俳優・斎藤工がウルトラマンに重ね合わせる「現代における日本の役割」 〈斎藤工(俳優)〉

俳優・斎藤工がウルトラマンに重ね合わせる「現代における日本の役割」 〈斎藤工(俳優)〉

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  • 更新日:2022/05/14
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写真:キムラタカヒロ

今年5月13日(金)、公開前から話題を呼ぶ映画『シン・ウルトラマン』がついに封切られる。企画・脚本は庵野秀明氏、監督は樋口真嗣氏。数々の作品を世に送り出したタッグが再び手を組み、国内外で愛され続けているウルトラマンを新たな視点で描く。

舞台は超自然発生巨大生物「禍威獣(かいじゅう)」の脅威にさらされる日本。立ち向かうのは、防災庁の専従組織「禍威獣特設対策室専従班」、通称、禍特対(かとくたい)だ。個性的なメンバーが集結するなか、作戦立案担当官の神永新二は、「ウルトラマンになる男」でもある。

同作で主人公の神永を演じた斎藤工さんが、コロナ禍とウクライナ戦争という混迷を極める時代に本作を届ける意味、共演した西島秀俊さんとの秘話、俳優としての今後について語る。

<聞き手:編集部・中西史也、ヘアメイク:くどうあき、スタイリスト:三田真一(KiKi inc.)>

※本稿は『Voice』2022年6⽉号より抜粋・編集したものです。

ウルトラマンから学ぶ日本の立ち位置

――『シン・ウルトラマン』では、禍威獣という脅威に人類が立ち向かいます。現実世界に目を向けると、コロナ禍やウクライナ戦争など混迷期にあるといえますが、いま本作を上映する意味をどう感じていますか。

【斎藤】現在の情勢と結びつけるのは難しいと思いつつも、この映画が期せずしていま封切られることには大きな意義があると痛感しています。

撮影が始まったのは2019年で、本来であれば2021年に上映される予定でした。でも、コロナ禍の影響でこのタイミングになった。僕自身、パンデミックを経たからこそ見えてきた景色があるし、観てくださる方々の捉え方にも、何がしかの変化が生まれるはずです。

また、僕はウルトラマンという外星人と人間の「狭間」に立つ存在を、いまこそ見つめ直すべきだと感じているんです。『シン・ウルトラマン』に登場するような外星人の立場から現在の地球を見たとき、人類は愚行を繰り返しているし、決して進化しているとはいえないでしょう。

人間は地球の内と外で線を引いて、その内部で争いを続けています。だからこそ、地球の外の目線ももつウルトラマンの二面性の意味が増すはずです。

いまの日本が、世界のなかでどのような立ち位置にいるべきかについても考えさせられました。日本だからこそ、ウルトラマンのように狭間に立って果たせる役割があるのではないか。僕はそう考えています。

ウルトラマンはまるで石仏?

――キャラクターとしてのウルトラマンをめぐっては、さまざまな考察がなされます。斎藤さんは映画評論家としての顔もおもちですが、評論的な文脈からはウルトラマンをどんな存在だと捉えていますか。

【斎藤】ある種の神話的な象徴ではないでしょうか。僕は十代の終わりにバックパッカーとして世界を巡った際、東南アジアの寺院で見かけた石仏とウルトラマンの姿が重なって映りました。ウルトラマンの穏やかな表情を見ていると、思わず拝みたくなるほどです。

さらにいえば、ウルトラマンの外見はジェンダーレスで、「今風」とも捉えられるでしょう。特撮の歴史を象徴する印象をおもちの方も多いでしょうが、じつは現代的、ひいては未来的だといえるのではないでしょうか。

――エンタメ作品を通して多様な視点を身につけることができる。『シン・ウルトラマン』はその象徴のような映画なのかもしれませんね。

【斎藤】おっしゃるように、映画を介するからこそ得ることができる、ものの見方があるはずです。昨今の情勢に絡めていえば、先日「ウクライナ映画人支援上映 有志の会」というプロジェクトが発足したのですが、僕も賛同人の一人としてコメントを寄せました。

また、かつてウクライナで撮影された映画の名作『ひまわり』(1970年)を再上映する動きが全国で広がっています。僕はこのようなウクライナ関連の映画だけではなく、アレクサンドル・ソクーロフやアンドレイ・タルコフスキーといったロシアの監督の作品からも感化されてきました。

いま、ウクライナとロシアそれぞれの視点から描かれた映画を観ることで、ニュースで知る以上の価値が得られるのではないでしょうか。

西島さんは、銀幕スターの代表的な存在

――『シン・ウルトラマン』で禍特対班長の田村君男を演じた西島秀俊さんは、今年3月に『ドライブ・マイ・カー』(2021年)で日本アカデミー賞主演男優賞を受賞し、本作は本場アメリカのアカデミー賞では国際長編映画賞を獲得しました。西島さんとの共演で刺激を受けた部分はありましたか。

【斎藤】西島さんは僕にとって、現代的な銀幕スターの代表的な存在です。アジアの名だたる監督たちとコラボレーションしたり、イランの名匠アミール・ナデリ監督の『CUT』(2011年)で主演を務めたりと、挑戦的な試みを厭わない方ですね。

『ドライブ・マイ・カー』の撮影時の話は、僕が西島さんと共演した『グッバイ・クルエル・ワールド』(2022年秋公開予定)の撮影現場でも聞いていました。どの時代に生きていても映画スターとして活躍されていただろう西島さんと、いまこうして一緒に作品に関われることは本当に幸運です。

――斎藤さんと西島さんは、俳優界のなかでも屈指の映画通である点も共通していますね。

【斎藤】西島さんがどの作品をご覧になったかは、映画界でもしばしば話題になるほどですからね(笑)。ユーロスペース(東京都渋谷区)など、多くのミニシアターに通っている姿もよく目撃されているようです。

僕は西島さんと大河ドラマ『八重の桜』(2013年)で初共演したのですが、その際に初めて声をかけられた言葉は「川島雄三(映画監督)の遺作ってなんだっけ」でした。

僕が『映画秘宝』で連載しているコラムのこともご存知で、「映画をたくさん観てきて、この仕事をしていて良かった」と感じたものです。そんな西島さんの背中をこれからも追いかけていきたいと思います。

40代で「ようやくたどり着いた作品」

――最後に、40歳を迎えたいま、これから映画とどう関わっていかれるのか、お聞かせください。

【斎藤】20~30代のころは大きな野望を抱えて過ごしてきましたが、本作に関わったことで、自分のなかのフェーズが変わったような感覚があって。「このプロジェクトがめざすもののなかで、自分がいかに役割を果たすか」という発想に変わったのです。

じつはこれまでに、いまの仕事を辞めようと思ったタイミングは何度かあります。それでも、なぜか辞めずにこられたのは『シン・ウルトラマン』という作品に着地するためだったのかな、とさえ感じます。

いまは自分のなかの「業」のようなものが抜けて、凪のように穏やかな気持ちなんです(笑)。ライフワークである「演じること」「制作すること」以上に、これからは映画をいかにお客さんに届けるか、またミニシアターをどう存続させるかといった活動に注力したい思いがあります。

その意味では、『シン・ウルトラマン』は僕のなかで「やっとたどり着いた作品」なのです。

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『シン・ウルトラマン』2022年5月13日(金)全国東宝系にて公開。[(c)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)円谷プロ]

斎藤工(俳優)

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