黒沢清監督、海外映画祭での意外な交流秘話を明かす

黒沢清監督、海外映画祭での意外な交流秘話を明かす

  • シネマトゥデイ
  • 更新日:2021/07/21
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軽妙なトークで会場を沸かした黒沢清監督 - (撮影:中山治美)

コロナ禍で国内外の移動が困難となっている今、映画祭ポスターを巡って夏の旅行気分を味わってもらおうと、鎌倉市川喜多映画記念館で企画展「映画祭のすゝめ ~ぐるり映画ポスターの旅~」が9月12日まで開催中だ。17日には関連イベントとして、昨年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した映画『スパイの妻<劇場版>』の上映と、黒沢清監督のトークイベントが行われた。

同館は、戦後に洋画の買い付けだけでなく、日本映画の海外進出に尽力した東和商事(現・東宝東和)創業者の川喜多長政・かしこ夫妻の旧邸跡に建てられたもの。夫妻は日本映画と国際映画祭の橋渡し役として、ベネチア国際映画祭に田坂具隆監督『五人の斥候兵』(1938)や黒澤明監督『羅生門』(1950)を送り込んだだけでなく、かしこ夫人はベルリンやカンヌなど国際映画祭で26回も審査員を務めている。

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満席となった客席でトークをする黒沢清監督。(撮影:中山治美)

企画展ではポスターのほか、夫妻の足跡を通して国際映画祭における日本映画史に触れられるだけでなく、夫妻と国内外の巨匠やスターたちとの写真も多数飾られており、映画祭の華やかな雰囲気を味わえそうだ。その一角には『スパイの妻<劇場版>』のベネチア国際映画祭受賞トロフィーも展示されており、黒沢監督は「ここは日本映画の歴史が凝縮されています。その上に自分が立っているんだなと思いました」と感慨深げに語った。

黒沢監督の国際映画祭デビューは、1998年のロッテルダム国際映画祭。1997年秋に行われた第10回東京国際映画祭に『CURE キュア』(1997)が選ばれ、役所広司が最優秀男優賞を受賞したことで、海外から注目されるようになった。以来、国際映画祭の常連で、司会者から映画祭で会った印象に残っている人を問われると、台湾のエドワード・ヤン監督、イランのアッバス・キアロスタミ監督、ギリシャのテオ・アンゲロプロス監督の名を挙げた。

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『雨月物語』(1953)のベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞記念ポスターや、『うなぎ』(1997)のカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞が大きく書かれたフランス公開版ポスターも展示されている。(撮影:中山治美)

黒沢監督は「とはいえ、是枝裕和監督をはじめ普段は会うことのない日本の監督とお会いする方がむしろ貴重な経験です。絶対日本ではないのですが、“せっかくなのでお茶でも”と時間を共にし、“あの俳優はどうでしたか?”とか、“あの撮影はいくらかかりましたか?”とか情報交換しています。日本ではなかなかできないけど、海外の映画祭だとできるんですね」と監督同士の意外な交流秘話を明かした。

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チャップリン特集が組まれた時の第33回ベネチア国際映画祭のポスターなど。(撮影:中山治美)

そして今回のトークのテーマである「世界の観客は映画のどこをどう見るか?」に話題が及ぶと、黒沢監督は「感じていることは同じだと思うのですが、それを表現する言葉が違う」と語る。

「ジャーナリストも含めて欧米の方は“なぜ、あそこはそうなったのか?”と聞いてくる人が多い。最初は(わかりづらくて)悪いことをしたかなと思っていたけど、これは、“あなたの映画は面白かったですよ”というあいさつなんですね。ただ、そうストレートに言うと馬鹿みたいだから、“あなたとお話がしたい”というのを少しカッコつけた言い方で伝えているのだと、だんだんとわかってきました」と持論を語り、会場の笑いを誘った。

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記念館入り口に飾られている黒澤明監督が『夢』で描いた絵を使用した第20回サンパウロ国際映画祭のポスターをバックに。(撮影:中山治美)

そんな数々の思い出のある国際映画祭もコロナ禍でオンラインが中心に。黒沢監督もWEB会議ツール「Zoom」などで会見やインタビューに参加しているそうだが「実感がないですね」と一抹の寂しさを感じているようだ。

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鎌倉の静かな住宅地にある鎌倉市川喜多映画記念館の外観。(撮影:中山治美)

企画展では、黒沢監督がカンヌに参加したときの珍道中をはじめ、西川美和監督や女優・渡辺真起子らによる映画祭の思い出や今の思いをつづった文章も掲示されている。華やかだけではない舞台裏を知ることで、国際映画祭をまた違った視点から楽しめそうだ。(取材・文:中山治美)

企画展「映画祭のすゝめ ~ぐるり映画ポスターの旅~」は、9月12日まで鎌倉市川喜多映画記念館で開催中

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