米国で若年層へのワクチン接種に新たな懸念

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  • 更新日:2021/06/11
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(AlexLMX/gettyimages)

現在12歳以上の国民全てにワクチン接種を行っている米国だが、CDCが気になるデータを発表した。16−24歳の層で、2回目のワクチン接種後に心臓に炎症を起こすケースが想定していたよりも高い、という。この現象はファイザー、モデルナ双方に共通して見られる。

5月31日の時点でCDCに寄せられたこの年代層の心臓の炎症のケースは275件に上る。当初に専門家が予測していたのは、10−102件程度の心筋炎や心膜炎が起こる、というもので、これはこれまでの成人のデータなどから割り出したものだ。

さらに対象年齢を30歳まで上げると、心筋炎と心膜炎を起こしたケースは475件に跳ね上がる。ほとんどはその後回復したものの、6月10日現在集中治療室などで入院している症例も15件ある、という。専門家は「より年齢層の高い世代と比べ、若年層が炎症を起こすケースが不自然なほど高い」と懸念を表明している。

ワクチンの副作用で重篤なケースとして知られるのは血栓だ。これは女性に多いのだが、心臓の炎症は逆に男性に偏っている、という。症状が出るのはワクチン接種後4−5日程度のことが多く、症状は3−4日続くことが多い。幸いなことにこれによる死亡者は現時点ではまだ報告されていない。

米国で12−15歳に接種が認められているのはファイザー製のワクチンのみだが、モデルナでもこれより高い年齢層で同様の結果が出ており、CDCとFDAは現在ワクチンと心臓の炎症との因果関係について究明中だ。

多くのケースは非常に軽症

ただしFDAの研究者であるピーター・マークス博士は「多くのケースは非常に軽症であり、新しいワクチン接種が始まった時にこうした副作用が起こることは珍しいことではない。ワクチンを接種しないリスクと比較すれば、やはり接種を強く推奨する」としている。

この点について、ニューヨーク・タイムズ紙が興味深い記事を発表している。ワクチンを接種せずにコロナウィルスで死亡する人、ワクチン接種後に死亡した人の数の追跡調査だ。

それによると、米国ではコロナによる死亡者のピークが今年1月で、5月にはワクチン接種が進んだことで死亡者数は9割減少した。しかし5月末の時点でも1週間あたりの死亡者はまだ2500人程度という高い水準だ。

この死亡者はワクチン接種を済ませていない層が中心だ。米国で緊急承認を受けたワクチン接種が75歳以上の高齢者に対して始まったのは昨年12月で、以来高齢者の死亡率は大きく減少した。それに代わり現在では50−74歳の層が死亡者の半数を占める。つまり死亡者が若年化しているのだ。

死亡の原因がすべてワクチンだったという確証はない

一方ワクチン接種を済ませた人では、4月30日の時点で1億100万人が2回の接種を終え、うち接種後にコロナに感染した人は1万262人だった。うち1割が重症で入院し、死亡したのは全体の2%だった。つまり1億人以上の接種者の中で死亡したのは200人程度、ということになる。

ただしワクチンの副作用による死亡者については、現在米国で大きな議論となっている。ロン・ジョンソン上院議員(ウィスコンシン州選出、共和党)がVaccine Adverse Event Reporting System (VAERS)というワクチンの副作用を追跡するシステムのデータを元に、「ワクチンによる死者は3000人を超えており、真っ当な数字とは思えない」とワクチンを強く批判したのだ。

これに対しCDCは、VAERSは誰でも副作用や死亡ケースを報告できるサイトであり、死亡の原因がすべてワクチンだったという確証はない、と反論。ジョンソン&ジョンソン社のワクチンと一部の血栓症についての因果関係は認められる、としながらも、ワクチン接種後に起きた死亡例には様々な原因があり、3000人以上という数字は正しくない、としている。

また、仮にVAERSの数字(5月10日時点での死者数は4434人)が正しかったとしても、死亡率を算定すると全ワクチン接種者の0.0017%であり、コロナ感染による死亡率(米では1.8%)と比較すると遥かに低い、とワシントン・ポスト紙は伝えている。

ワクチン接種は個人の自由ではあるが、米ではワクチン接種カードがないと職場復帰を認めない、などの動きも広がっている。今後は児童が学校に復帰する際にワクチン接種証明を求められるケースも考えられるのだが、若年層の特異な副作用については今後の検証が必要となるだろう。

土方細秩子

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