妊の相談で通っていた。41歳で妊娠、出産。出産後に増えた体重10キロを漢方薬で落としたいと、漢方ファスティングを始めた。氣生薬局代表で、漢方処方歴26年の薬剤師、久保田佳代さんが言う。
「この女性は、イライラがたまると、発散しようと食べてしまう。アトピー性皮膚炎で、血に熱がこもりやすく、手足のしびれもみられました。東洋医学の診断法から、イライラやのぼせに効果がある『黄連解毒湯(おうれんげどくとう)』と『温清飲(うんせいいん)』を処方して飲んでもらいつつ、最初の2週間は食事チェックから始めました」
■まずは食べた物を自覚
食事チェックの狙いは、なぜ太ったかを自覚してもらうことだ。毎食の写真をLINEで送ってもらった。毎日のようにカツ丼やミックスフライ定食など揚げ物を食べていた。その都度、久保田さんは「野菜料理をプラスして」「揚げ物が続いているよね」「ポテトサラダはやめて、豆腐や煮物に」とアドバイスした。
「連日の高カロリー食に罪悪感を抱くようになれば、食事の選び方は変わります。夕食は野菜たっぷりスープだけに置き換えて2週間で2キロ減量。そこからファスティングに入ってもらいました」(久保田さん)
ファスティングは基本的に7日間。食事をとらず漢方茶や白湯など水分だけで過ごすのは3~5日目で、それ以外の日は久保田さんが調合した薬膳粥(がゆ)や和食中心の食事でプログラムを組む。薬膳粥の内容は、滋養強壮などにいい龍眼肉(りゅうがんにく)、山薬(さんやく)、大棗(たいそう)、枸杞子(くこし)、血糖値の急上昇を抑制する菊芋(きくいも)、余分な水分を取り、むくみを解消する昆布(こんぶ)などだ。ちなみに、龍眼肉はライチなどの仲間で、山薬はヤマイモ、大棗はナツメ。枸杞子はデザートのトッピングでよく見かけるゴジベリー(クコの実)。菊芋は「野菜」として売られている。昆布は、「ダシを取る昆布」と同じものだ。
「お粥に使うお米も、粳米(こうべい)という生薬(漢方薬における最小単位の薬剤)の一種。身近な食材には、生薬として使われているものがたくさんあります」(同)
空腹時には、大棗、枸杞子、海松子(かいしょうし=松の実)、麻子仁(ましにん=麻の実)などを混ぜたものを。合間に飲む漢方茶も、血流改善や排尿促進などを目的に生薬を配合した薬膳茶だ。この漢方ファスティングを3回行った結果、女性は体重を妊娠前の標準体重まで戻した。「体の中の『流れ』が整っていくのが分かるような感覚があり、心地よかった」と女性は話す。今は漢方薬を飲みながら体重と体調を維持している。(ライター・羽根田真智)
※AERA 2021年1月18日号より抜粋
羽根田真智