働き盛りを悩ませる「親の介護」。経済面や精神面の負担を減らすには?

働き盛りを悩ませる「親の介護」。経済面や精神面の負担を減らすには?

  • mi-mollet(ミモレ)
  • 更新日:2021/09/15

親の介護──この言葉を聞いて身震いした人も多いのではないでしょうか。仕事や子育てに追われて自分の時間すらろくに作れないのに、年老いた親の世話まで抱え込んだらどうなってしまうのか。経済面でも住宅ローンや子どもの学費を捻出するのが精いっぱいで、介護費用までは払えない……考えれば考えるほど気が重くなりますが、それは介護の実態を知らないせいでネガティブな面だけが肥大しているのかもしれません。

このように「親の介護」に対する不安に苛まれている人、特に介護未経験者にぜひ読んでいただきたいのが、『図解とイラストでよくわかる 離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』というムックです。本書では、最初に取るべき行動から介護サービスの種類、さらには介護者のライフスタイルへのアドバイスまで、至れり尽くせりの内容がイラストや図解でわかりやすく紹介されています。

親御さんと離れて暮らす人のなかには、ある日突然親が倒れて生活が一変するかもしれないと気が気でない日々を送っている人もいると思いますが、正確な情報があれば恐れるに足りません。さっそくその一部を見ていきましょう。

親の介護が必要になるのはこんなとき。3つのパターンを把握

いったいどんなときに介護が必要になるのか? 介護の始まりは主に3つのパターンに分かれます。

まず1つ目は、脳血管疾患などで倒れて入院して直面する「突然タイプ」。この場合は、入院している間に医師と相談し、この先回復していくのか? それともマヒが残って介護が必要になるのかを判断することになります。2つ目は「きっかけタイプ」。たとえば、母が突然亡くなって、葬儀の間は気丈にふるまっていた父が、しばらくして訪ねてみたら、様子がおかしくなっているなど。精神的なダメージから、気力がなくなり身の回りのこともできなくなってしまい、介護が必要になることがあります。3つ目は「徐々にタイプ」。このタイプは、加齢による身体の衰えから少しずつ要介護の状態へ向かっていくものなので、離れて暮らしていると気づくのが遅れてしまう可能性が高くなります。

可能であれば、1日1回、2~3分程度でも空いている時間を見つけて電話をするなどのコミュニケーションをとることも変化を見逃さない有効な方法と言えます。

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高齢者の大敵!「フレイル」に注意

フレイルとは、高齢者の筋力や活動が低下している状態のことで、要介護の前段階と言われています。下の項目に1~2個当てはまると予備軍となり、3項目以上ならフレイルに該当します。早めに気づいて、食生活や身体活動など日常生活を改善することで悪化を防ぐことができます。

①過去1年間に4.5㎏以上の体重減少
②常に疲れやすく感じる
③歩くスピードが遅くなる
④加齢により筋力が低下する
⑤身体活動量の低下

介護の駆け込み寺「地域包括支援センター」への連絡が第一歩

突然の入院はもちろん、親の様子が少し変だと感じたという程度でも、一度、親の居住地の「地域包括支援センター」に相談するのが第1ステップ。介護と言われても、本人も家族もわからないことだらけ。どんなに初歩的なことでも、気軽に相談に乗ってくれ、アドバイスを受けられます。

地域包括支援センターでは、さまざまな機関と連携し、その地域に住む高齢者をサポートしています。たとえば、徘徊している高齢者を警察が保護した場合、センターに連絡が行き居住地を特定するだけでなく、緊急連絡先に指定されているセンターから親族に連絡が行くこともあります。

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地域包括支援センターの役割は?

地域包括支援センターは、地域に根差して高齢者を支える総合機関。介護の専門スタッフが所属し、高齢者の相談に乗ったり、介護予防の支援を行ったりしています。中学校区域程度ごとにセンターが設置されていて、居住地によって利用できるセンターが決まっています。

介護費用はなるべく親の年金で賄えるように

在宅介護の場合、介護サービス費用は、親の年金口座から引き落とされることが多いです。下のグラフは同居している家族が支払ったその他の在宅介護の月額費用とその内訳。上位におむつなどの消耗品や医療費、福祉用具のレンタル代などがあがっています。

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※上記2つのグラフ:全国の30代以上の男女 有効回答数1047人のうち「介護している(いた)方と同居」と回答した人197人
※出典:SOMPOホールディングス株式会社「介護費用に関する調査」 2020年

同居の家族が支払った金額の平均月額は約7.5万円。本来は、この費用も親の年金で賄えるように意識していくことが大切です。とは言っても、生活費の負担方法は家庭ごとに異なります。別々に家計管理ができているなら、介護費も同様に親に負担してもらってもOK。同居していない子どもの場合、直接的な介護サポートができないなら、介護費を負担する方法もあります。

また、介護期間が長くなると、その分親の費用負担が増え、年金や貯蓄で賄うことが厳しくなる可能性もゼロではありません。そのことはあらかじめ覚悟しておき、親の資金繰りが苦しくなったら、子どもが費用面でのサポートをすることも家族で話し合っておくようにしましょう。

遠くにいても介護は可能。自分なりのやり方を模索しよう

離れて暮らしている親を介護する場合、身の回りの世話をすることはできません。遠くからでは介護できないと決めつけずに、離れてできる介護の方法を模索して。

兄弟姉妹で分担したり、一人っ子なら、周りの親族の手を借りるなど、家族みんなで協力する体制作りをします。要介護度が上がると在宅介護を遠距離で行うのは、難しくなります。現状より状態が悪くならないように、見守りを行うことが大切です。

たとえば、毎月決まったペースで帰省すると、「その日が来れば、子どもに会える」と親の安心感につながります。また、親が安全で快適に暮らせるように、転倒の危険がある段差の改修工事をしたり、離れて暮らしていても見守りができるよう遠隔見守りカメラや安否確認のサービスの利用も有効です。

民間や自治体の宅配食サービスの手配を担当することで、見守りや食事を作る負担を軽減できます。また、毎日2〜3分でもいいから電話をすることで、声の様子や話しぶりなどで親の体調を確認することもできます。また、帰省した際に、親が親しくしている友人や近所の人に挨拶しておくことで、緊急時にすぐに駆けつけられないときに、代わりに対応してくれるなど、助けてもらえるかもしれません。

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遠距離の子どもが着手するといいこと

①毎月「第2・第4土曜日」に行くなど、子どもは定期的な訪問日を決める。親もカレンダーに印をつけるなど、その日を楽しみにする
②手すりやポータブルトイレの設置、転倒防止のための工事などバリアフリー化は徹底的に
③遠隔見守りカメラやセンサーを設置。自治体の「安否確認サービス」や「緊急通報サービス」も登録する
④宅配食サービスを利用して食事の手配やネット通販で食材の手配など。親の好物を届ける目的で
⑤毎日きょうだいでローテーションを組んで電話を。見守りカメラで不審なことなどがあったときにも、すぐ電話をして確認する

介護離職は負担が増大。「辞めない介護」の道を探ろう

ある程度の年齢になると「もし自分の親が倒れたら……」という不安はつきものです。親が要介護認定を受けた場合には、たいていは体のどこかが不自由になり、判断力も下がっているため、日常生活を1人で送ることは難しくなります。その際に在宅で介護をする人は誰なのでしょうか?

下の円グラフを見ると、介護の担い手として最も多いのは同居の配偶者であることがわかります。つまり、父や母が倒れたら、その連れ合いが面倒を見るのが一般的と言えます。また、子ども夫婦が同居している場合には、子ども夫婦が介護をサポートするケースも多く見られます。その一方で、親の介護を別居の家族が担っている割合も約14%いるのも見逃せません。別居していると介護はできないと決めつけている人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではないことがわかります。

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※出典:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査」の概況

年老いた親同士で介護をする老老介護は、体力的にも精神的にもとてもきついもの。子どものサポートが不可欠となります。家族みんなで協力し合うことや、外部の手を借りるなど工夫しながら、子ども側からも介護に積極的に参加しましょう。親が1人になって子どもが介護役のメインになるときの準備になります。

親が在宅介護を希望している場合、仕事を辞めて介護に専念するべきと考える人もいるかもしれませんが、必ずしも得策とは言い切れません。介護離職した人の負担感の変化を見てみると経済面での負担はもちろん、精神面や肉体面での負担も増したという結果が見られます。介護離職をすると、経済的な不安感や社会生活と離れてしまった孤立から生まれるストレスなどが増えることもあります。働き方を工夫し、外部サービスをうまく利用しながら、「辞めない介護」を検討することを視野に入れましょう。

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※出典:「平成24年度 仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(厚生労働省委託調査)

著者プロフィール
池田直子さん:特定社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士。社会保険労務士事務所 あおぞらコンサルティング所長。2008年「あおぞらコンサルティング」を開所。人事・賃金・退職金制度コンサルティングや労務相談、経営相談などの業務を多数手掛ける傍ら、従業員向けの仕事と介護の両立セミナーや企業向けの介護支援セミナーを実施。企業向けに「企業と介護ドットコム」を運営し、「シニアプランシート」を制作。主な著書に「『介護離職ゼロ』の職場のつくりかた」(翔泳社)などがある。自ら仕事と介護の両立を実践中。

イラスト/サノマキコ
構成/さくま健太

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