「ウォーク・ドント・ラン」 村上龍  村上春樹

「ウォーク・ドント・ラン」 村上龍 村上春樹

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  • 更新日:2023/11/21

「『限りなく透明に近いブルー』でもね、本当は「あの朝」が書きたかったですよ。でも、朝を書くためには、その前にすごい苦しい」

「ウォーク・ドント・ラン」 村上龍 村上春樹

https://www.amazon.co.jp/%25E3%2582%25A6%25E3%2582%25A9%25E3%2583%25BC%25E3%2582%25AF%25E3%2583%25BB%25E3%2583%2589%25E3%2583%25B3%25E3%2583%2588%25E3%2583%25BB%25E3%2583%25A9%25E3%2583%25B3%25E2%2580%2595%25E6%259D%2591%25E4%25B8%258A%25E9%25BE%258Dvs%25E6%259D%2591%25E4%25B8%258A%25E6%2598%25A5%25E6%25A8%25B9-%25E6%259D%2591%25E4%25B8%258A-%25E9%25BE%258D/dp/4061169009?&_encoding=UTF8&tag=bluebird-22&linkCode=ur2&linkId=0460f5c5460fa6cf7a1a4f2be553c2a9&camp=247&creative=1211

この本の初版が1981年。

村上龍さんが「コインロッカー・ベイビーズ」を、村上春樹さんが「1973年のピンボール」を出版したあとに行われた対談です。

表紙をめくると2人の写真があるのですが、とてもお若い!対談の内容もそんな感じで、とても自由に、奔放に、語りあっています。

いきなり

「なぜ小説を書くのか?」
と春樹さんが龍さんに問いかけます。

龍さんは

結局、小説ってのは、なんか自分の足りない部分を助けるとか、自分を解放するために書くんじゃないかと思うのですよ。

それに対し、春樹さんは

僕はね、小説書くのは自己解放だとは思わない。自己変革だと思うわけ。小説書くことで、自分が変わっていくインパクトっていうか、刺激になればね、小説ってそういうもんじゃないかっていう気がするけど。

2人の小説を書く感覚はちょっと違っていて、龍さんは1つの情景があって書き始めるそうです。イメージがあって、「最初にあるのは1枚の絵のようなものなんです」と語っています。

春樹さんは、龍さんの絵画的なものに対して「映画的」だと語っています。それは、シーンごとに撮っていき、あとで編集するような感じであると。伸ばしたり短くしたり。まさに「風の歌を聴け」はそんな感じでしたよね。

興味深かった話が、春樹さんは「風の歌を聴け」を書いたとき、まずタイプライターで英語で書いた後、それを訳したそうなんです。

そう言われると、アメリカ映画のようであり、日本の小説ではないような感覚でした。

あと

この頃、お店をしながら小説を書いていた春樹さんによる、こんな話が印象的でした。

僕、店やってるでしょう、そうするとね、十人来ても、店を気に入ってくれる人は一人か二人だものね。あとはたいして気に入らないわけ。十人に一人、また来ようかなと思った人がまた来てくれれば、店というのは、商売がじゅうぶん成り立っていくわけです。店を始めてね、いちばんに感激したのはそれですよね。十人に一人でいいじゃないかってさ。これは感動ですよ。小説もそれと同じなんじゃないかなと思う。

お店を経営していても、かなりの人気店でない限り気に入ってくれるのは十人に一人か二人なんですね。

小説の読者もそうなのかもしれません。

そう考えていると、私たちが書いているNoteもそうなのかもしれないと思い当たりました。

いつも書いた記事にスキしていただいたり、コメントをいただけるのは本当に感動しますし、たくさんの人に気に入っていただけなくても、いつも見に来て下さる方のおかげで書いていけるなぁと。

それに

すべての人に気に入られようとせずに、「自分の信じた事を誠心誠意伝えていくことが大事なことなんだ」と気づかせてもらえました。

もうひとつ

一番小説の中で書きたい事、いわば核心部分ですよね。そこに言及している話で、龍さんのこの話が心に残りました。

ぼくはがまんする。だから、いいたいことがあるでしょう。それに至るまでにね、がまんして、ため込んでいるというのかな。(中略)だから『限りなく透明に近いブルー』でもね、本当は「あの朝」が書きたかったですよ。でも、朝を書くためには、その前にすごい苦しい、その、「錯乱」のところを書かなきゃいけないんで、「錯乱」は原稿用紙で二十何枚あるんですよ。朝のシーンというのは原稿用紙で四、五枚しかないのね。だからその四、五枚を書くためにさ、すごく苦しい二十何枚も書く、錯乱の描写を、思い出しながら。ようし、もういいだろうと思って書くと、本当に泣けちゃうの、書きながら。ほんと、自分でいいますよ、がまん、がまんと。原稿用紙のこっち側のさ、白い紙に「がまん」と書いたりさ。

「夜明け前が一番暗い」と言いますよね。一番暗くて苦しいときは、そこから抜け出せるほんの少し手前なのでしょう。

作家の方々も、一番言いたい事を書く前には、とても苦しんでいるのだとよくわかるお話でした。

苦しいときは、がまん、がまん

感動する「朝」は、すぐ近くまで来ているでしょう。

【出典】

「ウォーク・ドント・ラン」 村上龍 村上春樹 講談社

https://www.amazon.co.jp/%25E3%2582%25A6%25E3%2582%25A9%25E3%2583%25BC%25E3%2582%25AF%25E3%2583%25BB%25E3%2583%2589%25E3%2583%25B3%25E3%2583%2588%25E3%2583%25BB%25E3%2583%25A9%25E3%2583%25B3%25E2%2580%2595%25E6%259D%2591%25E4%25B8%258A%25E9%25BE%258Dvs%25E6%259D%2591%25E4%25B8%258A%25E6%2598%25A5%25E6%25A8%25B9-%25E6%259D%2591%25E4%25B8%258A-%25E9%25BE%258D/dp/4061169009?&_encoding=UTF8&tag=bluebird-22&linkCode=ur2&linkId=0460f5c5460fa6cf7a1a4f2be553c2a9&camp=247&creative=1211

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