【働く動物たち】動植物検疫探知犬編...伝染病の侵入を水際で防ぐ[インタビュー]

【働く動物たち】動植物検疫探知犬編...伝染病の侵入を水際で防ぐ[インタビュー]

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  • 更新日:2022/06/26
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動植物検疫探知犬の絆(きずな)号

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海外から帰国した時、空港の手荷物受取場にあるターンテーブル周辺でビーグル犬を見たことがある人もいるだろう。今回は「動植物検疫探知犬」を紹介する。農林水産省・動物検疫所の羽田空港支所で、玉野麻紀子 主任検疫官に聞いた。

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◆病気の侵入を食い止める動植物検疫探知犬たち

----:どんな仕事なのですか?

玉野麻紀子 検疫官(以下、敬称略):動植物検疫探知犬(以下、探知犬)は、国際便が到着する空港や港、それから国際郵便局で活動しています。旅客の手荷物や郵便物のにおいを嗅いで、日本への持ち込みが禁止されているお肉(製品)や果物、野菜などを探すのが仕事です。

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----:なぜ、肉や果物を持ち込んではいけないのですか?

玉野:家畜の伝染病や植物の害虫が日本に入ってくるのを防ぐためです。ハムやソーセージなども含め、お肉は基本的に外国から持ち込めません。果物や野菜なども、国や地域によって禁止されている種類があります。病気の中には感染力が強く治療法がないものもあります。日本の農業や国民生活を守るため、侵入防止が大切なのです。

----:肉や果物の臭いを探知したときは、どのように知らせるのでしょうか?

玉野:荷物のそばで「お座り」して知らせます。

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◆パートナーの職員と常に一緒

----:犬たちは1日何時間くらい働くのですか?

玉野:勤務場所によって異なりますが、午前10時から午後4時半くらいまで空港や港などの仕事場所にいるケースがあります。出番が来ると探知活動を行いますが、それ以外は待機室で休んでいます。集中力など、様子を見ながら別の犬と交代します。

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----:勤務時間外はどこで生活しているのですか?

玉野:農林水産省が所有する犬は、(勤務地の)近くにある犬舎で暮らしています。羽田(空港)の場合は空港の敷地内にあります。探知業務を民間に委託しているケースもあります。そうした犬たちは各々の委託先が所有しており、飼養管理も事業者が行っています。

----:お休みの日はありますか?

玉野:探知犬と私たちハンドラーは同じペアで仕事をするので、担当者が休みの日は探知犬もお休みです。休日は別の職員がご飯や排せつ、運動や散歩などの面倒を見ます。

◆訓練は知恵比べ?

----:肉や果物の探知をどのように教えるのですか?

玉野:犬に応じて訓練内容を変えますが、簡単なことから始めます。例えば空の箱を並べ、その中の1つに肉や果物などの対象品を入れて嗅ぎ分けることを覚えさせます。徐々に、衣類も入ったスーツケースを用いるなど、実践的な訓練に進んでいきます。

----:色々な動物の訓練についてお話を聞くと、 “1頭1頭に合わせて” という考えが共通しています。探知犬の場合はいかがですか?

玉野:同じです。その時、その犬の課題に応じてハンドラーが内容を考えます。散歩や仕事のやり方なども含め、担当者はパートナー(犬)の個性を理解しながら関係を築いていきます。犬によって本当に性格は違いますね。訓練も、その子に合ったやり方を工夫するのが大切です。

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----:難しい点は?

玉野:訓練を仕事に繋げることが重要です。例えば、あるバッグに対象物を入れると、数時間後の訓練でも同じバッグの前でお座りすることがあります。「あのバッグの前で座ったら褒められた」と記憶に残り、鼻を使わなくなります。そうならないように、バッグや箱などの種類や並べ方を変えます。

----:臭いではなく見た目で反応してしまうんですね。

玉野:はい。それでは実際の仕事はできません。入れ物や内容物など、私たちがよく考えて工夫します。ターゲットとなる “この臭い” を探すんだ、ということを理解させることが重要です。

◆信頼関係で結ばれたパートナー

----:訓練中のそうした反応も犬それぞれだと思います。ハンドラーさんとの関係性が重要ですね。

玉野:犬はハンドラーのことをとてもよく観察しています。犬の意欲には、私たちの態度も大きく影響しているということを意識しています。特に(パートナーの)「絆(きずな)号」は頻繁にアイコンタクトをする犬です。私のことを気遣い、常に様子をうかがっているので、彼の前では元気に振る舞って仕事に集中してもらえるようにしています。

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----:犬は、「空気を読む」能力に優れていますからね。ほかに気をつけていることはありますか?

玉野:体を “ポンポン” と叩くコミュニケーションです。犬は「触ってもらえた!」と喜び、私からの「これで良いんだよ」というメッセージが伝わります。手荷物受取場で荷物がなかなか出てこない時や、探知活動中に対象物が見つからない時も、適切なタイミングで「頑張ってるね。ポンポン(笑)」と伝えるようにしています。

----:まさにパートナーですね

玉野:探知はハンドラーと犬、二人で頑張る仕事です。信頼し合って一緒に仕事をしています。

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◆必要なのは社会性と食欲

----:それぞれに個性はありますが、一般的に探知犬に適しているのはどんな犬ですか? 最近はラブラドールレトリーバーもいると聞きました。

玉野:ビーグルは嗅覚も優れていますが、体が小さく可愛らしいことも採用の理由です。旅行者に恐怖心を与えないことや、人混みの中で邪魔にならない良さがあります。逆にラブラドールは、体の大きさや体力面で採用しています。主に国際郵便局で活動し、高い位置に積まれている荷物や大きな荷物を嗅ぐ仕事をしています。

----:犬種だけでなく、個性も重要だと思います。どんな犬が探知犬に適していますか?

玉野:社会性があって落ち着いていることが大切です。新しい環境への適応力があり、見知らぬ人や物に怖じ気づかない性格も必要ですね。あとは、食べ物を探す仕事なので、食欲旺盛な犬が適していると思います。

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◆空港では優しく見守ることが大切

----:仕事中のトラブルはありますか?

玉野:活動中に触られたり、声を掛けられたりすると犬の集中力が切れてしまうことがありますが、(旅客の)皆さんにはご理解頂いているようで、ほとんどトラブルはありません。空港で探知犬に会った時は、これからも優しく見守ってください。

----:そのほか、課題はありますか?

玉野:残り香や移り香にも反応することがあるので、お時間を頂いて荷物を調べても対象品がないケースがあります。多くの方は「すごいね!」とご理解いただけますが、不快な気分にさせてしまうことがあるかもしれません。引き続き、探知活動への理解を得る努力を続けていきます。

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現在、全国の空港や港などで140頭の探知犬が活躍している。令和元年には、合計で約4万件、重さにして3万kgの対象物を探知したという。大活躍の犬たちだが、8歳から10歳ほどで引退し、ハンドラーや職員、一般家庭などに引き取られて家庭犬として第二の “犬生” を送るそうだ。

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印象的だったのは、空港の手荷物受取場でスタンバイしている時の真剣なまなざしと、褒められた時の無邪気な表情のギャップだった。盲導犬や介助犬、警察犬、麻薬探知犬などと同様、大好きな“仲間“(= ハンドラー)と“ゲーム”(=仕事)をして過ごし、メリハリのある充実した時間を生きる犬たち。そして、愛情いっぱいに“愛犬”に接する “飼い主” (=ハンドラー)の姿を、ここでも見ることができた。

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玉野麻紀子:農林水産省 動物検疫所 主任検疫官子どもの頃から動物に関わる仕事をめざし、大学卒業後に動物検疫所の職員となる。自ら希望して訓練施設での研修を受け、動植物検疫探知犬のハンドラーとなる。今年の3月よりパートナーの絆(きずな)号と羽田空港に勤務する。絆号はまだ2歳と若いが、周囲への気遣いができる落ち着いた性格とのこと。探知活動も1つ1つの荷物を確実にこなしているが、今後は仕事のスピードアップを二人三脚(?)で目指したいという。

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