
ドラマ『いちばんすきな花』Ⓒフジテレビ
フジテレビ系で放送中の『いちばんすきな花』。第6話は、赤田(仲野太賀)が椿(松下洸平)の家に訪問し、ゆくえ(多部未華子)と鉢合わせする展開に…。さらに、物語は本作のテーマ「男女の友情」に切り込んでいく。今回は、そんな第6話のレビューをお届けする。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
●“このままでいること”を望む紅葉

神尾楓珠『いちばんすきな花』第1話(C)フジテレビ
恋愛、友情、そして嫉妬が交錯する第6話だった。
これまで折に触れてゆくえ(多部未華子)への好意を滲ませていた紅葉(神尾楓珠)。てっきりゆくえは紅葉の気持ちにちっとも気づいていなくて、切ない万年片思いなのかと思っていた。
ところが、夜々(今田美桜)に「鈍感だって言われません?」と問われたゆくえは、すぐに「紅葉のこと?」と聞き返す。夜々と同じように、なんだ、気付いていたのかと拍子抜けしてしまった。
気付いたうえで、ゆくえはあえて思わせぶりなことも突き放すこともしない。紅葉が望んでいるのは“このままでいること”だから。
実際に紅葉も「好きだと、好きって言わなきゃいけなの?」と考えていた。「相手の気持ちを分かっているのに好きだと伝えるのはエゴ」だなんて、達観しすぎていてちょっと驚く。
しかも紅葉は、それを自分だけの価値観として、夜々から椿(松下洸平)への好意は、伝えたいなら伝えればいい、というスタンスでいる。このまま4人でいることを望みながら、そのバランスが崩れるかもしれないことに執着せず、夜々の気持ちを尊重する。そしてそれはゆくえも同じだった。似た者同士の2人。
●ほのぼのとした修羅場

多部未華子『いちばんすきな花』第1話(C)フジテレビ
今日も椿は実家からもらってきたもうすぐ枯れそうな花を活ける。するとそこへ、赤田(仲野太賀)が保険の営業にやってくる。巧みな話術で家に上がり込むと、しばらくしてゆくえが訪ねてくる。
椿が玄関へ出るのも待たずにリビングに入ってきたゆくえを見て、赤田は「彼氏? 付き合ってんの?」とやや険しい表情に。椿とはただの友だちだと主張するゆくえと、「ゴミ袋なんか買ってきて」「下の名前で呼ばせて」「自分の席って、この人の家ですけど」と嫉妬心剥き出しの赤田。
自分とゆくえがかつてたしかに友情を育んでいたことを忘れてしまったみたいな態度だった。ゆくえの中にも寂しさが生まれたのだろう、「元友だちからの心配なんていりません」と赤田にぴしゃりと現実を突きつける。言い返す言葉を失った赤田は、「春木さんは潮のタイプじゃない」と捨て台詞を吐いて去って行った。
高校時代から続いていた友人関係を終わりにしたのは自分でも、友だちを作るのが苦手だと思っていたゆくえにすでに別の友だちがいて、カウンターに色違いの4つのマグカップが並んでいるのを見て、赤田は何を思っただろうか。椿が純恋の、夜々が初恋の人の幸せを願うように、ゆくえの今の幸せを願ってほしいものだが……。
それにしても、説明が足りないって!と思わず突っ込みたくなるようなやりとりといい、2人の言い合いにおどおどし通しの椿といい、修羅場のわりにくすりとできるやりとりだった。
同級生の無邪気な男友だちを担う仲野太賀というのももちろんしっくりくるのだが、そこに“ムキになってもどこか笑える”というコメディ要素が加わることで、より赤田の役を仲野が演じる意味が深まる。実に印象的ないいシーンだった。
●「男女の間に、友情は成立しますか?」

左から)多部未華子、神尾楓珠、松下洸平、今田美桜『いちばんすきな花』第1話 Ⓒフジテレビ
帰り道、男女の友情について話し合うゆくえと夜々。
男女の友情に関しては「成立する」という人と「成立しない」という人が分かれ、それぞれに持論を展開しがちだ。だけど、それが同性の恋愛となると「成立する」、「そういう人もいる」と答える人がほとんど。「人それぞれ」が、恋愛には当てはまるのに、友情には当てはめることを忘れたみたいに。
この疑問を、恥ずかしながらこれまで感じたことがなかった。いや、男女の友情も同性の恋愛も「あるでしょ」と思っていたのだが、この問いが内包する問題点=性別で友情や恋愛を区切るという矛盾に気付くことができなかった。
本作のテーマである「男女の間に、友情は成立しますか?」に対する答えは、ある意味もう出ているようにも見える。友情、好意、愛情。誰から誰へ向けられていようが、それは等しく本物で、だとすれば、こんな疑問を持つこと自体がナンセンスなのだろう。
ただ、気になるのは本作の4人の関係性が回を重ねるごとに絶妙なバランスの上に成立していることだ。
きっと大丈夫なのだろうが、例えばゆくえに恋人ができた場合、紅葉は嫉妬や後悔などすることなく、変わらずに4人でいられるのだろうか? 夜々もそうだ。椿への想いが実らず、椿に別の恋人ができたとしたら?
そして何より、4人が集まれる場所がなくなってしまったらどうだろう。どうやら椿は引っ越しを決意したらしい。新しい家は、きっと今みたいに広い部屋はないはず。そうなったときに、4人の友情はどんな形になるのだろうか。
これらすべてが「条件次第」の“条件”なのかもしれない。今4人が4人でいるのはこの一瞬、奇跡のバランスなのだよ、と。
このままでいて欲しい気もするし、今は少しお互いへの依存が強いような気もする。6話で急に存在感を増してきたゆくえの友人・美鳥ちゃんと、紅葉の先生が、この関係性に刺激を与える存在になるのかもしれない。
(文・あまのさき)
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