文楽を未来に ホープが小劇場で相次ぎ自主公演

文楽を未来に ホープが小劇場で相次ぎ自主公演

  • 産経ニュース
  • 更新日:2022/06/23

大阪が誇る伝統芸能、人形浄瑠璃文楽。今年に入って、次代を担うホープの自主公演が相次いで行われている。豊竹芳穂太夫(45)、豊竹靖太夫(43)は息遣いが聞こえそうなほどの小さな劇場で、それぞれ時代物の大曲に挑戦している。「浄瑠璃は何より普段の勉強が大切。コロナ禍だからこそ精進し、挑み続けていきたい」という熱い思いで、文楽を未来につなぐ。

汗を滴らせながら熱演

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「師匠の教えをできる限り吸収し、お客さまの前で語ることで経験を積んでいきたい」と話す豊竹芳穂太夫=大阪市浪速区(安元雄太撮影)

4月末、大阪・道頓堀近くにある小劇場「千日亭」は30人ほどの客でいっぱいになった。芳穂太夫が初めて行った自主公演「みのり会」。幕開きでは師匠の豊竹呂太夫(ろだゆう)が「これほどの大曲を一段勤めるのは大変なこと。彼らを応援してあげてください」とあいさつして、公演は始まった。

芳穂太夫が挑んだのは時代物の大曲として知られる「絵本太功記(えほんたいこうき)・尼ヶ崎(あまがさき)の段」で、三味線も若手の鶴澤燕二郎(えんじろう)が勤めた。本能寺で主君を討った武智光秀(史実の明智光秀)の信念と、逆賊となったために家族が次々と落命していく悲劇を、芳穂太夫は額から汗を滴らせながら熱演し、大きな拍手を受けた。

芳穂太夫は平成15年、後に人間国宝となる豊竹嶋太夫(しまたゆう)に入門。令和2年に嶋太夫が亡くなると呂太夫の門下となった。スケールの大きな語りが特長で、次代を担う太夫の一人として期待を集めている。

「みのり会」の初回に「絵本太功記」という大曲を選んだのは、現在の師である呂太夫から「義太夫節の基本的な技(わざ)が入った5曲」と教えられたからだ。

芳穂太夫は「今曲をはじめ、『寺子屋』『新口村(にのくちむら)』『野崎村』『壺坂観音霊験記(つぼさかかんのんれいげんき)』を挙げていただきました。これから何年かかけて、一曲ずつ取り組んでいきたい」と思いを明かす。

洋楽のホールで挑戦

一方の靖太夫は文楽研修生を経て平成16年、芳穂太夫と同じく嶋太夫に入門し、没後は竹本千歳太夫(ちとせだゆう)門下に入った。誠実で輪郭の大きな語りで将来を嘱望されている逸材は、7月3日にアートホールティンブレ(奈良市富雄元町)で初の素浄瑠璃の会を開く。

挑むのはこちらも時代物の代表的な曲の一つ「源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)・九郎助住家(くろすけすみか)の段」(三味線・鶴澤清公(せいこう))だ。平家方の武将でありながら、心は源氏にある斎藤実盛の心底などが大きなスケールで、豊かに描かれている。靖太夫は「実盛のさっそうとした捌(さば)きぶりや、九郎助一家に寄せる温かい情、そして、当初、極悪非道に見えた瀬尾十郎の本心など見せ場が多い」と評する。

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豊竹靖太夫は「若いうちにさまざまな曲に取り組んで勉強を重ね、力を上げていきたい」と話す=大阪市中央区(柿平博文撮影)

「人形で、どの役にどの首(かしら=頭)を用いるのかも意識して語りたい。小器用にならず、大きく、思い切り語りたいと思っています」(靖太夫)

同ホールは70人ほど入ればいっぱいになるという小規模な空間だ。

靖太夫は「迫力や繊細さも間近で聞いていただける。今後もチャレンジし続けていきたいですね」と意気込む。普段、ピアノといった洋楽のコンサートを中心に使われているホールということもあり、「道場破りじゃないですが、洋楽のホールで素浄瑠璃の公演を行うことで、いままで義太夫節を聞いたことのない方々にもアピールできれば」と話した。

公演の問い合わせは「義太夫節を勉強する会」(050-3161-7351)まで。(亀岡典子)

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