小泉今日子、政治的発言の裏でやっと手に入れた「本当の自由」

小泉今日子、政治的発言の裏でやっと手に入れた「本当の自由」

  • 週刊女性PRIME
  • 更新日:2021/09/15
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小泉今日子

2013年の朝ドラ『あまちゃん』の好演、その後も宮藤官九郎や福田雄一のコメディードラマで「言いたい放題でサバけてるが、なんだかカワイイおばちゃん」という安定の立ち位置を築き上げた小泉今日子。長年のイメージとしては「大御所・大物・巨大権力の寵愛を一身に受け、結果を出し続けてきた女」、そして「クリエイターやアーティストからも愛され、セルフブランディングに成功した女」だ。

【写真】豊原功補とお忍びでオトナデートを楽しむ小泉今日子

事務所からの独立に堂々不倫宣言

なにせ彼女は芸能生活が長い。なんでもありの狂乱の昭和から、萎縮と縮小の平成、そして崩壊と転換の令和と駆け抜けてきたわけで、「いろいろとありましたねぇ……」と目を細めて思い出すわけだ。それでも、本人もとても充実した芸能人生を送っていると思っていたし、このままずっと陽の当たる場所を歩き続けるのだろうと思っていた。

2015年に制作会社明後日を立ち上げたときも、やりたいことのひとつ・プロデュース業に手を出しただけで、立ち位置も大枠も変わらないと踏んでいた。ところが、2018年に超強権大手事務所から独立したと聞いて、正直驚いた。さらには、俳優の豊原功補とのパートナーシップを公に発表し、堂々不倫宣言と報道された。あのキョンキョンがとうとう干される時代になったのか……と思った。

思ったけれど、つるし上げにあったのはどちらかといえば豊原のほうだ。あの仕掛けはよくわからんが、豊原が記者会見を行い、自らの不貞行為の解説をさせられるという地獄。え、キョンキョンじゃなくて豊原が?

正直に言えば、その地獄の中でも役者・豊原功補がダダ洩れしていて、ちょっと色っぽかった。古畑任三郎のようなポーズで手を顎に当てて質問に答えたりしてね。どちらかというと、口語調というよりは文語調の言葉選びが目立った。

「わぁ……なんとなくめんどくせー役者論を一晩中語るタイプだろうなー」と密かに思いながらも、離婚に関しては夫婦と家族の問題というスタンスを崩さなかった豊原、私の中では株が爆上がりだったけどなぁ……。

会見の最後のほうに「小泉今日子はどんな人か」と聞かれて、「天然記念物。面白い人です」と答えた豊原。もう恋人とか愛する人とか世間が想像する関係性ではなくて、朋輩とか戦友とか無二という言葉を想像しちゃったよ。

おっと、キョンキョンに話を戻そう。

小泉今日子を役者として好きかと問われたら、口角泡飛ばして語れるほど好きなわけではない、と答える。ただ、ゆくゆくは加賀まりこのような存在の女優になるだろう、図太さと可愛らしさの共存を長いスパンで眺めていこう、と思っていた。

今年の頭には久々にドラマに出ていた。WOWOWのオリジナルドラマ『川のほとりで』の第2話に出演。虚言癖のホームレス・ペマ子の役。川のほとりでのんびり暮らしているホームレスのおじさんたち(ベンガルと綾田俊樹)のもとに転がり込んできて、自分は「とある国の王族で、王家の隠し財産を巡って、国際的組織に命を狙われている」とうそぶく。役所の福祉課の職員・佐藤(山内圭哉)を殺し屋だと言い張り、川っぺりで微妙なアクションシーンもこなした。

ホームレス役なので、垢じみたすっぴんにバッサバサの髪、そしてボロボロの薄汚れた服(かわいさは残してある)。最後はボートを漕いで、歌いながら川を流れてゆく……という話だった。後日談で「横浜あたりで保護されてホームレスシェルターにいるが、どうせまた逃げ出すだろう」とされている。

要するに、何にも縛られない、とにかく自由な女の役だった。キョンキョンはとても楽しそうだった。ここ数年のドラマの中でも一番いきいきしていたような気がした。

「自由」のために広告契約を終了

円満退社で独立、豊原と不倫宣言、そしてもうひとつ大きな話題になったのが、昨年のTwitterだ。キョンキョンは、検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案に反対する意味である「#検察庁法改正案に抗議します」とツイートした。芸能人が政治に関して発言することはタブーと思われてきたし、政権を批判すると夥しい数(に見えるが実際は少数精鋭らしい)の誹謗中傷が飛んでくると言われている。事務所やテレビ局やスポンサーが最も嫌がる「芸能人の政治的発言」。

この件に関してはキョンキョンの生の声が聴きたいと思った。検索してたどり着いたのが『Cats Howling ネコタチノトオボエ』という配信。キャスターでジャーナリストの金平茂紀がさまざまなゲストと対談するネットラジオのようだ。そこでキョンキョンは、不倫については触れなかったものの、独立や政治発言の背景を真摯に語っていた。

「独立したことともつながるんですけど、私、デビューしてからずっと広告契約があったんですよね。それで、そういうことも自分の“自由さ”みたいなことから離れていっちゃう。

ただ、会社にいる限りその会社のルールには従わなくてはならないという中でずっと生きてきたんだけど、50(歳)を前に、もう私は本当に自由にならないと自分の言いたいことも言えない、自分の人生をどこかで我慢しなくちゃいけない、っていう感覚があったので、ひとつずつ広告契約を満期で終了してもらっていってたんです。そういうことをすべてやって、きちんと独立したっていうことなんですよね。だから今私は言える立場である、っていうのはあって」

'80年代からずっと自由奔放に見えたけれど、実際にはそうではなかったのかとしみじみ。業界の人々から寵愛され、多大なる恩恵を受け、主語をもっているように見えたけれど、キョンキョン自身はずっと我慢してきたのか……。あんなに輝いていたのに、開けてみれば、どこかで滅私奉公だったのね。

政治的発言に対しては批判もたくさん来たが、「私の人生だから私が決める」というキョンキョン。プロデュース業に専念したのは、「いろいろな面白い大人たちに育ててもらったので、次の世代に回していきたい」「自分のためだけじゃなくて、才能のある人を陽の当たる場所に連れて行ってあげたい」から。

これからは「利他的な世界」を目指したいとも話していた。表舞台に立たなかったのは、ある種の「禊」期間ともとらえられるが、着々と若手育成の種蒔きもしていたのだと知った。

実際、若手監督作で村上虹郎主演の映画『ソワレ』も作ったし、舞台も手掛けている。コロナ禍で行政と世間からいびられまくったエンタメ業界を支える活動を行い、自らも舞台に立った(ゴツプロ!『向こうの果て』)。

この対談でもっとも興味深かったキョンキョンのコメントは「プロダクションとか芸能界の在り方は、この先限界が来るだろうなと思って」という話だ。

「65歳でもう1回グレたい」

確かにここ数年、芸能人の独立にまつわる騒動は後を絶たない。大手事務所に所属するメリットとデメリットを天秤にかけ、自由や自分らしさ、尊厳のようなものを保てるのははたしてどちらか? そんなことを考え始めた芸能人も増えたに違いない。キョンキョンほどの大スターが強権大手事務所から独立したことの意味は大きい。女優や女性タレントのロールモデルになるかもしれない。

この対談、話題が多岐にわたって濃厚だったし、素のキョンキョンの肉声が聴けた気もする。それこそテレビでやればいいのにね。人生の終わりかたについて質問されたキョンキョンは、こう答えた。

「引き際も含めて見えていない。あと10年は頑張れるかな。65歳くらいでもう1回グレたいですね」

お金の心配をしないで利他的な世界を築けるならいいよねぇ……とつい無粋なことを書きたくなるが、年に1回は舞台に立ちたいとも話していたので、そこは抜かりなく皮算用しているはず。10年後、65歳で盛大にグレるキョンキョンも見てみたい。

ふと思い出した。キョンキョンが書いたエッセーがフジテレビでドラマ化したことがあった。2015年『戦う女』という作品。世代別、女のパンツにまつわる話だったけれど、グンゼに始まり、黒レース、最後はTバックから紙オムツに。ふんわりと、でも的確に、女の自己主張が描かれていて面白かったなぁ。女が女であることを誇れる世の中にするために、今後キョンキョンは力を発揮できるのではないかしら。

ともあれ、小泉今日子が見ているのは、もう今日や明日の話ではない。明後日の方向を向く、ではなく、その先の先を見据えていると信じたい。

吉田 潮(よしだ・うしお)
1972年生まれ、千葉県船橋市出身。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。『週刊フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『くさらないイケメン図鑑』(河出書房新社)、『産まないことは「逃げ」ですか?』『親の介護をしないとダメですか』(KKベストセラーズ)などがある。

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