過密都市・東京で「社会的距離」を保つには? 海外に学ぶ街づくり最前線

過密都市・東京で「社会的距離」を保つには? 海外に学ぶ街づくり最前線

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/09/17
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新型コロナウイルスの感染拡大によるインパクトが日本で最も大きかった東京。

ソーシャルディスタンスを意識した生活が求められるウィズコロナの時代には、街はよりオープンになるように期待されている。世界ではすでに様々な変化が顕在化してきているが、東京はこれからどのような街を目指していくべきなのか。

新型コロナウイルスから命を守るためのウェブサイト「PANDAID」を立ち上げ、世界中に広がる感染者の状況を可視化する活動をしている、デザイン事務所「NOSIGNER」代表の太刀川英輔と、公共空間のあり方について思索する都市戦術家の泉山塁威の対談連載。

今回は「過密都市の東京に求められる変化」をテーマに、世界中で行われている街をオープンにするための施策について紐解いていく。

路上を活用してソーシャルディスタンスを保つ

太刀川:ウィズコロナの時代に東京の街がどのように変化していくべきなのかについてお話できたらと思います。最近では、東京のような超過密都市に住むことに対して人々が迷いを持つようになってきましたよね。コロナ禍に直面したことで、多くの人がソーシャルディスタンスを意識して生活するようになったからです。

「街づくり」という観点からみると、世界の都市はどのように変化しているのでしょうか。もし東京が見習えるような事例があったら教えてください。

泉山:新型コロナの影響で、飲食店が積極的に路上を活用するようになっていますね。例えば2020年の5月には、リトアニアの首都ビリニュスで興味深い例がありました。レストランなどの飲食店で客席を道路上に出して営業するスタイルを政府が認めたのです。

本来は店内に30席あったお店が、ソーシャルディスタンスを保つために20席になってしまったら、売上・利益ともに確保できないですよね。だから、屋外の道路に臨時で座席を作って良いという政策を打ちだしたのです。屋外にも客席を作ることで、売上を確保しようという事例ですね。

またアメリカのニューヨーク市でも、屋外飲食プログラム「オープン・レストラン」が行われていますよね。これは車道の一部や歩道をダイニングスペースとして使用することを許可するプログラムです。

通常時であれば客席を道路に出しているので、道路占用料という形でお金が徴収されるのですが、いまはニューヨーク市が金銭的な援助を行なっています。ソーシャルディスタンスを守りつつ、営業を続けるために努力がされていますね。

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NY市の「オープン・レストラン」政策では、屋外客席の基準が細かく定められる(NY市政府ウェブサイトより引用)

路上にウッドデッキを設置するサンフランシスコの試み

太刀川:ソーシャルディスタンスを守るために路上を活用するという観点で見てみると、サンフランシスコ発祥の「パークレット(Parklet)」にも、同様の可能性を感じています。パークレットというのは、路上駐車スペースにあるパーキングメーターを潰してしまって、そこにウッドデッキとテーブルを置いた小さな公園のようなスペースのことです。

泉山:街にオープンスペースをつくり出す活動として、「パークレット」はとても興味深いですよね。近年この考え方は、日本でも増えてきています。例えば横浜の元町、神戸にもパークレットと同様の事例がありますね。

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サンフランシスコ発祥の「パークレット」。ソーシャルディスタンスの観点からも注目されている(写真=泉山塁威)

太刀川:ちなみに、他にもウィズコロナ時代のオープンスペースとして興味深い事例ってありますか。

泉山:パークレットに似ていますが、オープンカーブと呼ばれる取り組みも面白いのではないかと思います。「カーブ」というのは縁石という意味で、ここでは車道の1車線を指す言葉です。

パークレットはウッドデッキを用いたりする常設的な取り組みですよね。これに対して、1車線分だけ車の通行を止めてしまって、一時的にオープンスペースにする動きが出てきたんです。これはカーブサイドマネジメントと呼ばれたりもします。

ただ、日本は海外のように道路が広くないので、考えさせられる部分もあります。個人的には今後、自動車が減っている地域の道路などで、日本でどのようにカーブサイドマネジメントを取り入れていくことができるかに注目しています。

日本でも注目される「ウォーカブル」な街づくり

太刀川:日本は海外の事例を参考にしつつも、独自の方法を模索していく必要がありそうですね。日本ではどのような試みが行われているのでしょうか。

泉山:新型コロナをきっかけに「ウォーカブル」と呼ばれる歩きやすい都市を目指す政策が、日本でも一気に注目されるようになっています。これは公園や空き地や道路をもっとシームレスにしていこうという発想のことで、オフィスなどの建物の1階部分をガラス張りにしたり、オープンカフェを作ったりする動きが積極的に支援されています。居心地が良く、歩きたくなる街をつくっていこうという狙いですね。

ただ「ウォーカブル」という発想が、新型コロナをきっかけにして以前よりも注目されるようになったのは、それが単に「街を歩きやすくする」だけの施策ではないからなんですね。実は「ウォーカブル」な設計の多くは、人々の視線が外に向けて解放されることに繋がります。これはソーシャルディスタンスの観点からみても、とても良いことなんです。

太刀川:コロナ禍の影響で街づくりのコンセプトが新しく生まれたというよりも、以前から存在していた発想の価値が再認識されて、急速に存在感を増してきたわけですね。言い換えれば、街を豊かにするための設計が、同時に新型コロナ対策にもなるということで見直された。「ウォーカブル」については国土交通省も動き始めていますね。

街を素敵にするための設計と新型コロナ対策として必要とされる設計が一致し始めているのは、非常に面白い現象だと思います。

今回は、東京のような過密都市がウィズコロナ時代にどのようにオープンに変化していくべきかについて、海外の事例に基づきながら話した。ニューヨークやサンフランシスコのような路上を活用した興味深い施策を参考にしながら、健康で過ごしやすい東京へと変化していくことを期待したい。次回の対談では「ウィズコロナ時代に求められる通勤やオフィスのあり方」についてお届けする。

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