英研究「ラクな仕事は死亡率〇倍」ストレスを避けすぎる盲点

英研究「ラクな仕事は死亡率〇倍」ストレスを避けすぎる盲点

  • MONEY PLUS | くらしの経済メディア
  • 更新日:2020/09/15

誰でもハードな仕事は嫌なもの。できるだけ負担が少ない仕事を選びたくなるのが人情でしょう。しかし、これは幸福度という点から見れば大きな間違いです。過度のストレスが体に悪いのは確実なものの、その一方では「楽すぎる仕事」もまた、あなたの幸福度を大きく下げてしまいます。前回前々回に引き続き、『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』(クロスメディア・パブリッシング)から一部抜粋して紹介します。

適度なストレスは、仕事の満足度を高める

過去に行われた複数の研究が、会社内で高いポジションに就いたエグゼクティブほど健康で幸福度が高い事実を示してきました。彼らは周囲の部下よりもあきらかに仕事の量が多いにもかかわらず、風邪や慢性病などにかかりにくく、日中の疲れを感じずに活動できていたのです。

さらに3万人の公務員を対象にしたイギリスの研究によれば、組織内で地位のランクがもっとも低い人は、ランクが高くより重大な仕事を行う人に比べて死亡率が2倍も高かったのだとか。

これは人間以外の種族にも見られる現象で、ケニアのサバンナで暮らすバブーン(サルの1種)を調べた研究でも、仕事の少ない個体ほどストレスホルモンの量が多い傾向が確認されています。

どうやら、仕事の負荷が低いからといって必ずしも精神的に楽になれるわけではないようです。

それでは、ハードワークで体を壊す人がいる一方で、大量の仕事をこなすことで逆に幸せになれる人がいる理由はどこにあるのでしょうか?

「船荷のない船は不安定でまっすぐ進まない。一定量の心配や苦痛は、いつも、誰にでも必要である」
このショーペンハウアーの名言は、楽すぎる仕事が体に悪い理由の一端を示しています。ストレスは必ずしも悪いものではなく、私たちが幸福に暮らすためには欠かせない要素だからです。

たとえば、アメリカで軍事戦略のリサーチなどを行うランド研究所は、過去に出た大量のストレス研究をレビューしたうえで、「適度なストレス」がもたらすメリットを3つあげています。

・仕事の満足度を高める
・会社へのコミットメントを改善する
・離職率を低下させる

ほどほどのストレスであればなんの問題もないどころか、逆にあなたの幸福感を高めてくれる、というわけです。
この現象を視覚化したのが次の図です。

No image

あまりに自分の能力を超えた仕事は不安につながり、あなたの健康を損ないます。逆になんの負荷もない仕事は退屈感を生み、やはり幸福度の低下をもたらします。

「ストレスを避けるのは、食べ物や愛を避けるようなもの」

いわば、ストレスが私たちにもたらすメリットとはバイオリンの弦のようなものです。弦がピンと張りつめすぎれば甲高い音しか響かず、ゆるすぎれば濁った音しか鳴りません。良い音を奏でるには、適度な張りに調整する必要があります。

要するに、組織内のランクが高い人ほど幸福なのは、ランクが低い人よりもストレスの張りを調整しやすいからです。当然ながら、会社で上の地位に就く人ほど仕事の裁量権が増え、作業を自由にコントロールできるようになるでしょう。仕事が難しいと思っても概ね自分の好きなペースで行えますし、無理をして嫌な人と付き合わねばならないリスクも減るはずです。

ところが、地位が低い人は好きなように締め切りを動かせず、仕事の内容を自分で選ぶわけにもいきません。コントロールの範囲が狭いぶんだけストレスも調整できず、結果として幸福度は下がります。

「昇進」といえばまずは給料アップのメリットが頭に浮かびますが、実際にあなたの幸福度を左右するのは裁量権のほうです。

まとめると、ストレスは諸刃の剣であり、私たちの幸福度を上げる方向にも下げる方向にも働きます。ブラック企業のように慢性的なストレスが延々と続く状況は論外ですが、楽すぎる仕事もまたあなたを不幸へ追い込むのです。

良いストレスと悪いストレスには、大きく先の表のような違いがあります。悪い
ストレスが免疫システムの働きを狂わせて脳の働きまで低下させるのに対し、良いストレスは仕事に取り組むモチベーションを高め、身体の疲れも取り除く働きがあるわけです。

ストレス学説の生みの親であるハンス・セリエは言います。
「ストレスを避けてはいけません。それは食べ物や愛を避けるようなものです」

体を鍛えるためには筋トレやランニングで適切な負荷を与えねばならないのと同じように、私たちの幸福感も適度なストレスがなければ成長しないのです。

●プロフィール鈴木祐 作家1976年生まれ、慶応義塾大学SFC卒。16才のころから年に5,000本の科学論文を読み続けている、人呼んで「日本一の文献オタク」。大学卒業後、出版社勤務を経て独立。雑誌などに執筆するかたわら、海外の学者や専門医などを中心に約600人にインタビューを重ね、現在は月に1冊のペースでブックライティングを手がける。近年では、自身のブログ「[パレオな男](http://yuchrszk.blogspot.jp/)」で健康、心理、科学に関する最新の知見を紹介し続け、現在は月間250万PV。ヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演も行っている。

科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方 鈴木 祐 著 > >

No image

(MONEY PLUS編集部)

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加